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83 ゴブリン

 ゾルグへと入る手続きをしていたキューラ一行。

 彼らの元へ領主の使いを名乗る者が現れ、領主の元へと来るように告げる。

 キューラ達はその指示に従い領主と顔を合わせるのだが、どうやらゴブリンの話であり、一行はその依頼を受けるのだった。

 領主との話が終わり俺達は宿を探し借りるとその部屋で休息を得ていた。

 実は領主から部屋を貸してもらえそうだったのだが、断っておいた……理由は彼がどっちであるか分からないからだ。

 受け答えは普通だが、あそこまで人が良いと逆に不気味でもある。


「で、ゴブリンはどうするんだい?」


 俺が考えている中、トゥスさんは話を切り出した。


「どうするって言っても」


 原因を探ると言った以上、動かなくてはならないだろう。

 しかし、ゴブリンの生態から考えると理由がない限り人里近くに来ることはない。


「住処が魔物に荒されたか?」

「それは無いと思います……」


 俺の発した言葉にそう答えたのはクリエだ。


「無いって……なんでだ?」

「ゴブリンは賢いだろ? だから罠を張るのさ……魔物は勿論、人間相手でも罠に精通している奴じゃないと見つけられない可能性もある」

「そ、そうだったのか……」


 つまり知能などが人並みで手先も器用な魔物じゃないと住処に辿り着く前に罠にはまってしまうと……。

 恐らく一つだけという事はないだろうし、そもそも危険だと判断してゴブリンの近くに行かない可能性もあるな。

 ん? 待てよ……? つまり、罠に精通した……シーフなんかが居れば人間はその罠を突破できる? いや、そう上手くはいかないか? そもそもそこまでして住処を荒らす理由が……。


「なぁ……」

「何でしょうか? 何か分かったんですか?」


 いや、まだ何も分からないけど、一応聞いて見る価値はあるよな?


「ゴブリンはどんな所を住処にするんだ?」

「えっと……色々な場所がありますが」

「人の寄らない場所、もうすでに捨てられてから時間が経った廃村や廃坑、自分達で横穴を掘って住処にすることもあるね」


 なるほど……なんか、一部の人間も好きそうな場所だな。

 一方は普通に暮らす為だろうから迷惑極まり無いと思うが……。


「なぁ、この街の警備だけど、あれってゴブリン相手だとどうなんだ?」


 俺は改めて別の問いを投げてみる。

 すると首を傾げたクリエは――。


「少し多いでしょうか? ですが、知能を持つゴブリン相手では別に変と言う訳でもありませんし、当然別の魔物だっていますから……」

「下手したら別の魔物と同時になんて事もあるし、備えて置いて損はないからね」


 多すぎるという事はないか……二人の様子から見ても適切な対応といえるのか? じゃぁ……。


「なら、この近辺に街や村ってあるか?」

「それはありますよ? 確か――」


 クリエはそう言うと地図を取り出し、街へと白く綺麗な指を置く。

 ゾルグと書かれているという事は此処の事だろう……そこからつぅーっとなぞって行くとそう遠くない場所に文字を丸で囲った所で止めた。

 文字はソナ村と書かれている。

 俺はその近辺を見てみるとどうやらソナという村の近くには山があるらしい。


「この山ってゴブリンは住めそうか?」

「どうでしょうか? ただ上るにしてもこちら側は崖になっていて無理なんですよ」

「いや、確かソナ山は鉱山だったはずだよ、確か数年前に崩落事故が起きてから手は付けられていない。せっかく何もない村が栄えることができるって言ってたのにがっくり来てた若い奴が居たね」


 その崩落事故の規模によっては村から鉱山に入るのも簡単ではないしゴブリンの巣になりかねないという訳か……更に村であれば守る為の壁も大したことが無い。


「ここにゴブリンが住んでたとして追い出された可能性があるんじゃないか?」

「どういうことだい?」


 俺は二人に考えを告げる。


「例えば盗賊がクリードやここゾルグを狙う以上に簡単なのは村だ。理由は壁が簡素で壊す事も登る事も簡単にできる」

「盗賊ってど、どういうことですか?」

「それでいて村には対抗できる人も数えるぐらいだろう、下調べはするだろうけどな……。もし、自分達の力量で襲えるのなら……? その近くに住んだ方がいいんじゃないか?」

「なるほどね……でも、あくまで可能性だろ?」


 俺は頷きつつ言葉を続けた。


 そう、あの領主は言っていた。

 街から冒険者が出かけてしまっていると……冒険者が遠出、遠征と言うのはあまり聞かない。

 そもそも冒険者は街を転々とするものだ。

 だが、もしゾルグに滞在していた人がいるならば、その人達の事を言っている可能性がある。

 だとしたらソナと言う村は適度に遠くゾルグに滞在していた冒険者を頼るという事も合点が行く。

 それが盗賊だとしたら、奴らにはねぐら、つまりアジトが必要だ。

 だがそのアジトを村の中に置くことはないだろう……ならどこに置く? 取れるだけ搾り取ったら移動をしたいだろう。

 ならどうする? ゴブリンが居ればその住処を奪ってしまえば事足りる。

 何故なら彼らは人間並みの知能を持っている……つまり、必要な物が揃っている可能性が高い。


 そう伝えると二人は考え込み――。


「盗賊がゴブリンの住処をですか……考えられなくはないですね」

「だけど、それならなんでゴブリンがこっちに来るんだい?」

「それは多分だけど、住処を奪った連中が村に行っているからじゃないか? 追いだしたとすれば恐れてもおかしくはない」


 問題はソナって村まで俺達が行くかどうかだ。

 遠くではない、だが一日で付けるという訳でもない。

 つまり、それなりの準備をしていかなければならないし、その間ゴブリンはゾルグを襲撃する可能性だってある。


「領主に言ってみて、もしソナに人がいるのなら鳥を飛ばしてもらうってのはどうだろう?」

「そうですね、早速頼んでみましょう」


 俺の意見に賛成してくれたクリエは立ち上がり、微笑んだ。

 しかし、トゥスさんは首を傾げたままだ。

 やはりゴブリンがゾルグ近辺に居ることが気になっているんだろう。


「まぁ、絶対に無いとは言い切れないし、頼むだけ頼んでおいた方が賢明、だろうね」


 彼女はそう呟いた後、此方へと目を向ける。

 その目は何かを訴えているかのようにも見え、俺は――。


「勿論、原因はまだ探るさ……」


 俺自身あくまで予想したというだけだ。

 実際は違ったなんて事はあるだろうし、ゴブリンがここを去るまでが依頼だ。

 いくら領主の依頼とはいえ途中で投げたりはしないさ……。

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