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5 男に戻るには……。

 魔王の呪いは確かにキューラには効果が無かった……。

 しかし、彼は何故か女性になってしまっていた。

 どうにかして男に戻る為、そしてこれからの生活の為にキューラ達はターグ、古代魔法科の教師の下へと向かうのだった……。

 その後、シス先生とミアラ先輩に連れられた俺はターグと古代魔法科の担任であるシェート先生の二人と合流。

 生徒の少なくなってしまった古代魔法科の教室へと集まっていた。

 ここに集まった理由は勿論、俺の事だ。

 俺が女になった以上、これからの生活にも関わる。

 何よりどうやって戻るかが問題だ。

 そもそも、このまま以前通りに生活をして何かあったら困る。

 そう言う事になり、ターグにも説明をする事になったのだが……。


「つまり、キューラが女になった?」


 当然、何言ってんだコイツみたいな顔になっている二人。

 まぁ、そうだよな……。


「ちょっと待って良く分からない、取りあえず証拠として胸を揉ませろ」

「なんでそうなるんだお前は!?」


 というか真顔で言うな真顔で!? そして手をワキワキさせるな気色悪い……俺は男だぞ……。


「うわぁ……」


 そしてミアラ先輩は完全に引いてる。

 まぁ、当然だよな……。

 あれだけ欲望に忠実に言われては誰だって引く。


「ってそうじゃない! と、とにかく戻れるのか?」


 ターグの奴はそれに気が付いたのか慌てて手を背中に隠すと露骨に話を変えてきた。


「分からない……シェート先生なにか方法はありませんか?」


 俺がそう聞くと先生は口を閉じ、腕を組む……。


「話の通りだとすると……難しいな。可能性があるとすれば、やはり呪いの根源たる魔王を倒すしかない」


 やっぱりそうなるよな……。

 でも何処に居るのか分からないのが相手だ。

 いや、魔大陸に居る事は分かっている、それだけでもマシと思った方が良いかもしれないな。


「とは思うんだが……」


 ん?


「なにか問題でも?」

「いや、他の者は消えてしまったのにキューラ君だけ性別が変わっただけというのが気になってね」


 そうか、もし俺が元通りに……男に戻るのなら……他の皆も助かるって事だよな?


「キューラがたまたまだったのか……それとも魔王さえ倒せば消えた人間が元通りになるのか……でも、そんな事、可能なのか?」

「良く分からないけど、そうなってほしいよ……」


 ミアラ先輩の言う通りだ。

 そうなってもらわないと他の奴らは新魔王の八つ当たりにあった様な物なんだからな。

 なんとしても助けたい……でも、先生の言う通り俺の事は気になるな。


「方法はそれしかない、でも別の何かが気になるのね?」

「……キューラ君が助かった事だ。考えられることは一つしかない」


 ん? 一つしかないなら何で気になるんだ?


「キューラ君の魔力が現魔王を凌いでいる事だ。それにより呪いをかき消すために自身の身体をより強い魔力を操る形になったのかもしれない……ただしこれだと何故混血であるキューラ君が純血であるだろう魔王の魔力を上回ったのかが疑問なんだ」

「ちょっと待ってくれ先生……」


 魔力の質云々はさっき言われたが……。

 変化したってなんだ!? っていうか女に変わったというだけで驚きだが、より強い形が女性って……まぁ、女性は強い。

 前世でもソレは何度も思う場面があった。


「魔力というのは女性の方が操るのに優れている……現に魔王も女性が多いんだ。勇者が倒した魔王がたまたま男性だった為、男性であると思われがちだけどね」

「へ? そうだったのか……」


 それは知らなかった……。


「でも、そんなに差が出るものなのか?」


 要は使い方次第じゃないのか……俺は魔法を使うのは以前から得意だった。

 それは先生達だって知っているはずなんだが、シェート先生は俺の疑問に答えてくれるようで真剣な顔で口を開く――。


「分かりやすい例だとキューラ君は短縮魔法という才能をもってしても、ミアラ君に簡単に勝つと言う事は容易ではなかったろ?」


 確かに、ミアラ先輩に勝つのは容易ではなかった。

 いや、正確に言えばまぐれで勝ったのが一回、たったそれだけだ……し、しかし、だからと言って……俺が女の子にか……。


「どうしたら良いんだこれ……」

「さっき言ったように可能性があるのは現魔王を倒す事だ……とはいえそれには」


 旅立つ事が必要になってくるな。

 だと言っても……俺は一般学生だしなぁ……というか、いくらなんでも魔王相手に戦うなんて……。

 俺は折角転生したから冒険で一山当てて後はニート生活を楽しむ予定だったんだけどな。

 どうもそうはいかない様だな……。


「魔王を倒す手段何て俺にはないって……」

「そうね、一人では無理よ? でもそう言えば、確か来るのよね?」

「来る? ああ、そうだった。しかし……あれは卒業見込みの生徒だけだ」


 ん? 先生たちは何を話してるんだ?


「それに頼むだけならキューラ君を選ばせなくてもいいだろう」

「も、もしかして、あの件ですか……?」


 ミアラ先輩は何か知ってるのか……。

 何故か露骨に嫌な顔をしている。


「先生も先輩も……キューラに関する事なんだろ? 俺だって気になる。何が来るって言うんだよ」


 ターグの言葉に続き俺は頷く。

 話の流れからして誰かが来て、その人に連れて行かれるような事だけど……。

 卒業見込みとか言ってたし、もしかして仕事の斡旋かなにかかな?

 どっちにしろ俺には関係がなさそうだ、とは言っても話が出た以上は気になる。


「一体誰が来るって言うんだ?」


 俺がそう聞くとシス先生は微笑み――答えた。


「勇者よ」

「へぇ……って勇者ぁ!?」


 お、おいおい、魔王に勇者とはやっぱりいきなり話が大きくなってきたな。

 いや……勇者は決して途切れることなく生まれ続けるなんて聞いたけど、まさか本当なのか?

 しかもこの平和……ではなくなったものの平和だった世界を旅するなんて難儀な職業だなぁ……。


「驚くのも無理はない、勇者というのは子宝に恵まれない家庭に不意に訪れる奇跡でもある……この近くの村に授かったらしくてね、つい先日に旅立ちをしたらしくてな、此処の生徒を一人旅に連れてってもらう事になっている」


 なるほど……それでついでに俺の事を頼もうとしてた訳か……。

 俺が勇者に生まれなくて良かったと思っていたのにまさか関わる羽目になるとは思わなかった。


「でも、その勇者様がおかしな人でね?」


 今シス先生が明らかに様の部分で笑ったぞ……。

 そこは笑ったら駄目だろうに……。


「可愛い女の子以外はついてくるのを認めないって言ってるの」

「それを聞いてね、うちの科からはミアラ君をと思っていたんだが……」


 先生たちの視線はミアラ先輩へと集まり――。


「絶対に嫌ですよ!? だってそんな事言う人なんて絶対に変なことするに決まっています!」


 さっきの嫌そうな表情はこれが原因か……。

 まぁ、そうだよな、誰だってそんな条件だされたら嫌に決まってる。


「それに他の科の子もミアラちゃんと一緒でね? 男の子は集まっては居るんだけど……女の子はその……数人だけでね?」


 つまり、勇者は女の子だから女が良いと言っている訳ではなく、男だから可愛い女の子と旅をしたいと……。

 分からくも無い、分からなくもないが……。


「なぁ、キューラ……勇者様って意外にわがままなんだな……」

「そうだな、ターグ……俺も今びっくりしてるよ」


 なんて自分勝手な勇者なんだ……。

 まさか本当に家に上がり込んでツボやタンスの中身を持って行ったり、ツボを割ったりするのだろうか? なんか勇者の株が下がって盗人と言っても良いんじゃないだろうか……。


「それで、そのキューラ君? もし良かったらだけど候補に入ってみない?」

「おい、シス……先ほども言ったが卒業見込みだけだ……」

「とは言っても相手は勇者、神の使い……要求通りの人を集められなければこの神大陸は勿論世界の命運に関わってしまうかもしれないのよ?」


 うわぁ……心底メンドクセェ……寧ろ勇者が居るからいざこざが起きるんじゃないだろうな?

 だとしたら、いらないんじゃないか? 勇者なんて……。

 まぁ、この学校では勇者は助けるものとは教わっているが……複雑な気分だ。


「そ、それはそうだが……しかし、いくら勇者と言っても今回の要求はどうなんだ?」


 そしてシェート先生は困ってる。


「だからキューラ君なの、キューラ君なら実力はまだまだだけど身を守る術はある。それに見た目は美少女、というか今は美少女、魔王さえ倒せば元に戻れるかもしれないのだし問題は無いはずよ?」

「…………」


 確かに、ミアラ先輩や他の先輩が行くよりは安全か……。

 いくら今が少女と言っても元は男、俺もこの言葉使いや性格を変えるつもりはない。

 それならいくら美少女と言っても相手は萎えるだろう……それに自分の事を他人に任せるってのも何かあれだ……それで良いのかと言われると自分でも出来る事があるならやった方が良い。


「わかりました、俺を候補に入れてください」


 それに、もし本当に神様が居るのならご機嫌を損なわれるのは良くない。

 神は寛大だが、同時に悪魔より恐ろしい……俺はそう思うからな……。

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