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51 二人は何処に?

 キューラ達は城を出ると話をするために旅館へと向かう。

 勿論、カインとチェルに関する事だ……

 彼らは今どこに捕まっており、そしてどんな状況でそうなったのか……それを知るのは新たな仲間トゥスだった。

 部屋に着いた俺達はベッドや椅子へと座る。


「それで、チェル達は何処に居るんだ?」


 俺がそう切り出すとトゥスさんは木のコップを取り出し液体を注いでいく……

 どこか特徴的なその匂いは以前、嗅いだ覚えがある。


「何で酒を出す?」

「エ、エルフの人が好むお酒ではないですよね、それ」


 コップに注がれていく液体は透明感のある茶色っぽい物。

 俺が知っている物では一番近い物はウィスキーだろう……

 そして、クリエが言っている通り、それはエルフの好む酒ではない。

 俺は本の知識でしかないが、エルフが好む酒は果実酒や蜂蜜酒だ。


「いや、アタシはこれが好きだ。それに喉が渇いたからな」


 酒は更に喉が渇くんじゃないか?

 ま、まぁ良いか……って――!!


「今から大事な話するのに酒を飲むな! 酒を!!」

「お嬢ちゃん堅いね……まぁ、注いだ分は飲ませてくれたって良いじゃないか、どうせこれっぽっちじゃ酔いはしない」


 いや、飲んだら変わりはないだろうに……というかこれっぽっちと言う量には見えないぞ……

 仕方ない。


「とにかく話してくれ!」

「そ、そうです酔っぱらう前に!」


 クリエもその事が気になったのだろう、急かすように身を乗り出す。

 しかし、トゥスさんは気にするそぶりも無く、注いだウィスキーのような物を飲む。


「王から聞いた話では貴族の名は……ラザド・ネーガ、勿論この街に住んでいる」

「で、何でそいつの屋敷に?」


 チェルとカインはこの街に来たばっかりだ。

 そいつと関わる事なんてないだろう……だと言うのに彼女達は捕まった。

 そして王様がその理由を話さなかったのはトゥスさんが知っているからだろう……

 一体なにが起きたのだろうか?


「確か勇者のお嬢ちゃんを助ける時に急病人が来たって言ってたね、その時神父が脅されてた……それを聞いてお嬢ちゃんは怒ったのさ、先に勇者の傷を治してから娘をその場で治すと言う神父の対応は間違っていない。何故ついて行くことを拒否したのかってね」

「ちょ、ちょっと待て……」


 つまり、あの貴族?

 だとしたら、マズイ――アイツは口には出さなかったがクリエを……勇者を何とも思ってはいない。


「それって、つまり……私の所為って事ですか?」


 クリエは青い顔をし、トゥスさんを見つめる。

 それもそうだろう、相手は貴族……今のところ王様達が珍しいだけだ。


「……ああ、そう言う事だろうね、だが気に病むことは無いよ。世界の為に死んでくれ、なんて言ってる連中の頭がおかしいだけさ」


 トゥスさんはそう言った後に自身の持つ銃へと指を這わせる。

 どことなく悲しそうな瞳が気になる所だが……その事を聞きづらい雰囲気もあり、俺は彼女の言葉を待つ……


「それで、その貴族は二人の前で事実を喋った……当然同じ貴族であるお嬢ちゃんも知ってた事だ」


 そう、だよな……


「じゃぁ、カインが捕まったのは……」

「その時にお嬢ちゃんに手を出したみたいだね、勇者に対する扱いも含めその場で剣を抜いたそうだ」

「それならチェルちゃんに手を出したって事で正当化できるのでは?」


 確かにそうだ。

 カインが先に剣を抜いて襲い掛かったなら反逆の意思があると取られ最悪処刑もあり得る。

 だが、今回はチェル……貴族の護衛として剣を抜いたと言う理由もあり正当化できるはずだ。


「普通ならね……だが、そうなっていない以上貴族とは名乗ってないのかもしれない、なにせ実はネーガ家は貴族とは言っても騎士の家系だ……」

「騎士? 騎士なら別にどの爵位でも――」

「いえ、キューラちゃん確かに騎士というのは貴族なら望めば入れる道です。ですが男爵からは城の仕事で騎士以外に志願できるのですよ」


 うん?

 男爵”から”はって……どういう意味だ? 確か城で働いている人って言うのは王様に認められた優秀な人材。

 出生が割れていて尚且つ悪事に手を染めて無く功績を手に入れれば付けるはずだ。


「はぁ、お嬢ちゃん何を勉強してきたんだ? 騎士の家系では男は騎士になる様に育てられるんだ……」

「へ? そうなのか? 騎士団長とかか?」

「いいえ、団長さんは実力と人望を伴う人です。つまり、騎士の家系は徴兵の対象なんです。息子が生まれれば騎士として育て、娘が生まれれば薬師や医師として育て戦場へと送る事になります」


 な、なるほど……騎士の家系って貧乏くじだな。

 いや、待てよくよく考えれば危険ではあるが、家が落ちぶれなければ産まれた時から就職先は決まっているのか、それはそれで良いのかもしれない。

 ってその事は置いておいて……つまり、あの貴族も騎士だって事か?


「ん? でもそれだと要するに――爵位の中では一番下って事だろ? チェルはどうなんだ村長の娘なんだろ?」

「村とはいえ領土があるんだ少なくとも男爵家御令嬢……って所だろうね」

「だったら名乗っちまった方が早く解決するんじゃないか!?」


 だって騎士より男爵の方が上なんだろ!?

 なんだってチェルは――


「もしかしたら、家を守る為かもしれません……」

「は?」


 家を守る為? どういう意味だ? クリエが言っている事がまるで分らない……

 そう思っていると彼女はゆっくりと説明をしてくれた。


「チェルちゃんは恐らく王様の事を知らないですよね? でも、魔王の事は知ってます。なのに男爵家の彼女が私を……勇者を庇ったとすれば……」


 世界の危機を救える勇者を庇った事で下手をすれば爵位を取り上げられ家に迷惑がかかるか……

 それでも捕まったって事は二人はその場しのぎの嘘を使わなかったのか?

 剣を抜いたカインを止めなかったのか?

 もしかして、クリエの為に二人して怒ってくれたのだろうか? ……そうだとしたら、やっぱりあの二人は俺達の仲間に必要だ! なんとしてでも助けないといけない。


「トゥスさん、酒を飲んでるけど問題は無いか?」


 エルフは俺の言葉を聞くなり、歯をむき出しにし笑う……


「言ったろ? この程度じゃ酔わないってね」

「行くんですね?」


 クリエの言葉に俺は頷き――


「今から二人を助けに行こう! カインもチェルも今日中に助け出す」


 俺はそう口にし、立ち上がった。

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