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形成作戦

 形成作戦という言葉がマスコミに出てきて、解説者たちの「軍事知識不足」を揶揄(やゆ)する皆さんが増えています。まあ、この言葉の解説を始めると馬脚があらわれやすいのは確かですが、短く的確に訳すのが難しい言葉でもあります。


 shaping operationと対語にしてよく使われる言葉がdecisive operationです。「決定的作戦」と訳すと「これで決めるッ」という全力全開感が乗ってしまって良くないように思います。例えば「ウクライナの被占領国土回復」という作戦目的を果たす「主作戦」のことをこう呼ぶわけです。


 その作戦目的を果たすためには、それに見合った優勢が必要です。ウクライナ軍が入っていった戦場で抵抗するロシア軍の兵や車両、外から飛んでくるロケットなどが、ウクライナ軍が目的を果たせる程度に弱くなければなりません。


 2022年春から夏、キエフ北方の某道路にはたくさんのロシア軍車両が補給切れで止まり、何か月も動けず、ウクライナ軍に対して戦闘力を発揮できませんでした。いくら戦力を持っていても、作戦地域に影響を与えられないなら、優勢に貢献できません。逆に、ロシア軍がいくら全体としてウクライナ軍より数で勝っていても、「作戦地域に限って言えば」ウクライナ軍が優勢なら、ウクライナ軍は作戦目的を果たすでしょう。古い言葉で、「局所優勢を取る」などといいます。


 局所優勢を取る方法はたくさんあります。空からの攻撃や現地抵抗勢力の協力で鉄道や道路に交通妨害をかけ、部隊や物資の輸送を遅らせれば、こちらが増援した作戦地域ではしばらく優勢でいられます。もちろん補給物資そのものを焼けるなら、同様の効果があります。


 わずかな兵力で陽動作戦をかけ、あるいは偽情報にひっかけ、敵部隊の一部を作戦地域から遠ざけても、局所優勢がとりやすくなります。


 このように主作戦に先立って、作戦地域の「敵を減らす」「敵をそらす」補助的な作戦を総称してshaping operationと呼ぶわけです。「お膳立て」作戦というのもそれはそれで死語に近い気がしますし、「環境作り」作戦というのもイメージがゆがみそうです。



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