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実験?

 昼と夜の中間ぐらいの頃。

 

 俺たちは一つの建物の目の前にいた。

 そのように云うと先ほども似たようなやり取りをした気もするが、今いるのはもちろんさっきまでいたショッピングモールではない。

 

 一つ。

 

 あの時と同じ点があるとすれば、目の前の建物がショッピングモールと同等の大きさを持つ超大型の建築物であるということだ。


 さっきいた建物が横に長いことに対して今回の建物は縦に長いことが目に見える特徴であった。

 ソフィーに教えてもらった言葉で表すならば――

 

 『超高層ビル』


 らしい。

 その建物は全面ガラス張りであるのにしかしながら中の様子を一切窺うことができない。 

 何かしらの方法でこちらからの視界を阻害しているのだろう。

 そういった阻害魔法があるので、おそらくその魔法の延長線上の技術を利用したものだと思う。


 さて、先ほどと同様にまた建物の前で呆けていると――


 「お迎えに上がりました」


 目の前の扉が左右に開くと同時に、まるで感情のないような抑揚を感じられない声音で俺たちにそう告げてきた者がいた。


 声を告げてきたのは、膝丈ぐらいの上下がつながった、ひらひらの淡い紺色のしたドレス? のようなワンピース? のような服に、白いエプロンを着用した一人の女性。

 

 どうやって俺たちが来たことを察知したのかは不明だが、おそらくここまで会いにきた人物が寄越した迎えだろう。

 俺たちにそう告げた後、軽く一礼したのち、


 「こちらです」


 と言いながら背を向ける。

 

 扉が閉まってしまう前に慌てて彼女の後を追いかけて後ろに続く。


 俺たちが通されたのは四方が真っ白の一つの部屋だった。

 広さは俺が趣味で作っている畑ぐらいの面積――といっても想像できないだろうから、まあまあ広い、とだけ言っておく。


 物なども一切何も置かれていないため、古い洋館などよりもむしろ不気味さを感じさせる。

 本当に何が起こるか未知数な部屋だから怖いのだと思う。


 なぜこんな部屋に通されたんだ――と思っていると、


 「ようこそ私の実験室へ! 会いたかったよ、シン! 勿論、他のみんなもね!」


 部屋に誰かの喜色にとんだ声が反響した。

 

 『誰か』 じゃないな。

 この声は確実に俺たちが会いに来た人物だろう。


 ん?

 というか今実験って言ったか?


 「それじゃあさっそく始めようか! マドールくん、例のものを渡してくれたまえ!」

 「かしこまりました。マスター」


 俺の思考を遮るように喜色の声を上げた本人は、不遜な物言いでさきほどここまで案内してくれた女性にそのように言い渡す。


 命令を受けた女性は三本の細長い小瓶を手に持ちながら、一本ずつ俺以外の三人へと手渡した。


 「それじゃあ、今渡したものを飲んでくれるかい?」


 小瓶を渡された三人は、


 「えー、……なんか怪しいんだけど」

 「……どうしてもですの?」

 「……いや」


 と訝し気な表情で渋るのだが――


 「まあ、そう言わずに! きっと良いことが起きるから! さあ実験を始めようっ!」


 渋る三人に飲むのを再度促す喜色の声の主。


 この声色じゃどうせまた断っても無駄だろうと思ったのか、小瓶を持った三人はいまだ訝し気な表情をしながらも、しぶしぶと言った様子で最後は――ええい――と投げやりな感じで一息にあおった。


 「ん? 何も起こりませんわ?」


 小瓶の中身を飲んだ三人に特に変化は起きない。

 

 とクロエが呟いた瞬間、それが引き金になったのか、


 「なんだか暑くなってきたわね。部屋の温度ちょっと高いんじゃないの?」


 と文句を言いながらイリスが上着に手をかける。


 「そういえば、なんだか暑いですわ。ワタクシも身体が温かくなってきました」

 

 「ん、私も」と言いながらソフィーも二人の言葉に同意しながらローブを脱ぎ始める。


 「いや? 別に暑くなってないと思うんだ――」


 が――と俺が三人の言葉を否定しようとした瞬間、

 「ああ、熱い! 身体が熱いですわ!」


 ――クロエがそう叫びながら服のボタンにまで手をかけ始めた。


 「ちょっと、お前こんなところで何やってんだ!」


 慌ててクロエの行動を止めようとすると、


 「私もどうにかなっちゃいそう! こんなの熱すぎるわよ! もう我慢できない!」

 「……もう無理、熱いっ」


 クロエ同様イリスとソフィーも何度も熱い熱いと言いながら服を脱ぎ始めた。


 「おいっ、お前らどうしたんだよ?!」


 焦る俺の言葉も聞かず下着姿になった三人は、突然俺の方を振り向いて――


 「あれ? なんだかシンがとても愛おしく感じてきたわ……」

 「あぁ、シン様。なんて心がそそられるお姿なのでしょう」

 「……シン」


 ついに残すところが下着だけになってしまった三人が虚ろな目をしてこちらを見つめてくる。


 「おい……、本当にお前らどうしちまったんだ……?」


 トロンとした目をしながら徐々ににじり寄ってくる三人に焦燥感を覚えた俺は、後ろに足を引くと――


 「なんだっ?!」


 先ほどまで何も無かった空間に突如姿を現した物体に足を躓かせて倒れ込む。


 「――って、おい。いつの間にこんな部屋に……?」


 倒れ込んだところにはいつのまにか大型のベッドがあり、またさっきまで真っ白だった部屋の空間はピンク色の怪しい光彩をキラキラと放っていた。


 「ウフッ。シン様逃がしませんわよ」

 

 獲物を見るような獣のごとき眼差しで俺を見つめながらベッドにダイブし、俺の上にまたがるクロエ。


 「あぁっ! ずるい! 私も――」

 「逃がさない――」


 若干危ない言葉を発しながらイリスがうつぶせに倒れ込んだ俺の右側に、そして絶対に逃がさないと言った様子のソフィーが俺の左側を陣取る。


 俺の近くにすり寄った三人は俺の服や頬に手をかけ始める。

 手はソフィーとイリスにがっちりホールドされてしまう。


 「やめろっ! おまえらそんなとこに手をかけるんじゃねえっ?! おい! マーガレットこいつらなんとかしやがれっ! お前が原因だろうっ!? っ?! クロエっそれはまずっ――」

 「シン様、ワタクシもう限界――」


 クロエが俺の唇を見ながら顔を近づけようとした瞬間。


 『バッシャーンッ!!!』


 天井からめちゃくちゃ冷たい水が大量に降ってきた、というか浴びせられた。

 冷たい水を浴びせられて「キャッ」と声を上げる四人。


 「あら? ワタクシは一体何を? なぜシン様がワタクシの下にいらっしゃるんですの? ……まっ、そんなこといいですわねっ! シン様がワタクシの下にいるならばすることはただお一つ! ブヘッ――」


 正気に戻ったはずのクロエがそんな戯言をいいながらにじり寄ってくるのを――顔をわしずかみにしてすんでのところで止める。


 「うぅ~、づめたい。ッ?! ちょっ、なんで私がシンの手なんか抱きかかえているのよ!?」

 「……シンのエッチッ」


 状況を読み込めていない様子のイリスと、悪くないはずの俺を責めてくるソフィー。

 ソフィーの言に、不可抗力だ、とつい言葉がついて出ようとしたが――


 「こうなった犯人なんて一人しかいないだろ?」


 自分を早々にこの状況の容疑者から排除するために、弁明ではなく責任の追及を優先した。


 「おいっ! どっかで見てるんだろ、マーガレット! 早く出てきやがれ! おかげ、俺の純潔が奪われるところだったぞ!」


 どこかでこの『実験』を観察しているだろう犯人に向けて、文句を垂れながら自首するよう促す。


 「はっはっはっ! バレてしまっちゃあ、しょうがないね! そうさ、私がこの状況の犯人さ! っていうか私が渡した薬でそうなったんだから当然じゃないか?」


 ノリノリで俺の言葉に口上を述べたが、持ち前の切り替えの早さで開き直る容疑者。


 「さて、これで実験は終わりだっ! とりあえず上まで来てくれるかい。マドールくん! そちらのお客さん方を私のところに連れてきてくれたまえ」

 

 再び俺が文句を言うために口を開こうとしたのを察したのか、続けざまに実験終了の宣言をし、先ほどの案内人に一方的に命令を下す容疑者。


「承りました、ご主人様。では、こちらへどうぞ」


 命令を受けた女性は、部屋の一部に突如出現した小部屋に俺たちを誘うのだった。

ライトに女性に押し倒される。好きな展開です。

お読み下さりありがとうございます。

ブックマーク登録ありがとうございます。


某小説を読んでいたら、人間が一生で書ける文字数は決まっているのかもしれないと書いてあり、

なんだか怖くなって一文字一文字考えて書かないといけないな、と思ったのですが、ぶっちゃけ

書いてたらそんなこと気にしていられないぐらい集中してるので、むしろ深く考えるのはよした方がいいのかもしれません。

アンチテーゼというわけではないのですが、書きたいだけ書けばいいのです。自論ですが。


すいません。あとがき長すぎました。

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