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14 シスコンを拗らせると後にひけなくなる

 家に帰ってきたのはいい。

 問題はそこからだ。


「……」


 西守さんが全然しゃべらないんですけど……!


 いつもなら気まずい空気になる前に西守さんが世間話のように色々話してくれる。

 でも今回はそれがない。

 私はこういうときどうしたらいいのかわからないからどうしようもない。

 人との関わりを最低限にしてきた報いがこんなところで返ってくるとは。


 ちくしょうっ。

 それもこれも全部、同棲を許可したお父さんのせいだ!


 この場にいない父親に怒りをぶつける。

 とにかく今はこのいたたまれない空気をどうにかしたい。

 落ち着かないし。


 そもそもなんで西守さんはこんなに落ち込んでいるんだ?弟くんの反応をみる限り弟くんには内緒で私と同棲するつもりだったみたいだけどそんなのすぐに気づくでしょ。同じ家に住んでればなおのこと。

 んー、気になる。

 聞いていいものか。



「……弟くんのこと聞いてもいい?」


「……はい」


「じゃあ、まず……なんで弟くん?に内緒で私と暮らすようにしたの?」


「……最初は内緒にするつもりはなかったんです。ただ、蓮くんは少し姉離れができていないところがありまして……。私が出掛けるといつもどこにいっていたのか聞いてくるんです。そこまでなら姉として弟に好かれているということで嬉しさ以外の何者でもないのですが」


 うん、西守さん。

 あなたも十分弟離れできてないよ。


「最近はそれが度を越してまして……」


「例えば?」


「なぜか友達と出掛けた場所、時間、食べたものまで言い当てるようになったんです」


「……それはさすがにありえない。絶対付きまとわれてるか盗聴器でもつけられてるでしょ」


「やっぱりそう思いますよね……」


 誰が聞いてもそう思うと思います。

 こわい。

 シンプルに怖いよ、西守さんの弟くん。

 顔のよさで補えないほどのレベルだよ、それ。


「だから田中さんと一緒に住むなんて口が裂けても言えなかったんです」


「それは……うん。なんとなくわかった」


 もし言ってたら軟禁でもされていそうだ。

 言わなくて正解だと思う。


「両親も危機感を覚えたのか私が田中さんと同棲することを蓮くんには内緒にしてほしいっていったらすぐに了解してくれました」



 苦労してるな、ご両親。

 弟くんが姉にストーカー行為を働いているって知っているのだろうか。もし知っていたならご両親的にどうなんだろう。

 シスコンてレベルで収まらないよね。

 いつか近親相姦でも起きそうなレベルじゃない?


 てか私そんなやばい弟くんがいる西守さんと暮らしてるの?

 これ大丈夫?

 夜に家帰ってたら後ろから背中刺されたりしないよね?


 「蓮くんは用事で家を何日かあけていたのでチャンスだと思いまして田中さんと一緒に暮らすことを両親に提案したんですけど……」


 「結局すぐにバレるよね。弟くんが家に帰ってきたらすぐに西守さんのこと気にしそうだし」


 ここまでもったのが奇跡なのか。


 「すみません、田中さん。ご迷惑をお掛けして」


 「いや、別に気にしてないよ」


 嘘だよ。

 すごい気にしてるよ。

 なんなら夜外に出るのやめとこう。やむなく出る時は絶対西守さんに着いてきてもらおうって考えてるよ。


 でも、そんなこと不安げに瞳を揺らしている西守さんに言えるだろうか。


 否。

 言えるわけが無い。


 「ありがとうございます。そう言っていただけるとありがたいです」


 フワッと柔らかく微笑む西守さんが可愛すぎて私の胸が何発も射抜かれる。

 この子可愛すぎでしょ。

 もう何だこの可愛い生き物は。

 私を殺す気なんだろうか。



 「でも一度家に帰ろうかと思います。蓮くんと話をしてきます」


 「わかった。いつ帰るの?」


 「今日はさすがに急すぎるので両親に連絡した後にでもすぐに。明日か明後日には行こうと思います。それでその……田中さんにお願いがあるんですけど……」


 「ん? なに?」


 もじもじしている西守さんに私は問う。

 眉を下げ、上目遣いで見上げてくる西守さんに私の心は乱された。


 なんでこんなに可愛いの?

 私と西守さんって本当に同じ種族?

 西守さん天使とかじゃないの?


 とふざけたことを考えていた私を現実に引き戻したのは西守さんのおねがいの内容だった。


 「私が家に帰る時一緒に着いてきて貰えませんか?」



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