第4話「ボス」
なんとか投稿!!
シロの後ろを歩いてわずか1分ほど。すぐに次の集団と遭遇した。幸い、酔っぱらっていたのか仲間を呼ばれることもなく、早々にシロが息の根を止めてくれた。俺の手は、いまだにきれいなままなのに、こんなにも可愛い少女の手はすでに赤く汚れていた。
「集、多分、ボス」
その言葉だけで、この先にあると思われる空間にいる盗賊が、このアジトのボスであるという事は分かった。ただし、何人いるのか、どの程度の強さなのかは、凡人の俺には全く分からない。精々、矢で射抜かれないように周囲に気を配るとしよう。シロが戦いだけに集中してもらえるように。
シロの声に小さくうなずきを返した俺は、小さく握り拳を作っていた。血は出ていなかったが、わずかな爪の食い込む痛さから、集中する姿勢を作れるだろうという小さな望みからの行動だった。
入口が近づくにつれて、喧騒もより一層大きな音になってきた。明らかに今までの比ではない人数が終結しているのだろう、聞き取りにくい言葉でしかなく、耳障りだった。
(ん?聞き取りにくいだけで、なんとか聞き取れる。という事は、言語に関してはひとまず心配はなさそうだ)
今そんなことは小さい内容かもしれないが、内心ほっとしていた。余計な肩の力も抜けたのだろうか、意識していなかったためか少し肩に疲れが感じとれた。
「シロ、すまないが戦闘をすべて任せる。もしとらわれている人が危険な場合、可能であれば助けてもらいたい。ただし、俺の中で優先順位はシロ、お前だ。頼むから生きていてほしい。」
シロには簡単な注文かもしれない。二万人を相手にできると息巻いていたほどの実力があるのだから。だけれど、こういったことは声に出しておきたい。
「頼んだ。俺はお前を信じている」
在り来たりかもしれないが、しっかりと言葉に出すことが出来た。今まで人と話していない分、妄想は色々してきたものだ。これくらいどうってことない。
…いや、言い終えた後に死ぬほど恥ずかしかった。
「任せて」
彼女は、静かにそう呟いた。ただ、眼には力強さが宿っているようにも見えて、シロの中でやる気になっているのだろうということは何となく伝わってきた。俺のきのせいかもしれないが。
物陰に隠れつつ、中の状況を把握していく。薄暗くて見にくかった今までの場所とは異なり、ボスのいる空間のためか明るい。雑な行動をして悟られたらまずい、そう思い索敵もシロに任せた。
シロはおもむろに指を四本立てた。
それが意味するのは、全部で敵が四人、というわけではないだろう。多分、4グループ、もしくは捕まっている人間の数だろう。わざと分かりにくい指で合図したという事は、下手をすれば気づかれる位置にいるという事だ。敵に位置を把握されないよう、シロに確認をするために、耳元でそっと聞いてみた。
「(シロ…)」
「っ!?」
大きな音を出さないように気を付けていたはずのシロが盛大にバックステップをとった。そこには、今までの神妙な顔つきとは異なった、紅潮した頬をもつシロがいた。もしかして、耳元でいきなり声をかけたのはまずかったのだろうか。
「…お前ら黙れ!!!」
きっと今の声はボスだろう。それもそのはず、ボスのいる空間にシロはバックステップをとっていたからだ。敵からしてみれば、いきなり現れた奴がその場から動かないのだから、なお不審に思うだろう。
仮にも一団体を率いるボスだ。最低限の統率スキルなどを持っているのかもしれない。素人目ではわからないが、今まで戦ってきた敵の動きとは大きく異なり、すぐに戦闘態勢へと切り替えていたのは流石だろう。
「お前、なにもんだ…。見張りの奴らは…ってもう死んでるか、その様子だと他は全滅だろうな。」
このボス、案外見た目の割に頭の回転は早いな。身長は190㎝といったところだろう。大きな鉈のようなものを腰から下げているほかに、背中にはそれどうやって使うんだというほど大きな槌がこしらえてあった。いかにも悪人ですと言った顔で、それ以外で気になったのは奥にいるあいつだろう。
「…。」
目があった。ただし、すぐに目をそらされた。なんというか少し傷ついた。もしかしたら精神系統の使い手なのかもしれ…いや、俺のメンタルが弱いだけだろう。
それにしても奥の奴がボスよりも気になる。ボディラインをみてもいまいち性別の判断ができない。さらに、忍者かよ!と突っ込みを入れたくなるほど、全身を黒いマントや布で覆っている。なぜだかわからないが、猛烈に気になる。
いきなりシロに突き飛ばされた。
前を見ていなかったからよくわからなかったが、俺が吹っ飛ばされた瞬間、黒マント人間の目が笑った気がした。
「集、邪魔。下がって」
シロさんに注意されてしまいました。
おかしい。俺は自分が弱いと認識しているし、死に急ぐタイプでもないはずだ。それなのに、どうして部屋の中心に俺は立っていたんだ。そんなところに突っ立っていれば、間違いなく殺されてしまうだろうに。
とりあえずシロに言われたとおりに壁際まで下がり、今度はシロが部屋の中心に立つような状態に切り替わった。
そこからは、戦闘がいつ開始されてもおかしくないような雰囲気の中、盗賊のボスが口を開いた。
「お前、強いな。先生、お願いします」
俺が勝手に命名した黒マント人間はその声を聞くと、一歩前に出た。どうやら、こいつが先生と呼ばれる人間らしい。先生、ということは、少なくとも盗賊のボスよりは強いのだろう。
「嫌だよ、私まだ死にたくないもん」
その見た目からは想像ができないほど声がきれいだった。というより、女性だったのか黒マント人間め。
誤字脱字あったらすいません。