町の噂
とある日。
俺は一週間分の食事の材料を買うために近隣町へ出かけてきていた。
町の名はコルンといい、王国直轄領にあるそこそこ大きい町だ。
ここには生活に必要なものがある程度そろっているのでいつも利用させてもらっている。
さすがに王都と比べると格段に見劣りするのだが、昔ながらの古き良き町という感じがして俺は割と好きだったりする。
商店や商人、旅の者などの数も少なくはなく、意外と多くの者にとって重宝している町という感じだった。
また、町周辺に広がる村々の者たちにとっては、町の酒場は憩いの場であったりもする。そのような理由で、コルンにいる総人口もまた少なくはなかった。
そんな町に買い出しに来る俺だが、基本的に行くところはいつも決まっており、全ての買い出しには大して時間を要していないのが常だ。
そのため買い出しの日には決まって、飲み屋街の酒場で時間を潰すのがいつも通るコースであった。ちなみに時間を潰すと言っても暇を持て余しているというわけではなく、せっかく町まで出てきたのだから飲んで帰りたいというだけだ。
だからその日に限っては、ここで夕食も一緒に済ましていく。
その日も例に漏れず、昼が過ぎた頃から飲み始めていた。
昼間から飲んでも大丈夫。これがスローライフの強みだな。
そうそう、今日は珍しく同伴者がいる。
その同伴者とは、俺の向かいで先ほどから果実酒をチビチビとやっているソフィーだ。
ちなみになぜ着いてきたのかは知らん。気が向いただけ。たぶんそれぐらいの理由だと思う。ソフィーに限っては深く考えてはいけないのだ。
言葉少なで何を考えているのかあまりわからない無口の少女。
それが一文で表した場合のソフィーであり、それ以外の表現だとあまり思い浮かばない。
今日のソフィーは、町中でたまにみかけるような清楚ないで立ちといった装いだ。それ以上の今日の装いの描写は記さない。別に誰に対して言っているわけではないから、それ以上書く必要もないじゃん? 俺元勇者だから語彙少なくてさ、表現できないんだよねっ! ごめんねっ! まあ、それでも知りたいっていうならしょうがないから一つだけ教えてあげるとするよ。
ワンピース着てる。
はい。以上、今日のソフィーの格好でしたー。お疲れ様でーす。ちーっす。
……………。
さて、それはさておき、おいといて、みんなが先ほどから不思議に思っていることを教えようじゃないか。
おまえさっきから一人心の中でしゃべっていてぶっちゃけ気持ち悪い。
だろ?
ああ、分かっていたさ。
でもさ……、
しょうがないじゃんっ!
俺の唯一の話し相手であるソフィーがさっきから一言もしゃべんないんだからっ!
俺が話しかけても、うん、とか、そうだね、とか、マジまんじ、とかしか言わないんだぜ?
…………。
まぁ、いつものことだから別に構わないんだけどさ。
でも、お酒を飲む席だからせっかくなら少しは楽しくおしゃべりしながらがいいなって思うのも本音である。
え? お前のトーク力が足りないからだって?
馬鹿言っちゃあいけない。一方的に話を振るのが会話じゃないんだぜ。相互での円滑かつしっかりとした受け答えがあって会話は――
とかいうくだらない持論に思考が陥り始めた時、
そういえばお前、最近湖の近くの村らへんで揉め事が多いの知ってるか?
そんな話聞かないが?
どうやらそれを起こしてんのって魔物らしいぜ。お前の村も近いから気を付けろよ。
大丈夫だろ。もう冒険者が倒しちまってるんじゃないか?
いや、そうでもないらしいぞ。一応その魔物がいるところの目星は大体ついているらしいが、なんてたってその魔物は人の気配に敏感だっていうんで、自分に敵意を持った奴の前にはなかなか姿を現さないんだってよ。まあ、死人が出たとかは聞かないから大して危ない魔物ってわけじゃないのかもな。だから役所とかギルドも大して焦ってないんだろ。
そうか。それでも一応気を付けてはおく。心配してくれてありがとう。
まあ気にすんなって! 義理とはいえ兄弟じゃねえか。がっはっは。それと、最近お前んとこいった妹の――
後ろの席から胡散臭いうわさ話が聞こえてきた。
というよりは、途中からは聞いていた。
ふむ。
聞こえてきた話によると、どうやら俺の生活圏の近くにきな臭い魔物がいるらしいな。
俺の生活にとってそこまで脅威にはならなそうだが、一応帰りにギルドに寄って確認してみるか、と思うのだった。
「あ、最後にソフィーとの会話入れるの忘れてた」と書いた後思いましたが、
でも、ソフィーがしゃべらなかったということにしておきます。
お読み下さりありがとうございます。
ブックマーク登録ありがとうございます。
生意気にも次作の次の次作…次次作?
のストーリー考えているのですが、全然思いつかない!
これが才能の壁か、とか言い訳したりしてます。
まずは次作書き上げろよって話なんですがね。