6 ギャプ萌え
一旦落ち着こう。
私は田中咲。両親と離れて暮らしていて、今年で17になる女。趣味は特にない。特技もない。そんな面白味にかける女……っ!
「あのぉ……」
「ひぃや!」
変な声を出してしまった。
「あの、朝ごはんできたましたから食べませんか……?」
「は、はい……いただき、ます……」
西守さんが机におかずやご飯が入ったお皿を置いていった。
(いつの間に作ったんだろ……)
感心していると西守さんと目があってしまった。先程のことが脳裏にちらついてすぐにそらしてしまう。西守さんは何もいってこなかった。
変な空気になっていく。
いたたまれない。
これから約三年間。西守さんと一緒に暮らしていくのにこんな調子でどうする。しっかりしろ、私。
「に、西守さ「ごめんなさい」……え?」
「さっきのこと本当にすみませんでした。きちんと確認をとるべきでした。私の不注意で田中さんに不快な思いをさせてしまいましたよね……本当にすみません」
深々と頭を下げられてしまった。
私は慌てて言葉を繋ぐ。
「い、いや、あの事はもういいよ!私も悪かったし、謝らなくていいって!」
話題を変えようとお箸をてにもつ。
「さ、ごはん食べよ!って私が作った訳じゃないんだけどね!あはは!」
西守さんに笑いかけた。すると西守さんもまだ納得していなさそうな顔をしていたけど微笑んでくれた。
心のなかで安堵のため息をついてから、ご飯に手をつける。
西守さんが作ったものはどれも美味しかった。昨日のカレーもすごく美味しかったし、料理が得意なことがわかる。
「許していただいたのは嬉しいんですが、今後あのようなことがないようルールを決めませんか?」
「りゅーりゅ?」
「はい」
確かに何度もあんなことがあっては私の心臓が持たない。恥ずかしいし、何より気まずい。
「んぐっ……いいね、それ。じゃあ、お風呂に入ってるときは何か貼っておくとかどう?入浴中っていう紙を壁に貼っておくとか」
「いいですね。そうしましょう」
「ついでに洗濯係とかご飯係とか決めちゃおっか」
「あ、ご飯は私が作りますよ」
「え、いいの?」
「はい。料理くらいしか得意なことありませんから」
照れたようにはにかむ西守さん。
私の中の何かが撃ち抜かれた。
(かっわいい……っ!!)
これはあれだ。ギャップ萌えってやつだ。
学校での西守さんは微笑んだり、薄く笑ったりすることはあれどこんな風に照れ笑いをしているところは見たことがない。
少なくとも私は初めて見た。
(こんなに破壊力があるとは思わなかった……)
私本当にこの子と暮らして大丈夫なのかな……。
キュンキュンしすぎて死んでしまうかもしれない。
冗談とか抜きにして。
「? どうかしましたか?」
「な、何でもない何でもない! ごはん食べ終わったし、食器洗ってくる!西守さんのも洗っとくよ。食べ終わってるみたいだし」
「え、でも……」
「いいのいいの。ご飯作ってくれたんだから。これくらいしないとバチが当たるでしょ?」
「…じゃあ、お言葉に甘えて」
「うん、甘えて甘えて。西守さんは学校にいく準備してなよ。もうそろそろ家出ないとヤバイから」
「わかりました」