74 奇妙な一行?
焼き鳥屋の店主と別れを済ませたキューラ達。
いずれまた店によると告げた彼らはいよいよクリードを経つために門へと向かう。
次の目的地は……酒が有名とも言われており?
街の外に出るのにもやはり検査は必要らしい。
人攫いや違法な物が取引されていないか調べるためだとの事だ。
とは言っても、俺達はそんなものを持っていないし……人と違うと言えば勇者であるクリエが居てスライムであるライムが俺の頭の上に乗っているぐらいだ。
その所為か注目の的になっているが……。
因みにライムだが焼き鳥を与えて見たら喜んで食べている。
どうやら雑食らしい……まぁ、人を溶かして食べる事もあるんだから雑食なのは分かっていたが……。
やっぱり、自分があげた物を嬉しそうに食べるのは可愛いよな。
ただ、頭の上だから俺も溶かされないか心配になってくる、そんな事をしないってのは分かってるんだけどな。
そんな事を考えている内に俺達は王様の話が通っていたのか僅かな時間で門の外へと出してもらえた。
「さてと、じゃぁ酒を求めてゾルグに行くかね」
「いや、旅を進めるのと仲間を探しにだからな?」
俺は慌ててそう告げたけど、トゥスさんは何を言っているんだ。
「それは当然のことだろ? アタシにはもう一つ目的があるってだけさ」
「そ、そうなんですね」
クリエも苦笑いを浮かべているし……このエルフは本当に大丈夫だろうか?
その内賭け事に手を出して街に足止めされるって事はないだろうな……? 賭けも好きだって言ってたし、少しならともかくのめり込みそうだったら止めないとな。
「言っとくが、アタシは止めろと言われても止めないよ」
「なんで今言った?」
俺は顔を引きつらせながら質問をすると彼女は煙草を咥え、悪人じみた笑みを浮かべる。
「今、のめり込むようだったら止めようと考えたろ? そんな顔をしてた。前に言ったけど酒、賭け、煙草……これがこの世の娯楽だ」
いや、俺が考えていた事を当てたのは凄い。
凄いんだが……なんだろうか、素直に凄いとは言いたくない。
「この世の娯楽?」
クリエは彼女の言葉が気になったのだろう首を傾げながら訪ねる。
するとトゥスさんは煙草に火をつけろと目で俺に訴えてきつつ、頷いた。
「フレイム……」
仕方が無いので火をつけてやると満足そうに紫煙を吐き出し、クリエの方へと向き直り……。
「クリエお嬢ちゃんも大人になれば、分か――」
「この世の娯楽って可愛い女の子に可愛い服を着せたり愛でたりするものじゃないんですか?」
真面目な顔をしてそう口にしたのはうちの勇者様だ。
因みにここは門を抜けてすぐの場所、勇者と煙草を吸うエルフ、ついでにスライムを連れた俺と注目の的になっていた所でそれを口にした訳で……。
俺は恐る恐ると辺りを見回してみると人々は目を丸くしていた。
「ク、クリエ? ここはまだ人の目があるからそう言った発言は――」
「だって、キューラちゃん! キューラちゃんにふりふりの服とか、布が少ないのとか着せて楽しみたくはないんですか!?」
いや、待て……。
「何で俺に聞いて俺がその対象になってるんだよ!? 俺は男だぞ!?」
「いや、クリエお嬢ちゃんが言ってることは理解が追い付かないが、お嬢ちゃんは男じゃないだろ?」
「ぁ……」
思わず突っ込みを入れてしまってから気が付いたが、再び俺は様子を疑ってみると今度は目を逸らされた。
「俺とか言ってるから、男に生まれたかったんだろうけど……性別を変える手段はない。だが、どう生きるかは自由だ……」
そしてトゥスさんに何故か慰められている。
「でも、キューラちゃんは可愛いので……出来れば俺より私とかせめて僕とか言って欲しいですよ? それで色んな服を着せて一緒にお出かけとかを……うへへへへへへ」
「出掛けるのはともかく、私とかは絶対に言わないからな? 俺は……」
僕はまぁ……良いとして私と言ったら負けな気がする。
誰にと言われたら分からないが、敬語以外では私とは絶対に使わない、そう心に今俺は決めた。
それにしても……何かこの旅がすごく不安になって来たぞ?
だって、このパーティーって百合勇者にエルフとは思えないエルフ、そして元男の俺……まともなのがライムぐらいだ。
傍から見れば実力がある二人が一緒で更にスライムが居る。
俺もそこそこ魔法が使えるし、足手まといではない……だが、周りから見れば変な娘に見えるか?
外では男だって言わない方が良いかもしれないな……そう考えつつ俺はがっくりとうなだれる。
「ど、どうしたんですか!? お腹痛いんですか!? さ、触りましょうか!?」
「心配してくれて嬉しいが、そこは擦りましょうかじゃないのか!?」
「そ、そうでした!!」
素で間違えたのだろう、赤い顔をしながらクリエが慌て始めるとトゥスさんは煙草を咥えたまま笑い始めたのだった。
それを見て俺は仲が悪いよりはこの方が良いかなんて思えた。




