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出会い

勘次郎(かんじろう)は聞いたことあるか?大学内の図書館に出没する美人な先輩のこと?」            

勘次郎は昨日の佐藤の質問が、突然頭をよぎった。


得に意味はなかったが、気になっている自分がいることは確かだった。


俺の通っている大学は、この地域では唯一の文系の大学である。


多くの人は教員になるか、国指定の作家を目指す人もいる。


国指定の作家については、後々に説明をしよう。


俺はいつも、佐藤・小林・田中の3人で活動している。


これから、俺たちは近世の歴史の授業である。



「かつて、科学者たちは核兵器を自分たちの手でコントロールしようとしたが、失敗に終わった。だが、20××年に科学者たちは無能な政府に対してクーデターを成功させた。この事件は科学が絶対であると、世間に印象づけることができた。そこから急激に私達が理想とする社会に変わっていった。」


この内容は小学生の頃からずっと、先生たちから聞かされてきた。


ちょうど10年ほど前に、科学者たちが目指す社会システムへと姿を変えた。


政治家のようにうわべだけの公約ではなく、計画的に実行するその姿勢は国民からも指示されている。

  

そして、もう一つ大きな出来事があった。


それは、他国からの侵略だ。


15年ほど前、戦後初めて本格的な戦争に巻き込まれた。


長年平和ぼけな国だと思われていたが、実は科学者たちは様々な準備をしていた。


それにより、敵を殲滅(せんめつ)することができた。


この功績により、日本は世界有数の軍事国家となった。


国外からの恐怖は少なくなったが、国内からの批判は多かった。


その多くは、知識のある文化人たちだった。


対策のため、科学者たちは知識を規制することを始めていた。


それが“文学的知識”である。


ここから文学的知識と科学的知識が分けられ、科学的知識だけが認められた。


そしていつしか、文化人たちは“アナーキスト”として排除されるのである。


そんなことを考えていると、授業は終わっていた。




俺らは学食へと向かい、これからどうするのかを話し合った。


「勘次郎はこれからどうするの?」


「俺は図書館に行こうと思う。佐藤が昨日言ってた美女に会って見たいしね。」


「そうか、じゃあ田中と一緒に行ったら?田中、その美人と知り合い何だろ!」


「まあね、ちょっと話す程度だよ。多分、勘次郎くんなら彼女と対等に話することができると思うよ。」

田中があまりにも自信満々に言うので、


「何で、そう思うの?」

俺は思わず聞き返してしまった。


「だって、勘次郎くん博学じゃん。」

田中がそう言うと、佐藤が話に乗っかってきて、


「勘次郎お前、禁書読んでるもんね。」


「その話題はするなって言ったじゃん。いつどこで誰が盗み聞きしているか分からないし。」


「そんな訳あるかよ。誰もそんなことに興味ねーよ。ネットに書いてあったんだけど、禁書を読ませて犯罪を犯させようとしたけど、普通のままだったらしいよ。」


「俺もそれ読んだことあるよ。」


小林も話しに入り、持論を展開している。


確かに小林は基礎学力がしっかりしており、論理的に述べることができる。


しかし、根本的に間違っている。


知識がないから禁書を読んでも影響がないのである。


なぜなら彼らは気づいていないのだ。自分たちが知らない間に文学的思考の幅を縮められていることに。


そんなことを考えているうちに、進路についての講義となり


皆それぞれ進路が違うため、教室もバラバラだった。


それが終わり、いつもの場所に合流すると田中だけいないことに気づいた。


「あいつ、何処行ったんだ?」

俺がそう投げかけると、


「先に図書館に行ったらしいよ。なんだか急いでいたらしい。」

そう、小林は友達からの目撃情報を教えてくれた。


「一緒に行くって、言ってたっじゃん。まぁ、仕方がねえ。追いかけるか。」

そして、俺は二人に別れを告げ急いで図書館へと急いだ。


図書館は校舎から少し離れたところにある。


俺は息を切らせながら、入り口に着くとちょうど田中とすれ違った。


俺は声をかけたが、「悪い。時間がない。」と一言残してその場を去った。


俺はこの時、嫌な予感がした。


それは、不吉なことに現実となる。



俺は中へと入り、本を探していると美しい女性がいた。


それは、例の図書館に出没する美人な先輩だった。


俺はその姿に言葉を失った。


大きな目に澄んだ瞳に長くてストレートの黒髪、そして艶のある唇と白い肌。


それはまるで天使のようであった。


そして、シェイクスピアの一説が頭に浮かんだ。


『まことの恋をするものはみな一目で恋をする』


俺の目線に気づいた彼女はこう言った。


「はじめまして、若きアナーキストよ。」

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