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元勇者の看病1

 (んっ……朝か)


 瞼を通り越して射し込んでくる薄ぼんやりとした明るさに目を覚ます。


 (あぁ、だるい)


 まだ覚醒しきっていない寝起きの頭で一番初めに浮かんだ言葉はそれだった。

 なんだか全身が気怠く感じる。

 次に意識が少しずつ明るくなってきながら心の中で思い出したことは、

 ――そういえば、あぁ、そうか、聖剣ステラの力を使ったんだったよな。

 で、あった。

 

 ということは、この全身に感じるけだるさは力の反動のせいか。

 だが、腹部中心にそのけだるさ、いや、痛み? いいや、重み?を特に感じた。

 まだ完全には意識が起きていなので、あれぇ、俺って腰痛持ちだったけかなぁと取り留めもないことを思ったが……、

 

 (はっ? 重み?)


 と、ふと疑問に感じる。

 確かに力の反動で全身がけだるく、動かそうとすると体固まっていて動かせそうもない感じはするのだが、それはやりたくないことをしたりするときに感じる体の重たさではなくて、純粋に体が動かせないという事実と、意識的に感じるだるさだけなのだ。決して今感じたような物理的(・・・)な重みではない。


 そのように疑問に感じながら、やっと覚醒してきた中でゆっくりと目を開くと俺のことをじっと見つめながら、丁度へその部分辺りにまたがるソフィーの姿があった。

ピタッと目が合い、状況が飲み込めず黙って固まってしまう俺に向かって、ソフィーはおもむろに口を開いた。


 「シン……おはよぅ」

 「あぁ……おはよう」


 それだけ言うと再びその小さな口を閉じ、ジッと俺のことを見つめるのだった。


 (それだけっ!?)


 もっと言う事があるでしょ!

 俺の腹の上にまたがっている理由とか俺があのあとどうなったのかとかいい朝だねとか今日の朝ご飯は私よ♡、とか! 

……、一番最後のは自分で言ってて意味わからないが。

 『おはよぅ』って言われたらそりゃ『おはよう』としか返せないじゃんっ!

 

 て、そんな訳ないか。

 俺が聞けばいいんじゃん。

 まだ完全に意識が覚醒しきってなかったから変な思考回路が働いてしまったようだ。寝起きだとたまに色々と破綻した考えが頭に浮かんじゃうことがあるよね。そんな感じである。

 そうして、やっとのことで完全に意識が覚醒した俺は冷静な判断力と思考力を取り戻し、ようやくソフィーに今の状況を問うのだった。


 「今日の朝ご飯はソフィー?」


 (て、うおいッ!!)


 オレナニクチバシッテンダッ?!

 さっき頭の中で考えていたことがポロッと口から出てしまった。

 とんだ大失態である。

 あぁ。俺の人生終わった。

 朝ご飯にソフィーを頂くという噂が世界中に流れて、変質者扱いされるんだろうな。

 【元勇者、朝ご飯に王女を頂く!? ~ここまで成り下がってしまったか祖国の勇者、もちろん王は大激怒~】

 とか、号外で新聞に出ちゃうんだろうな。はぁ……。

 

 そんな下らない事を考えながらソフィーの反応を窺うと、


 ぅん、と小さな口を開き、コクンと頭を小さく縦に振るのだった。


 「 『ぅん』 じゃねえよ! こういう時だけノラなくていいから! 別に今冗談とか言ったわけじゃないから! ……すまん、俺が言い間違えただけだ。別にお前を朝ご飯にいただいたりしないよ。そもそも、朝ご飯でソフィーを頂くって意味が分からん……。それで、聞きたいんだが、なぜ俺の上にまたがっているんだ」


 「こうすると男性は喜ぶって言ってたから」

 「誰が」

 「本が?」

 

 何故に疑問形? とも思わなくはなかったのだが、おそらく何かの本にそのように書いてあったのだろう。何考えているか分からん不思議ちゃんのソフィーのことだから、それに影響されて、試しにやってみたのだろう。

 

 「シン、嬉しい?」


 嬉しくないヨ?

 まあぁ? 俺が一介の男であったならば? 嬉しいとも思っただろうが、別に俺は漢だし? 特に何も感じないヨ。

 だから、別段喜んでいるワケではないから否定すればいいのだが、ソフィーの行動と言動から俺を喜ばしてくれようとしてくれたことを察し、ここで否定すればせっかくのソフィーの好意までを否定することになると思った俺は、ソフィーの言葉に素直に同意の意思を示した。


 「あぁ。もちろんだ、ソフィー」


 喜んでいることに同意するのは、人として間違っているのか間違っていないの分からない気もしたが、んっ、と頷いて、満足したように微笑んだような気がしたソフィーを見ると今の同意は現在の選択肢としては間違っていなかったようだと安心した。


 「ちなみに本の題名は?」


 ふと疑問に思ったことを聞いてみると、


 「【これでどんな男性もイチコロよ!~男性が喜ぶこと10選~】」


 ――なんて題名の本を読んでるんだ。

 ん~、ソフィーが本を読んでいるところをよく見るがいつもこんな本を読んでいるのか?

 まぁ、不思議ちゃんだから追究したところでまた変な本の題名やら答えが返ってきそうで怖いからそれ以上の追究はやめておく。


 「この後マッサージもすれば喜ぶって書いてあった」

 

 題名を口にしたソフィーは追加で俺にそう告げると、今まで俺の胸元辺りに乗せていた小さな手をのそりと持ち上げ、前傾姿勢になって俺の肩付近に手を這わせてもみもみと揉み始めた。

 前と後ろに身体を揺らしながら俺の肩をマッサージし始めたソフィーはもうすでにマッサージのみに集中しているのかその表情は真剣そのものに見える気がする。

 

 と、いうか。

 先ほどから前後に身体を揺らす度に俺の顔にソフィーの小さくはない隠れた脅威が当たっており、

 

 (ちょっ。当たってる当たってる。ハワァ~)


 と心の中で思うのだがあえて口には出さない。

 それを口に出してしまったら、ソフィーの好意を否定することになるし、意外と効いているマッサージが終わってしまうためである。

 別に『ハワァ~』まで終わらせてしまうことにマッサージを止めない要因があるわけでないことは、俺の名誉のために断言しておこウ。


 (あれ、まずい)


 トイレに行きたくなってきた……。

 ソフィーが腹部の上で自分の身体を前後に揺するごとに俺のある部分が刺激されて、もよおしてきてしまったわけだ。

 このままじゃ、非常にまずいことになる。

 そう思った俺は、ソフィーに一旦マッサージを中止するように言うことにした。 

 中止したところで、今のところは身体が動かないのでトイレに行くことはできないのだが、今、継続的にトイレに行きたくなるところが刺激されている状況よりはマシになるだろうし、またそのうち身体が動くようになると思うし、それまで我慢すればいいことだ、と思ったのでソフィーに制止の言葉をかけたのだが、


 「まだ始めたばかり」


 まだ始めたばかりでマッサージは終わっていないとばかりに言い、俺の制止の言葉は却下される。

 しかし、実は危険な状況になりつつある俺は、


 「もう十分満足したからさっ。ソフィーの気遣いは嬉しかったし、マッサージも大分効いたからさっ、とりあえず終わりにして俺の上からおりてくれないかっ?」


 この状況でトイレに行きたいというのは少しばかり恥ずかしいし、元勇者としての尊厳に関わるので、ソフィーに焦りながらもその部分は伏せながらもうマッサージを終えてもいいぞと提言する。

 しかし、さっきの言葉を最後に再びマッサージをすることに集中してしまったソフィーは俺の割と必死な制止の言葉が聞こえておらず、うんしょ、うんしょ、といった感じで俺の身体のマッサージを継続する。

 

 (ちょっ!? マジでっ! マジでヤバイッ!?!?)


 そう思いながらソフィーに制止の言葉を何度も投げかけるがそれも虚しく聞こえておらず、

 

 (モレルッ! モレルゥッ!! ラメエエエエエエエエェェェェッッ――)


 声なき絶叫だけを残して、プツッ、と意識が途切れた。




 (ハッ?!)


 目を覚ました俺は今の状況をすぐに確認する。

 うん、特にアソコが湿っている感じはしないな。

 手足も少しだが動くし、これならトイレに行くぐらいならなんとかできそうだ。

 

 (……夢か)


 さっきの出来事? いや、悪夢をそう結論づけるとふぅと息を漏らし、安堵した。

 そして、よく周りを観察してみるとベッドの傍らで静かに本を読んでいるソフィーがいた。


 「おはよう、ソフィー。何の本を読んでいるんだ?」


 寝覚めの挨拶をし、そう問いかけると、本の題名が見えるように俺の前に差し出し――


 「【これでどんな男性もイチコロよ!~男性が喜ぶこと10選~】」


 と、本の題名を告げるのだった。


はて、夢だったのか否か……。


お読み下さりありがとうございます。

ブックマーク登録もありがとうございます。


さて、最近自分の執筆限界に気が付きました。

『3000文字』これを超えたあたりから脳が働かなくなってきます。

なんとかしてこれ以上書きたいものですが、ん~、何かいい方法はないものでしょうか。

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