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妹属性に悩みながら生きています  作者: ムクチ ココロ
一章 街までの冒険編
9/9

第9話「名消し」

お名前考えました!


少女と手をつないでいくことはやぶさかではないが、いかんせん保守的になってしまう。リスクと考えるのであれば、迷わず手は避けるべきだ。けれども、あどけない少女が手を出してきている姿を見ると、どうしても良心が痛む。


意を決して彼女の手を強く握った。



すぐに目に見える範囲で俺の手を確認してみるが、異常はない。体に異常もない。

小さく息を吐いて、少女に満面の笑みを見せた。そして、俺たちは大部屋へと向かった。





<side 少女>


私はこのスキルのせいでいつも人を試しちゃう。

私のスキル名は分からないけれど、この紫色の手は別のスキルによるもの。色からわかるけれど、これは触れた相手に毒を与えるというものなの。


今まで私の腕を見てきた人達は例外なく私から距離を取った。それはパパやママでも変わらなかった。


手の色が人と違うだけなのに、なんで私自身を否定されているんだろう。

何度考えても、学のない私には難しかった。


そんな時、目の前のおにーちゃんだけは迷っていたけれど、手を握ってもらえた。


今まで、この手で人を触ったことなんてなかったから、これが暖かさなんだってわかったの。


私、別のスキルで人の感情を視ることができるの。だから、このおにーちゃんは私を受け入れてくれたことは分かったよ。



元々居場所なんてなかったんだ。だから、せめておにーちゃんのために何かしたいな。


それに、かっこよかった。



大きなお部屋につくと、おにーちゃんは手を放しちゃったけれど、私は握られてた自分の手をさすりながら、きっと笑えていたと思う。





<side 集>


大部屋につくと、そこには15人ほどの捕まった人間が運び込まれていた。中には自力で歩ける人もいたが、ほとんどの人が生命維持に全力といった感じが見えた。


そんな状況でありながらも、大人と一緒の速度で歩いて息切れしていない少女はかなり特別なのではないだろうかと思いつつ、取り合えず今後の方針について話そうと口を開いた。



言葉を返すことも疲れるのか、多少表情に変化はみられるものの、生にしがみつくような人間はだれ一人としていなかった。


「…という感じで、ここにいる人は全員で近隣の村に行きたいと思います。さっきの女の子…えっとそういえば名前を聞いていなかったか。


君、名前はなんていうの?」



俺は彼女の名前も聞いていないのに話をしていたことに、まだまだ人と話すことに慣れていない自分を見た気がした。


「私の名前は…ん。名消ししてるから今はないの」


「名消しってなんだ?」


「その名の通り、名前を消したんだよ。昔の私はもういないの。だから、おにーちゃんに名前を付けてほしいかな」


「そんな大切な役割、親に…」


そう言いかけたところで口を閉ざした。この子は腕の色のせいで両親を含めて色々な人から虐げられてきたといっていたんだ。正直、人の名前をこの短期間に二つも考えるとは思わなかった。俺のネーミングセンスがないことは昔から知っているんだよ。



「分かった。今日から君はハルだ」


必死に考えてはみたものの、努力と根性だけではいい名前は出てこない。だから、紫=パープルだから、パル。けれど、呼びにくいからハルといった感じだ。これでこの世界に四季が存在して、今が夏というオチだったら悲しいな。



「うん。私はハルだよ。よろしくね。集おにーちゃんっ」


こうしてまたもや俺が命名した少女、ハルの名前を出して一番近い村まで移動することにした。ここには水も食料もそこまでない。一刻も早い移動がこの人たちの命を救うことになるかもしれない。そう思ったら、居てもたってもいられなくなる衝動がこみ上げてきたが、ぐっとこらえて行程を考えることにした。



勿論、誰も地図なんてものは持っていないわけで、少しでも会話ができる人を中心に、一番近い村であるアチ村へのルートを決め、その後ティンビ村に盗賊を討伐したことを報告しに行くことに決めた。


幸い、盗賊たちも村から遠いところに拠点は作りにくかったのか、成人の徒歩で二時間ほどといっていたため、おそらく10㎞もないだろう。これなら、何とかなるかもしれない。



正直、レイアを使うことは気乗りしないけれど、シロが傍にいないというほうが危険だと思う。ここは、逃げられても仕方がないと腹をくくりつつ、レイアにお願いすることにした。



「レイア、アチ村に先に行って、動ける男性を連れてきてほしい。歩ける人は自力でアチ村まで歩いてもらうけれど、歩けない人たちは俺とシロで見ている。


レイアにしか頼めないんだ。お願いしてもいいか?」



「ご主人、それは私が逃げれることを考慮したのかな?それとも、逃げられてもいいと思っているのかな?」



「正直、逃げられても仕方がないと思っている。けれど、せめて人を呼ぶことだけはしてくれると助かる」



黒装束に黒マントの女性が、体をくねくねさせながら、俺のもとに近寄ってきた。とても嫌な予感がする。



「私は逃げないよ。大丈夫、助けを呼んでくるさ。

なんたって、ご主人と旅をしたほうが楽しそうだ。逃げても行先もないくらいなら、どこまでもついていくよ。なんなら夜の相手で…も…」


急にレイアが黙ったのもよくわかる。また同じことの繰り返しで分かると思うが、レイアの後ろにはシロが立っていた。



不思議なことに、背丈は白のほうが圧倒的に小さいはずが今だけはレイアの後ろに居てもよく見える。そして俺のほうを見た瞬間に、殺気が収まった。どうやら、さっきのやり取りは効果があったみたいだ。



「えっと、それじゃ私は行くね。


こう見えて、私は足が速いし、隠密も得意だからね。

すぐに呼んでくるよ!」



(どこから見てもレイアは隠密が得意そうで、足が速そうに見えるよ!)



心の中で大きな突込みを入れながら、レイアに手を振り先に走ってもらった。用心棒として雇われていたのだから、動物などに襲われても大丈夫だろう。



俺たちは、歩ける人に再度事情を説明し、なるべく集団で固まって歩くようにお願いした。おぼつかない足取りの人が多い中、何とか大部屋から移動していってくれた。




ハルを除いて。





紫なのにハル(春)という言葉にかけてピンクというイメージがついてしまうかも…

紫色は名前が難しかったです


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