11 ロリコンじゃないんですけど!?
「田中さん、少しお時間よろしいですか?」
西守さんと暮らし始めてはじめて迎える休日。いつになく真剣な顔で西守さんは私に話しかけてきた。
「大丈夫だよ。どうしたの?」
「……少し聞きにくいことなんですが………」
「? よくわからないけど私が答えられる範囲なら答えるよ?」
「……じゃあ、聞きます、けど……」
西守さんがこんなに言い淀むことだ。
何か大切なことに違いない。
私は真剣に聞く体制を作った。
私の体関連のことか? それとも他に何が―――
「田中さんは小さな子供が好きなんですか?」
「ちょっとまてぇぇぇい!!!!」
私は近所のことなんて考えずに大声をあげた。明日には苦情が来てしまうかもしれないが今はそんなこと気にしていられない。
「どうして私がロリコン扱いされてるの!?!?」
「え、だって小さい子の指をあんなに頬を染めて加えてたじゃないですか」
「ぎゃぁぁあ!!その話はもうしないで!」
「……わかりました」
「……なに不満そうな顔してるの?私本当にロリコンとかじゃないからね?それにあれはあの子供が指怪我してたからであって―――」
「子供が怪我してたらあんなことをするんですか?すみません、私はそんなこと両親に教わってないので理解できないんですけど……」
「私だって教わったことないわ!」
『子供が怪我していたらまずなめてあげましょう』なんて両親に言われたことなんて一度もないからね!?
……どうしてキョトンとしてしるの!?
西守さんは私を何だと思ってるのかな!?
「じゃあ、どうしてあの子供の指を加えてたんですか?ここ数日でわかりましたけど、田中さんて人の血を飲むのに抵抗感とかありますよね?最近の吸血鬼さんは血を飲まなくても生きていけますから、血を飲むのに嫌悪感がある田中さんがどうしてあの子供の血は飲んだんですか?」
「あ、あれは……その……飲んだとかじゃなくて……」
「やましいことがないなら言えるはずですよね?」
「くっ……」
西守さんはジトーッとしたした目で見てくる。
さて、どうしようか。
私が傷を舐めるとすぐに治るってことを教えていいのだろうか。
西守さんの毎日作ってくれる美味しい料理に私の舌はもうメロメロだ。西守さんなしじゃ生きていけないレベルまでに達している。
だからと言ってずっと隠していた秘密を西守さんには教えていいものか。
何か誤魔化す方法はないだろうか。
視線を横にずらして考え込む。そんな私を見た西守さんははぁとため息をついた。
「……そんなに言いたくないことならもう良いです」
「え、ほんと?」
「はい。田中さんのロリコン疑惑が私のなかで残ったままになるだけですから」
「えー、それはやだなぁ……」
ロリコンていっちゃったよ。
さっきまで気遣いながら話してたのに。
ロリコンって思われるのは嫌だ。かといって本当のことを話すのも嫌だ。
私は悩んだ末、諦めてロリコン疑惑を受け入れることにした。
「(また変な肩書きがついちゃった……)」
「(田中さんなに隠してるんだろ……あんなに悩んでたってことは相当言いたくないんだよね……でもやっぱり気になるなぁ)」
肩書きを気にし始めた田中さんと好奇心旺盛な西守さんでした。