表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/19

仲間たちの趣味

 ある日の昼下がり。

 

 今日も今日とて、相も変わらずに日課であり趣味でもある聖剣ステラの手入れしているときに、

 

 ――そういえばあいつら三人って普段何してるんだろう?


 ふとそう思った。

 

 俺の場合は、趣味である家庭農園の畑の手入れや愛剣ステラの手入れ、料理などをしたり、他に、町へ食材を買いに行ったり、食料調達のために釣りに出かけたりと意外と色々と忙しい。

 だけど、その忙しさは勇者をしていたころよりも苦にはならないものだ。

 もちろん、忙しいと言ってもスローライフの中の忙しさという感じで、のんびりとしたものであるため大した問題ではない。

 

 そのように過ごしている俺なわけだが、他の三人はしばしば姿を見せない時が結構ある。

 俺の趣味に付き合ったりしてくれるときもあるのだが基本はみんなばらばらのことをして過ごしている。

 

 だから、普段ばらばらに過ごしている時、俺以外の三人は何をして過ごしているのだろうかとふと気になったのだ。

 

 思い立ったら吉日! 


 というわけでもないが、一度気になったら忘れられないタイプなので、三人は普段何をして過ごしているのかさっそく調査に向かうことにした。



 まず調査に向かったのは不思議ちゃんことソフィーだ。

 謎っ娘ソフィーを探すべく、ソフィーの部屋やリビング、家の外など、その姿を探したが、ターゲットであるソフィーを探すことは叶わなかった。

 

 そういえば、と思い出して家の二階にあるバルコニーへと向かう。

 そこは普段俺やソフィーが読書するときによく使う場所で、風通りが良く気持ちがいいため、読書などのゆったりとしたことをするのに最適の場所なのだ。

 すっかり忘れていた。

 

 しかし向かった先にもソフィーの姿は無かった。

 

 ――ううむ。今日は外に出かけているのだろう。

 と目星をつけた俺は一旦ソフィーの調査は諦めようかと考えるが――そのように考えた矢先、一冊の本を視線の先に見つけた。

 一本足の円い形をしたテーブルの上にそれは置いてあった。

 ふと気になり、テーブルの方へ歩み寄りその本を手に取ってみる。

 手に取った本の表紙を見てみると、このような題名が書いてあった。



 【これでアナタも脱ボッチ!~人と上手に話す方法十選~】



 お、おぅ。

 これまたなんて題名の本なんだろう。

 そういえば、この前もすごい題名の本を読んでいたな。

 ちょっと気になったので本を開いてみる。

 するとよくあるハウツー本と同じように一ページ目には目次があり、


 ――ふむふむ。


 目次には、人と上手に話す方法十選とその横にそれぞれのページ数が記されている。

 パッと見でそう確認した俺は、次はゆっくりと例の十選とやらを確認するために上から順に目を通すことにする。


 1、人と話すときは笑顔を心がけましょう 2p


 うん。これは普通だな。よくある笑顔の会話術ってとこだろう。

 続けて、


 2、人と話すときは相手も笑顔にさせましょう 15p


 まあ、これも、相手を笑顔にさせるように努力しろってことだろう。

 

 3、2を学んだらさっそく実践です。先ずは相手のマウントをとりましょう 30p 


 んっ? マウント? え? マウントですか?


 4、あなたは3で学んだ体術を駆使し、相手のマウントをとりました。さあ盛り上がってきました次は相手の脇に手を差し入――    100p


 パタンッ。

 勢いよく、だけど静かに本を閉じる。

 

 …………。


 ちょっと怪しげな雰囲気になり始めた本をテーブルの上に戻してその場を立ち去った。

 うん。何も見なかったことにしよう。



 気分を入れ替えて次行ってみよーっ!

 ということで、次に向かったのはクロエの部屋だった。

 ちなみに俺の自宅だから俺の部屋があるのは当たり前だが、家主を除く三人になぜそれぞれの部屋があるかというと、あいつらがここに来て三日目のことだ――



 「ここ今日から私の部屋だから」

 「じゃあシン様の隣のこの部屋はワタクシの部屋ですわね!」

 「ここにする」


 

 ――てな感じで各々が勝手に空き部屋の占有権を主張。

 俺の文句も虚しく空を切り、成すすべもなく空き部屋の流出を許したのだった。

 次の日にはクロエの空間魔法で持ってきたらしい、各々の荷物を各々の部屋に持ち込んでいたのを横目に見ていた。



 そんなこんなで自分の部屋を手に入れた彼女たちだが、基本的に家にいるときはリビングか自室にいることが多い。

 今日はリビングに誰もいなかったので自分たちの部屋にいるのだろうと考えていた俺は、

次の調査対象である俺の部屋の隣に陣取ったクロエのもとに向かった。

 

 ちなみにクロエの部屋だが鍵が取り付けられている。

 トイレや浴室、重要な部屋以外は基本的に鍵はついていない。

 なのになぜクロエの部屋に鍵が存在するのかというとクロエ自身が自ら設置したからだ。

 設置した理由までは知らないのだが結構重厚で頑丈そうな見た目をした鍵である。

 だからクロエが鍵を閉め忘れない限り、クロエ以外のこの家の者が彼女の部屋に立ち入ることは決してできないのだが、今日に限ってはそれが可能そうだった。

 

 クロエの部屋の扉が少しだけ開いていたからだ。

 おそらく閉め忘れたのだろう。

 クロエの部屋の前に立つと、ある疑問と、いけない考えが頭に浮かぶ。


 どんな部屋なんだろう……。

 気になる……。覗いてみようか。


 絶対に誰も入れさませんわというような意志を感じる鍵をつけているクロエの部屋がどんなものかと気になったのだ。

 

 しかし、それは人としてどうなんだ? と思いもしなかったのだが一度生じた好奇心を抑えることはできなかった。

 俺はバッバッと左右を確認し周りに人がいないのを確認する。

 誰もいないと確信した俺はゴクッと唾を飲み込み扉の縁に手をかける。

 そしてそのままソーっと左手で扉を開くと、


 


 ■■■■■■■■■■■■■■


 


 ソーっと扉を閉じるのだった。 

 ィァァァァァァァァァァァァ

 と効果音が付きそうな部屋だった。

 ありていに言えば俺で埋め尽くされていた。

 俺が埋め尽くされていたというと俺が何人もいて部屋にぎゅうぎゅうに詰められていたように聞こえるが、部屋中に俺の人形やら念写したものやらが沢山貼り付けられていたのだ。

 

 ――怖ええええええええええええええよっ!!!


 トラウマになりそうな部屋だ。

 なんか夢に出てきそうなおぞましい雰囲気も感じたし……。


 背筋の悪寒が止まらない俺はその場をそそくさとすぐに離れるのだった。



 気を取り直して最後にイリスの部屋に向かうことにした。

 なんだかんだ言って一応・・は三人の中でまあまあ常識があるほうのイリスだ。

 特段何も心配する必要もないだろう、と思いながら部屋に向かうと、


 ダメよっ! あなたのことを置いてなんていけないわっ!


 部屋の前に近づくと部屋の中からイリスの話し声と思われる声が聞こえてきた。

 部屋の方に近づいて気が付いたのだがイリスの部屋もクロエの部屋と同様扉が少しだけ開いている。

 この家のやつらは少し防犯意識を持ったほうがいいんじゃないか、と思ったが、俺たち以外誰も家に入ってくるわけではないので、まあ、問題ないだろうと、すぐにその考えを隅に追いやった。


 クッ、私たちもここまでなのっ?! いや、まだ諦めるには早いわっ!


 誰と話しているんだろうかと思いながら部屋にいるイリスに向けて扉をノックしようとした時、相手の話し声が聞こえてこないことに気が付いた。

 

 一度叩こうとしたこぶしを扉にあたる寸でで止め、クロエの時と同様にいけないと思いながらも、イリスの部屋の中をソーっと覗いてみると――


 「あぁっ、右手が疼くわっ! 私の封印されし右手が解放されたがっているのを感じるわ

っ!」


 なにやら窓の向こうに向けて一人で叫んでいる。

 また叫びながら、右手を抱え込み、体をくの字に曲げている。

 叫んだその次の瞬間、突然右手を突き上げながらこう叫んだ。


 「アルティメットパワー解放おおおおおおおおおおっっっっ――」


 ――…………。


 「ふっ、またつまらない相手をやってしまったわ」


 何やら、何かの戦闘を終えたらしいイリスが、そう言って俺がのぞいている方へ翻って――

 

 覗いている俺の目と目が合い、

 

 ――ピタッと停止したイリスを尻目に俺は静かに扉を閉め、ソッと後ろに向けて猛ダッシュを開始したのだった。


お読み下さりありがとうございます。


よく一冊10万字以上と言われますが、それが実質の文字数だったならば、

10万字なんて夢の又夢に思えます。枚数的には超えるのですが実質文字数10万字届かないです。

だから一作のみで、100万字とか超えている方を見ると口がポカーン状態ですよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ