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食事休憩~突撃隣のお弁当~

「さて、普通のキャンプポイントの場合素材のある場所にはマーカーがついてたんだけど、現実になるとさすがにマーカーはないな」

「そうだね」


 アキラは部屋を一通りぐるっと見回して言った。

 祐希がそれに同意する。


「とりあえずお弁当にしない?」


 そんなアキラの意気込みに水を差すようにゆえりが提案する。


「え? 早くね?」

「大雑把だけど九時半集合で廃ホテル到着が十時半、そして今は十一時半ね」

「早いだろ!」

「でもこの先に休憩出来る場所がある保証もないし」


 なるほどとアキラもゆえりの懸念を理解する。

 本来のクエストダンジョンはだいたい二時間程度で攻略するのが平均タイムとされていた。

 VRMMOは四時間ぶっ続けで遊ぶと強制ログアウトになるので、ゲームデザインとしてその時間を越えないようになっていたのだ。

 しかし、現実となってしまえばゴリ押しのタイムアタックなど出来ない。

 そして強制ログアウトもない。

 時間の管理は各人が注意して行うしかないのだ。


「俺は桜山さんに賛成だ。空腹状態というのは体がエネルギー不足になるということだ。満腹も逆に危険だから食べすぎない程度に食べ物を入れておいたほうがいい」


 祐希がそう言えばもう決定と同じだ。


「わかった。じゃあ軽く食べておこう」


 ということで、それぞれが弁当を広げる。

 食堂の娘である村上幸子の弁当は、さすが、バランスの取れたお店屋さんのような内容だった。

 特に卵焼きがいい。


「だ、だし巻き卵だ……と?」

「欲しいなら交換してあげてもいいよ。アキラくんのお母さん料理上手でしょ」

「ふっ、これでも食らえ!」

「な、……キャラ弁だ……と?」

「二人共、人に作ってもらったご飯には、ちゃんと礼儀を払って食べるものよ」


 さっそく弁当トレードを始めた幸子とアキラにゆえりが釘を刺す。


「そう言う桜山の弁当は配給の冷凍食品と見た!」

「自分で作ってるんだからいいでしょ!」


 現在食料を手に入れるには主に二つのルートがある。

 一つが移動販売やセーフティゾーンにプレハブで作られたいくつかのチェーン店での買い物。

 もう一つが、政府の支援政策による配給品だ。

 これは人数割りで、ひと家族に一日の最低限のカロリーが配布される。


 事前に予想されていたことだが、流通が困難になることで食料品の値段が高騰した。

 政府が抑えてはいるが、それでもある程度の値上がりは仕方がないことだ。

 嗜好品などは政府も抑える気がないのでバカみたいな値段に跳ね上がっている。

 そこで、低所得者や、今回の異変で仕事を失った家庭などが最低限生きていけるようにしたのが配給政策だったのだ。

 電気が生きている現在、保管の容易い冷凍食品がメインの配給品となっていた。


 ゆえりの弁当の中身はその冷凍食品だったのである。

 とは言え、ほかのメンバーが親に作ってもらっているなか自分で作っているのだから誰はばかることなどない。


「副部長はこのご時世にコンビニ弁当?」

「うちのマンションにコンビニチェーン店が入っているからね。知っての通り俺は一人暮らしだし」

「なるほど。てか今現在まだ流通を確保しているコンビニチェーンが怖い」

「大手は自動配送システムを使ってるんじゃなかったっけ?」


 祐希のコンビニ弁当に対して感想を述べるアキラに、幸子が自分の知る話を投下する。


「自動配送だと襲われない?」

「人間がいなければヘイトが向かないからね」


 アキラの言葉に祐希が答える。


「おおなるほど。そうかモンスターのヘイトは人間にしか向かないからAIロボなら高速道路を通れるのか!」


 さすがの検証魔のアキラも盲点だったらしくいたく感動していた。


「で、さっきから隅っこでもそもそ食っている斉木の弁当はなんだ? ぬぬっ、これは、イモの煮っころがしにナスの味噌漬け、おにぎりにゆで卵! 全体的に茶色いこの独特の雰囲気は、お婆ちゃん弁当と見た!」

「うっさい、死ね!」


 祭がアキラを睨みつける。


「やめなよ、斉木くんが怒るのも当然だよ。なんで人のお弁当にケチをつけるの?」


 ゆえりがアキラを叱りつけた。


「ケチなんかつけてないだろ。誰が作ったかという話題を振っただけの話だ。斉木、別にお婆ちゃん弁当は恥ずかしくないぞ。実際美味そうじゃね? な、おれのプチトマトとそのイモの煮っころがしを交換してくれよ」

「お前、ほんと、物怖じしないな」


 怒鳴りつけたのに全く動じないアキラを祭は呆れたように見て、イモを一つ弁当の蓋に乗せてやる。


「サンキュ、じゃあプチトマトな」

「そのレートは不公平だと思います」

「なんでだよ!」

「仲いいなお前ら」


 他人の弁当交換で盛り上がるアキラとゆえりに、祭はぼそっと言った。


「そりゃあまぁ小中高と一緒だかんな」

「腐れ縁ね」

「腐ってねーし」

「普通はさ、中学校ぐらいで男女で遊ばなくならないか?」

「うーん、俺らはゲー研があったからかなぁ」

「趣味が一緒だったってことか」

「そーそー」


 うんうんうなずくアキラに、祭はため息を吐く。


「ちょっとだけ、うらやましいかも」


 誰にも聞こえない声でそう呟いた。

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