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元勇者の看病?3

看病回ラストです。


 サワ、サワサワ、サワ、サワサワ。

 

 誰かに障られているようなくすぐったさを感じて目を覚ます。

 尚も続くくすぐったさの正体を探るために重たい眼を開けようとすると突然ピタリとそれが止んだ。

 なんだったんだ、そう思いながら開け始めていた瞼を一気に押し上げると、俺の目が誰かの目とガッチリ合った。

 

 近っ!!!


 目を開いた瞬間にお互いの目が合う近さにその人物はおり、その距離数センチだった。

 また、その人物が誰であるか探るためにグルっと黒目を回すとその人物は俺の耳元に左手を置き、右手を俺の頬に添えながらか細い唇を突き出していた。



 犯されるッ?!



 すぐさまそう判断した俺は身の上の危険を感じ、物凄い速さでベッドの端に寄り、首から下を布団で覆い隠す。

 ベヒモスとの戦闘から三日しか経っていないため、未だにその傷は癒えていないはずなのにまるでそのことを感じさせないような速さであった。

 しかしながら、実際はまだまだ身体は重たいし、ベヒモスとの戦闘前の状態までは戻っていなかった。

 だが、自分の貞操の危機を感じたことによる火事場の底力的何かが作用して驚愕の退避を実現していた。

 

 「……イリス、お前今俺に何しようとしてた」


 本当であれば怒鳴りたい衝動をなんとか抑えつつ、ガチッと固まっているイリスに向けてそう言葉を放った。

 

 そう。

 寝ている間に俺に何かしようとしていたのはイリスだった。

 よりにもよって人が寝ている最中に襲ってくるなんて、ベッドに潜り込んでくるクロエよりたちが悪い。

 ベッドに潜り込んでくるのもどうかとは思うけれど。

 

 俺が放った言葉に対しても反応を示すことなく固まっているイリスに再度言葉を投げかける。


 「俺を犯そうとするなんて、この性欲魔人野郎めっ。それともエルフ族はそういうことを日常茶飯事でやる異常性癖を持つ変態集団だったのか?」

 「な、な、なっ、何言ってんのよッ! 高貴なエルフ族がそんなことするわけないじゃないっ! それに誰が性欲魔人よ!」


 それまで何かにショックを受けたように固まっていたイリスは俺の非難めいたジト目と挑発に反応して現実に戻ってくる。


 「じゃあ、寝ている俺に何しようとしていたか正直に(・・・)言ってみろよ。やましいことがないなら言えるだろ?」


 イリスの行動の真意を確かめるべく再度イリスにそう問いかける。

 すると、


 「べっ、別に何もしようとしてなかったわよっ?」


 視線を逸らしながらそのように宣った。

 もちろん、そんなことを信じるほど俺は愚か者ではない。


 「吐けっ! そして認めろ! 自分の罪を! 『私は寝ているあなたのことを犯そうとする変態です』 とっ!」


 まあ実際のところイリスが何をしようとしていたのかその真意はわからないのだが、慌てるイリスを見ていたらなんだか楽しくなってきたのでイリスをそう責め立ててみる。

 するとみるみるイリスの顔が赤くなっていき、目が潤み始める。

 それを見てさらに高揚したした俺は、


 「さあっ! 吐いて楽になれよっ! 『私は寝ている勇者を襲おうとする高貴なエルフ族一の性欲魔人です』 とっ!!」

 

 さっきよりも責め立てる言葉がヒートアップしていく。

あれ? これが俗に言うSM プレイってやつですか? 

 えっ、ナニコレ楽しい。

 ど畜生なことを思いながらも普段イリスが見せることのないうろたえた表情を見たら自分の衝動を止めることはできなかった。

 

 俺の若干理性が飛びながら放った言葉を浴びせられたイリスは、


 「私は寝ているあなたのことを犯そうとする高貴なエルフ族一の性欲魔人の変態ですうううううううううううううううっ――」


 目をグルグルと回させ、これでもかと赤くなっていた顔をさらに赤くさせて、絶叫しながら走り去っていくのだった。

 


 それから一時間後。

正気に戻った二人は自分の部屋のベッドの上で見悶えていた。


今回はご都合主義のネタ回でした。なんか不自然に感じた方がいたらそういうことです。

お読み下さりありがとうございます。

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