あの頃の思い出
僕は今、地元に帰ってきている。
仕事が一段落して少し余裕が出来たことで何をしようか悩んだ結果、地元の景色を見たいと思ったのだ。
帰ってくるのは5年ぶり程で就職してから今まで1度も帰ってきていなかった。
帰らない理由はなかったが、帰ってくる理由もなかったのだ。
地元で就職した友達は何人かいる。
その中でもできるなら彼女に会いたかったし、会いたくなかった。
地元を離れることで彼女と喧嘩別れのような感じでそのまま話すことなく今まで過ごしてきた。
きっと彼氏でもできているだろう、彼女は美人で人気者だったから。
彼女と一緒に歩いた思い出の道を通りながらあの頃のことを思い出していた。
「この道でよく、『歩くの早いんだから少しは待ってよ』、なんて言われてたな」
彼女との幸せな日々を思い出していると、後ろから声が聞こえたような気がした。
「いつも歩くの早いんだから、少しは私のことを待ってよ。」
振り向いた僕に笑顔を向けながらいつもの台詞を言う彼女がいた。
「5年間ずっと待ってたんだから、今度は私をちゃんと待ってね。」
僕の幸せな思い出にまた新しい1ページが刻まれた。