8 連絡
いった通り、校門が見えてきたので西守さんから離れる。とはいっても同じ教室だからすぐに会うことになった。
「おはよ~、西守さん」
「西守、数学の宿題やってきた? 昼になんか奢るから見せてくんない?」
「時音ちゃん、クッキー作ってきたんだけどよかったら食べて!」
女子は西守さんの周りに集まり、男子は西守さんをチラチラと盗み見ている。
こんなに人気がある西守さんの側にずっといたら絶対ヤバイことになってたはずだ。
何十人かの敵意、嫉妬を向けられながら毎日学校に来るのなんて考えただけで頭が痛くなる。
私は先生が来るまで何もすることがないからスマホをいじることにした。
結構言っていることだが私には親しい友達はいない。
なんか悲しくなってくるなぁ……。
学校生活で必要とされる友達人数はいると思う。でも休みの日に遊んだりする子はいない。欲しくないって言えば嘘になるけど、めちゃくちゃ欲しいって訳でもない。
長く一緒にいれば隠していることが簡単にばれてしまうことがある。私の場合、吸血鬼ってことを隠してるからばれたら大変なことになるだろう。
だから別に良いんだ。
親しい友達なんて作らなくても。
突然ラインの通知が来た。送ってきた相手は西守さんだ。
登校中に西守さんが私のラインを欲しがったので交換したのだが、まさかもう通知が来るとは。
私は表情を変えないようにしてラインを開く。
『今日の放課後、買い物に行きたいんですが一緒に行きませんか?』
ラインでも敬語だったことが少しおかしくて誰にも気づかれないように静かに笑った。
『いいよ。どこに行くの?』
返信を打つとすぐに西守さんからのラインが返ってきた。
『自分の食器とか買っておきたいので100均に行っても良いですか?』
『おけ。じゃあ、また放課後にね』
『はい』
西守さんはたぶん、なるべく私と離れちゃいけないんだろう。だからこれは監視なんだと思う。
でもどうしてだろう。
監視だって分かってても誘ってくれたことが嬉しい。
買い物に行くだけなのにいつもより視界が明るく見える。
少し楽しみにしている自分がいる。
誰かと買い物に行くなんて久しぶりだからだろうか。
「田中さん何か良いことでもあったの?」
昼休みお弁当を食べていると友達にそう聞かれた。
もちろん、正直に言うことはできないので適当に言葉を返した。
西守さんと知り合ってまだ1日なのだけど、結構絆されてる気がするのは気のせいではないんだろう。