第7話「睡眠」
なんとか現実と両立で来ている…のかな?
ひとまず、洞窟を出る前に捕まっていた人たちを解放しようか悩んだが、あたりが暗くなっていることもあり、解放は朝行うことで決まった。
流石に死体がある部屋で寝たくはないため、空き部屋を探していると、いい感じの藁で作られた寝床があった。しかも都合がいいことに三人分だ。おそらく、見張りの交代用なのだろう。入口にも近いため、不審な動きがないか確認するうえで丁度いい場所だ。
「ひとまず寝て、体の疲れを取ろう。俺、シロ、レイアの順でいいだろ」
シロは無言でうなずいているが、レイアから意外な一言が飛んできた。
「ん?仮とはいえ奴隷だよ?もっと男の子としてやることがあるとばかり…いや、私としても体を大事にされるのは嬉しんだけれど…」
レイアの爆弾発言により、シロの殺気が飛んできます。まじでやめて、死んでしまう。
シロに目配せをすると、ようやく殺気を出していたことに気づいたのか収めてくれた。いくら可愛いと言っても、シロは俺の奴隷じゃないため、いつでも俺に攻撃することが出来る。
もちろん、レイアも例外ではない。正式な奴隷になっていないため、寝込みに襲われたら俺はきっとなす術もなく死ぬだろう。だからこそ、間にシロを挟みたかっただけなんだが…どうやら勘違いされたらしい。
「自分の体は大切にしろ。女の子は特にだ。
ましてや人のものになるのであれば、きれいを保つことが大切なんじゃないのか?」
「うまく逃げられている気がするけれど、まぁいいよ。けれど、ご主人は真ん中で寝ること。シロちゃんが可愛くて寝れないからね」
確かに、シロが寝ていたら…と想像すると、確かにやばい。何がやばいとか言えないが、この可愛さは守ってあげたくなる可愛さだ。その分、頭を撫でたり、ほっぺをぷにぷに…
「集、エッチ」
シロからさらっととんでもないことを言われてしまった。口に出していないから、セーフだろうと思ったが、どうやら顔が緩んでいたらしい。せっかくシロに出会えたのだから、このくらいの妄想をしてこそ健全な男子なのではないだろうか。
「ご、ごめんシロ。悪気は無かったんだ。
よし、俺が真ん中で寝る。これ以上は何も言わずすぐに寝ること。もし異変を察知したら残り二人をすぐに起こして戦闘態勢ね」
「私も寝ていいのか?一人は護衛として起きていないと危ないんじゃないか?」
「いや、シロならすぐに起きると思う。シロの索敵はすごいからね。おおよそ寝ている間でも察知はできるだろう」
そう言い終えると、シロは当然できると言わんばかりに頷いた。根拠は無かったが、シロはそれくらいサクッとこなしていけるだけの強さがあると踏んで正解だったらしい。
「じゃ、寝るとするか…おやすみ」
<side レイア>
「起きてる?ご主人…、ね、てる?」
「反応は無しか。私女として見られていないのかな…。さて、逃げようかとも迷ったけれど、こんなに優しいご主人なら一生ついていきたいもんだね…。
こんな汚れ仕事しかしていなかった私を、奴隷にしてくれる優しいご主人」
おやすみなさい。そう言い終えた私は、ご主人の頬に軽くキスをした後、久しぶりに熟睡することが出来た。
<side シロ>
寝てたら、奥に寝ていたレイアが動いた。独り言をぶつぶつ言っているけれど、集に対して殺意はないみたい。
もし集に何か危険なことをするようであれば、私が必ず守る。そう思って気を張っていると、レイアが集のほっぺにキスしてた。
一瞬にして胸の中でイライラ、もやもやが出てきたけれど、何とか今回は抑えることが出来た。だって、集を起こすわけにはいかないから。
(シロだって…集にキスしたい…のかな?)
自分の感情がうまく整理できないまま、何度も何度も考えて、考えて、考えていたら、すっかりと朝日が顔をのぞかせていた。
<side 集>
目が覚めた。
ゆっくりと上体を起こして、周囲を見渡してみると、二人とも熟睡できているようだ。シロは反対方向を向いててよく分からないが、入口のほうを向いて寝ているのだから、きっと索敵しながら寝ているのだろう。本当にシロがいてくれて助かった。
「集、起きた」
「おはよう、シロ」
見ていたことに気づいたのか、シロはこちら側に体勢を変えていた。ふと目が合うと、なんだか昨日の一日が内容が濃かったため、聞きそびれていたことを思い出した。
「シロ、シロは何で俺の味方でいてくれるんだ?」
「これは、これだけは内緒」
初めてシロからの拒否があった。シロも明確な意図があって俺について来てくれていることが知れただけでも良しとしよう。
「レイア、ぐっすり寝てるな。もう少し寝かしておこうか」
「シロも、寝る」
「ん?あぁ、索敵しながらだと疲れも取れないよな。今からは俺が起きているから、シロはゆっくりと寝てくれ。まだ早いからな。
好きな体制で寝ていいんだぞ?」
「ん」
そう言うとコロコロとシロが俺のほうに転がってきた。そして、同じ藁の上に来たところで止まり、俺の膝の上に頭を置いた。
驚きはしたものの、俺が好きな体制でといった手前、今更ダメとも言えない。
兎に角シロがゆっくりと休めるように、努力しよう。
もし猫を飼ってきたらこんな気持ちなのだろうか。予想以上に軽かったシロの頭を時折撫でながら、時間が流れるのを待った。
それから何分経ったかよくわからないが、レイアが起床した。