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今なにが必要か

『ともあれ、この未曾有の大事件に乗らない手はない』


 部長が本音をぶち上げた。

 アキラは首を振りながらため息をつく。


『言っちゃったよ、この人』

『あはは』


 ゆえりが疲れたように笑う。

 猫の尻尾がゆらゆらと揺れた。

 大切な情報だが、ゆえりのアバターは混じりけのない白猫である。

 首に金の鈴を付けている。

 アキラはときどき時間を忘れてゆえりを見つめてしまい、仲間にからかわれることがあった。

 だが、たとえどのように言われようとも、直立猫は素晴らしいと、アキラは思うのだ。


『はい!』


 アキラは手を上げる。


『はい、アキラっち』


 部長が指名した。


『俺はほぼ物理オンリージョブなんだけど、このなかに属性符か属性武器作れる人いない?』


 属性符とは武器や防具に魔法属性を付加することが出来るアイテム。属性武器とはその名の通り、属性を持った魔法武器のことである。


『あっ、それ私も欲しい!』


 ゆえりのほかのもう一人の女子である村上が、アキラの発言に乗っかって自分の希望を述べた。

 この会議室でのアバターはエルフのくせに、村上はVRMMOでは格闘家なのだ。

 もちろん格闘家も物理ジョブである。


『てか、村上はさ、接近戦でモンスターと戦える? 現実で』

『あっ! 虫系はダメかも』

『そういう意味じゃなくってさ』


 苦手がどうこうという話ではない。

 接近戦はリアルだと怖いのではないかという話だ。


『だってVRでも現実と感覚はそう変わらなくない? 解像度が高いか低いかの違いだけで』

『現実とVRを解像度で比べるな』


 こいつもかなりのゲーム脳だ。

 そうアキラは思った。


『なるほど物理系ジョブのために属性武器が必要ということか。つまり物理攻撃は効果がないと確認したということだね?』


 真面目な神谷副部長が確認する。


『俺自身はまだ。ネット上では既に検証した奴がいて、検証動画も上がっている。魔法が通じるのは確認した。うちの親がモンスター倒した』

『アキラっちのお父さんとお母さんすげえな! マジ憧れる』

『いや、憧れちゃダメだろ、あれはダメな大人代表だ』


 部長の両親への称賛をアキラはすっぱりと却下した。


『属性符や属性武器はぜひ欲しいところだけど、作れるかどうかよりも材料が問題じゃないか? 所持アイテムを持ち越せた人いる?』


 神谷副部長が脱線しそうな話を元に戻す。


『俺を始めとするうちの家族はダメだった』


 アキラは自分の確認したことを明かす。


『えっと、アイテムはどこにあるの? そもそもメニュー画面が見つからなくって』


 ゆえりが長い尻尾をふりふりしながら困ったように言う。


『メニューは見つかってない。ステータスはSNSなんかのプロフィールに組み込まれてた。と言ってもレベルとジョブが見れるぐらいだけど』


 アキラの言葉に全員が何やら手元を操作し始める。


『おお、本当にあった! でかしたアキラっち隊員』

『どこの戦隊だよ』


 部長のノリを軽く受け流し、アキラは続ける。


『アイテムはホームに設定した場所の収納設備に現れるみたいだ。うちの母さんが倒したモンスターのドロップアイテムが冷蔵庫に出現した』

『マジか』

『マジだ。だから俺も部屋の押入れとか、机の引き出しとか探しまくったけど、持っていたはずのアイテムは発見出来なかった』


 アキラの説明に、部活メンバーはそれぞれの反応をした。

 がっかりする者が多いなか、部長は、軽く自分の顎に手をあてる。

 部長が考え事をするときの癖だ。


『ということは、だ。属性符でも属性武器でもいいが、入手するためにはまずモンスターを倒す必要があるということだな。あと、アイテム作成が実装されているかどうかを調べる必要もある。まぁこれもモンスターを倒して素材を入手しないと無理なんだが』

『そうですね。でもそもそも俺とか村上とかはモンスターを倒す手段がないのがキツイって話で。すごく堂々巡り感があります』

『そこでチームワークだよ』


 アキラの言葉に部長は言った。


『魔法職がモンスターを狩って、物理系ジョブの武器を作成するためのサポートを行う。もちろん魔法職ばかりに負担があるのはいけないな。物理系ジョブは戦闘中の周囲の警戒をするということで』

『あー、俺、スニーキングスキルがありますからね』

『えっ、私は?』

『村上は体術スキルがあるじゃん。確か足音消して動けるんじゃなかった?』

『あ、忍び足ね』


 その後、細かい打ち合わせをして、ゲームと混ざって異世界状態となった現実で、狩りを体験してみようということになったのだった。

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