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50 王子と姫

 クリエの勇者としての力は失われた可能性がある。

 トゥスからその事を聞いたキューラは安堵するも新たに勇者と言う存在が生まれてからどのような目に合って来たかを知る。

 その事を胸に刻み、彼はクリエの元へと戻るのだが……そこにはクリード王カヴァリの子供達、すなわち王子と姫が居て……

 クリエがお姫様に何もしてない?

 まさかそんな……俺から見ると幼いが後5~6年もすれば……と思うんだが……


「キューラちゃん、信じてくれてませんね」

「あ、いや……で、でも怒ってるわけだし、心当たりが無くても失礼な事を言ったんじゃ?」


 相手は王族、ただでさえ気をつけたい所だ。

 なにせ、今のところはクリエの味方なんだ……数少ないであろう味方を減らすのは得策じゃない。


「姫様申し訳ございません、俺達に出来る事なら何でもしますので……どうかご機嫌を直してはもらえませんでしょうか?」

「え!? キューラちゃんがなんでも!?」


 何故、クリエが反応をする。

 と、とにかく……姫様のご機嫌を――


「そちらの勇者様は何もしてません!! 問題はお兄様ですわ!!」

「…………」


 彼女はそう言うと再びぷいっとしてしまう。

 た、確かに王子様の方へとは顔を向けてはいない。

 しかし、どういう事だ? 疑問を持ちつつ俺は王子へと視線を向ける。

 すると彼は困っている事が目に見えて分かる笑みを浮かべ――


「い、いえ……はははは」


 そして、答えになっていない乾いた笑い声……

 この人は一体なにをしたんだ?

 気になるな……そう思いクリエの方へと向くと……ってあれ? クリエは?


「クリエ?」

「はい?」


 名前を呼ぶとすぐに帰ってくる言葉。

 なんだ、後ろに居たのか……何時の間に移動をしてたのか、というか何故服を掴む?


「で、では返事は良く考えていただいてからで構いません……私達はこれで失礼いたします」

「お、おい……勇者のお嬢ちゃんに何したんだ王子の坊ちゃん」


 その呼び方は王子の子供を呼んでいる様に聞こえるんだが、トゥスさん……

 しかし、気になるのは当然だ。

 クリエが俺の後ろに隠れるぐらいなんだし……もしかして、俺の考えが甘く、王と王子の間で考え方でも違うのだろうか?

 だとしたら警戒をしないと――!!


「少なくとも勇者様の御身に関わる事です……ですが、決して悪い事ではありませんよ」


 笑みを浮かべたままの王子と頬を膨らませたままの姫はそう残し去って行く……


「なんだったんだ……?」


 俺はそれしか言えず……背中に居るクリエの方へと向く、すると彼女は目を逸らしながら――


「きゅ、求婚をされました……」


 あっさりとバラしおった……って、え? 求婚? つまり、結婚って事か!?


「お、王族の妻であれば、そうそう文句は言えないはずだと言われまして……」

「そ、それはそうだろうけど……え? つまり、あの坊ちゃんは――」


 トゥスさんもこれには驚くしかないのだろう、指を震わせながらもクリエへと向ける。


「でも、男性は嫌です!」

「そこは変わらないのな……」


 はっきりと口にされたクリエの言葉に俺は苦笑いを浮かべる。

 確かに王女となれば勇者よりも自由が利くかもしれない、それはそれで分かる。

 しかし、王子よ……もうちょっと段取りとか場所とか、雰囲気とか考えた方が良いんじゃないか?

 それに……なんか面白くないな。


「とくに、ああいう急に迫ってくる方は苦手です」

「はぁ、全くだね……人の気持ちもちゃんと考えろって思うよ……悪い子じゃないんだろうけど、警戒しておいた方が良さそうだね」

「ソウダナ」


 俺はトゥスさんの言葉に頷きつつ答える。


「キュ、キューラちゃん? なんか声が怖い……ってどうしたんですか?」


 クリエは俺の様子が気になったのか顔を覗き込んでくる驚いたように表情を変えた。

 どうかしたんだろうか?


「か、顔が無表情ですよ?」

「……ソウカ?」

「ククク……」


 何でトゥスさんは笑っているのだろうか?

 まぁ、とにかく早くここは去ろう、うん。


「ほらクリエ、行くぞ、そうだ後で服を買いに行くんだろ?」


 本当は嫌で仕方が無いんだけどな、どっちにしても一着袖が燃えてしまったから買わないといけない。


「はい!」

「お嬢ちゃん達、助けるに行く件を忘れてないよな?」


 勿論、俺はその言葉に頷く。

 忘れるなんて事はしないさ、なにせチェルとカインを助けないといけないんだ。

 だが、相手は貴族……いくら王の依頼があるとはいえ、慎重に行かなければならないだろう。


「そ、そうでした! キューラちゃん服は後で良いですから!」


 ク、クリエは忘れてたのか?

 よっぽど求婚がショックだったのか、それとも王族のクリエに他する扱いに改めて驚いてたのか?

 と、とにかく、クリエから許しが出た訳だし、これで安心して先にチェルたちを助けられるな。


「まずトゥスさんが聞いてる情報を教えてくれるか?」

「ああ、分かった……他の奴に聞かれると厄介だ、お嬢ちゃん達が泊まってる旅館でも良いかい」

「勿論だ、急ごう!」


 俺達はその話をするために一旦旅館へと戻る事にした。

 頼むぞ二人共無事でいてくれよ……二人にはクリエの従者になって欲しいだけじゃない。

 知り合ったと理由もあるんだ……見捨てられるわけがない。


「旅館見えてきましたよ!」


 クリエの指す先には俺たちが泊まる旅館が見えてきた。

 飛び込む様にそこへと入った俺達に食堂に居た娘さんは――


「あ、クリエ様にキューラ様! お帰りなさ――」


 挨拶をしてきたが、恐らくはトゥスさんの顔を見て驚いたのだろう。

 だが、今は――


「悪い! ちょっと話すだけだ!」


 それだけを伝え部屋へと急いだ。

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