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7 面接

 両親に服を着替えるように言われたキューラは女性の服を身に着け、勇者の面接を受ける事になった。

 キューラが男性だと伝えられていた勇者に驚かれるものの、それまでの生徒たちの様に一瞬で面接が終わる事無く、女性である事を示せと言われたのだが……?

「で、何で君は候補に立候補したのですか?」


 勇者は満面の笑み……それも何故かつやつやとした顔で俺にそう質問をしてくる。

 俺はと言えば自身の身体を抱き勇者を警戒している所だ。

 まさか全裸になるまで剥かれるとは思わなかった。

 というか少し触れば分かるだろうに……。

 いや、触られても嫌だが……この勇者様は万が一俺が男のままだったらどうするつもりだったのか……。

 とにかく事が終わった後急いで脱がされた服を着た訳だが……そこでもダメージを受けた。

 その原因は勇者の「着慣れてるんですね?」という一言だ……。

 そりゃ着慣れもする……両親に何回着せられたと思うんだ。

 いや、考えてて悲しくなってきた。


「何でって言われても……さっき言った通り、魔王の呪いを解く為に……」

「――――っ」


 ん? なんだ? 今一瞬勇者の表情が変わった?

 それも、どこか怯えた様な表情だった……気がしたが……いや、気のせい……か?


「…………でも、それなら私が魔王を倒せば済む事ですよね? 何も君が危険な目に遭う必要はないのではないですか?」


 そう言われるとそうなんだよな……。

 でも、俺が候補に入った理由としてはこの学校の女の子の為というのもある。

 しかし、勇者が女性である以上、それは必要はないんじゃないか?

 そう思いながら勇者の方へと顔を向けると彼女は何故かその表情を崩し……。


「と、所でキューラちゃんはいくつなのですか?」


 なんか妖しい目つきだな?


「…………と、歳? 15です……けど?」


 そう答えると勇者は何故か顔を赤らめ始め……。


「元は男だけど、今は美少女……うへへ……」


 こいつまさか……いや、そんなはずはない……。

 だって勇者だぞ? 神の使いがまさかそんな……。


「ああ、でも候補には後3人女の子が居るんですよね? ぅぅ‥‥‥でも、私好み……ああ、でもこの子は魔王を倒してしまえば……」


 何を葛藤してるんだこの勇者……。


「…………その呪いってどんな呪いなのですか?」

「え、ああ……それはですね……」


 彼女の様子に呆れていたところ、急に真面目な話を振られ俺は思わず慌ててこれまでの経緯を話す。

 すると勇者は片手で胸を支えるような姿勢を取り……。


「魔族の血を引く者が消えてしまう呪い……ですか」

「ええ、それで俺が何故かその呪いが効かない身体なんです。でも呪いを防いだ時により魔力を使うにふさわしい姿に女性になってしまったようで……」


 確か先生達は魔力の質が魔王より良いとか言う話だけど……俺はまだ卒業見込みではないからな。

 連れて行ってもらえる可能性は低い、とは言っても魔王の呪いに対抗出来る魔族はそう多くないだろう……しかし最悪古代魔法使いに拘らなければ勇者の旅に支障はないはずだ。

 だが……彼女はそうではなかったようで……。


「……それは穏やかではないですね、古代魔法使いは一人、旅に連れて行きたかったのですが……仕方ないですね」


 うーん、そうなるよな……。

 でもな……当然、俺は連れてってもらえないだろうな……。


「呪いを解いたら、男に戻るのは非常に残念です。ですが……他の女の子を連れて行って消えられるのは残念所ではないです……ここは魔王の呪いを防げるというのは強みですし貴女を連れていく事にします」

「へ? 今なんて?」

「ですから、貴女で決めました……一度魔王の呪いを防いだのです。それも存在を消すという強力な呪いを……です、他の呪いも効かない可能性もありますから、貴女はそれでも良いですか?」


 俺はそれでも良いかって……でもこの人は――。


「勇者……様は女性の方が良いんですよね?」

「はい、その通りです。事実今回も女性である事を前提に古代魔法科唯一の卒業見込みであるミアラという生徒に目をつけていました」


 せ、先輩か……確かに先輩は優秀だ。

 魔法は上手いし、料理も出来る……旅に連れて行くなら居てくれるだけで非常に助かる。


「可愛いって噂でしたし……うへへ」


 おい、この美人勇者……今一瞬凄い顔をしてたぞ? やっぱり女好きなのか?


「で、ででですが、その様な事情がある以上……死の危険性が高い人を連れて行くことは出来ませんっ! かといって古代魔法は私が使う神聖魔法とは違い、手段として確保はしておきたいですから……あくまで仕方なくですよ」

「……そう言う事でしたら、俺からもお願いします」


 これ以上犠牲者を出す訳には行かない。

 俺が対抗出来るってんならこの力せいぜい利用をさせてもらおう……。


「それで出来れば……女性化を定着させる手段を……」

「ん? 何か言いました?」

「い、いえ!? なんでもないですか?」


 いや、俺が質問したはずなんだけど……。


「ぅぅ……勿体無いでも、魔王は最後の最後にすればずっと……うへへ」


 おい、今のは聞こえてたぞ? こいつ絶対に百合だ。

 百合属性だ……。


「こ、こほん……それでは一緒に旅をするのですから、名乗らないといけませんね」

「あ、ああ……そう、ですね」


 そして急に真面目になるな……会話しづらいぞ?


「私はクリエ・セントア……これからよろしくお願いしますね、キューラ・クーアちゃん」

「ああ、よろしくクリエさん……所でちゃん付けは止めてくれないか?」


 女にはなったが、心は男のままだ「ちゃん」は抵抗ある。

 というか思わずいつも通り話しちまったけど……大丈夫かな?


「そうですか、私の方もさん付けはいらないですよ?」


 どうやら大丈夫そうだな……これから一緒に旅をするんだし、変に堅苦しいのも辞めた方が良いかもしれない。


「分かったよ……クリエ」

「はい、以降そのままでお願いしますね」


 美人ににっこりと微笑まれ俺は思わず頷くと彼女はくすりと笑う。

 この人は女性が好きという条件が無ければ普通にモテそうだな……いや、そうでなくても人気者に違いない。


「良かった! これからよろしくお願いしますね! キューラちゃん」

「あのだからちゃん付けは……」


 止めてくれと言ったはずなんだが? 呆れつつもそう言うと彼女は頷き――。


「はい、でも私は止めるとは言ってません」

「た、確かに……じゃぁどうしたら止めてくれるんだ?」


 俺が問うと彼女は目を輝かせて口を動かす。


「では、女性の間はクリエお姉ちゃんって可愛らしく呼んでくれたら考えます」

「絶対言わないぞ!? というか考えるって変える気ないだろう!?」


 俺がそう叫びつつ伝えると彼女は何の事ですか? とでも言いたげに首を傾げる。

 ちくしょう……美人にそれをされると何も言えないじゃないか!?


「よろしくお願いいたしますね”キューラちゃん”」


 こ、この勇者……わざと俺の名前を強調して言いやがった……。

 とは言えその笑顔……クッ……ここで折れる訳には行かない、俺は男だ。

 ちゃんは何としてでも回避せねば!


「ね? キューラちゃん?」

「……はい、よろしく……クリエ」


 いや、無理だろ……相手は美人も美人……流石神の恩恵なんたらを受けた勇者様だ。

 こんな美人に小首傾げられたり、笑顔で名前呼ばれて首を縦に振れないのは男ではない……多分絶対に……。

 だから俺が負けた訳ではない、だというのに何だこの敗北感は……。

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