M14 EBRは狙撃銃ですか(ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン)
アニメ「ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン」を見ていて、主要人物のひとり"M"が持っているM14 EBRという銃が「狙撃銃」とされていたので、ツッコミたいと思います。
「セーラー服と機関銃」は2回映画化されていますが、どちらも機関銃にはアメリカが第2次大戦当時に大量生産したM3サブマシンガンを使っています。この銃は拳銃用の弾を使っていました。ライフル銃の弾に比べて弾薬が短く、後ろに詰まっている火薬(装薬)が少ないので遠くに飛びません。そのかわり反動が少ないのです。
現代的な自動小銃のご先祖様とされるのが、第2次大戦末期にドイツ軍が装備したStG44ですが、これは「装薬を減らした7.92mmライフルの弾」を使っていました。M14はアメリカ軍のライフルが昔から使っている弾薬と同じ口径7.62mmで、装薬を軽くする工夫をして弾薬は小さくなりましたが、威力も反動も昔のライフル銃弾並みでした。
アメリカ軍はベトナム戦争で、もっと反動の小さい弾をフルオートで(切れ目なく)撃てるAK47自動小銃と撃ち合うことになりました。ジャングル戦では遠くまで弾が飛ぶことが利点にならないので、アメリカ軍も似たような銃を採用して、M14はお払い箱になりました。
ところが、全員が新しいM16自動小銃を持つようにすると、ちょっと遠くにいる敵を攻撃できず、相手が古臭いライフル銃を持っていると一方的に撃たれる心配がありました。歩兵分隊にはもっと重くて威力のある軽機関銃もありますが、あとひとりくらいは射程の長い銃を持っていた方がいいだろうと言うことになりました。特に今世紀に入ってアフガニスタンで戦うようになると、遠距離から撃ち合いになることが増え、対策が必要になりました。
その長射程の銃を任される選抜射手がマークスマンであり、M14 EBRはマークスマンライフルなのです。ですから「自分が発見されないうちに初弾を撃って当てる」銃というより、「遠めの敵に遭ったら対処する」銃なわけです。M14に望遠狙撃スコープをつけたものはM21と呼ばれ、こちらは狙撃兵や警察の狙撃手のものです。