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48 その人物は……

 クリード王カヴァリが紹介した人物はエルフであるトゥスだった。

 王は彼女を紹介し、残る二人の候補者を助け出してほしいとキューラ達に告げる。

 キューラはトゥスが紹介された事に内心喜んだ。

 しかし、そのトゥスから思いがけない事を伝えられる……どうやらクリエは現在魔法が使えない身体の様だ……

 果たして、キューラは王の依頼である残る二人の救出を請け負うのだろうか?

 トゥスさんは俺達の方へと歩み寄り、クリエの前に立つ。


「さっきも言ったけど、暫く魔法禁止だ。神聖は勿論、従者の契約も魔力が必要だ……分かったかい?」

「あ、は……はい……でも、本当になんとも……」


 うん、確かに顔色が悪いとかは無い。

 だが――


「ここは素直に従ってくれ……もし倒れる時に頭を打ったりしたら大変だ」

「キューラちゃんがそう言うなら分かりました」


 何か良く分からんが、クリエの中で俺の株が急上昇していないか? 素直に聞きすぎなような気もいや、聞き過ぎだな……これじゃ俺が言ったら何でもしそうだぞ?

 まぁ、なんにせよ魔法を使わないならそれで良い。


「それで、王様……その助けなければならない紹介したい人と言うのは?」


 俺は気を取り直し、王様に尋ねると彼は頷き――


「うむ……名はチェル・フィアランス……ダイト村の村長の娘だ。報告では君達は知っているはずだ」

「チェ、チェルちゃんですか!? それに……貴族? 村長の娘? え……でも……」


 俺は思いもよらぬ王の言葉に声を失った。

 そして、クリエは思わず声を震わせつつ、困惑をしている。

 当然だ……まさかあのチェルが貴族? だけど、彼女はクリエを治してくれた……

 いや、そうじゃない! チェルは出会った時に申し訳なさそうに「勇者と知らずに危険な目に……」と言っていた。

 でも、フィアランスだって? どこかで聞いたような名前だな、何処で聞いたんだ?


「アタシをびっくりしたよ、あのお嬢ちゃんが貴族だって事にね……」

「君も知っていたのなら話が早い、必ず助けてほしい。あの子はただの貴族ではない……勇者と同様守らなければならない大切な者だ」

「わ、私と……同じ?」


 なんか気になる言い方だな?

 いや、でも確かにあれだけの治癒魔法……クリエを守る為にも彼女の力は必要だ。

 そう言う意味なのかもしれないな。


「そうだ! 二人と言いましたよね? じゃぁ、もしかしてもう一人って――カインとかいう少年ですか?」

「……うむ、カイン・アルフィ……実力はまだまだだが、彼には人を動かす才がある……まさか、チェルを連れてこの街に来るとは思わなかったのだが……」


 な、なるほど、つまりこの王様は最初からチェルの事を知っていた。

 そして、貴族であるはずのチェルはどういう訳か勇者に対する考え方が違う。

 恐らくだが、彼女の家系ではそうなのかもしれない……


「チェルは勿論、カインもまた君達の力になってくれるだろう……だからこそ、君達に救出を頼みたいのだ……」


 王はそう言うと先ほどの兵士さんに何かを持って来させる。

 それは金属でできた物で剣と盾の様な模様が刻まれていた……


「それは我が王家の紋、そして我が使いである証だ……勇者であれば屋敷に入ることは出来るだろうが、二人がもし犯罪者として扱われていた場合は勇者の特権では連れてこれん、それを見せ身柄は私が預かる事を伝えるのだ……」


 なるほど……流石の勇者でも犯罪者にされた人を助けることは出来ないのか……でも……


「冤罪なら問題は無いんじゃないのか?」

「残念ながらそうではないのだ……恐らくはチェルへと手を出そうとしたのだろう、カインが相手に怪我を負わせたらしい。チェルは助けられるだろうが彼は無理なのだ」

「そんな……だってカインさんはチェルちゃんの為にですよね?」


 クリエの言葉に頷く王は深いため息をつき――すぐに真剣な表情を俺へと向けて来る。


「先ほども言ったが二人の救出が目的だ……できるな?」

「……分かりました、必ず二人を王の前へと連れてきます」


 俺の言葉に満足気に頷いた王。


「では、よろしく頼むぞ」


 今度は俺達が頷くと、兵士によって俺達は退出を促される。

 この後も恐らく謁見があるのだろう……

 部屋の外に出て兵士が去るとトゥスさんはニヤリと笑い。


「勇者のお嬢ちゃん、ちょっとここで待ってもらえるか?」

「え? 構いませんけど……え? 私だけ?」


 クリエは不安そうにし、俺も思わず首を傾げた。

 俺達に待ってくれって言ってない限りそうなんだろうが……そう思っているとトゥスさんは俺の肩に手を回す。

 あわや潰されそうになったライムは俺の頭へと移動をした。


「ちょっとお嬢ちゃんを借りるよ、大丈夫ちゃんと返すからね」

「え!? あ……私は駄目なんですか?」

「ああ、ちょっとね……」


 彼女はそう言うと俺の耳へ口を近づけ――


「あー! あー!?」


 ク、クリエ……うろたえ過ぎだろ? というか、息が当たってくすぐったい……

 そうじゃない、一体トゥスさんは何を!?


「勇者のお嬢ちゃんの事で話がある」

「――!」


 それを聞いて俺はついて行かないと言う選択肢はない。


「悪い、クリエ……少しだけ待っててくれ……」


 クリエを連れて行かないと言うのは彼女になにかまずい事でも起きているのだろうか?

 そう思い、嫌な汗が噴き出るのを感じつつ俺はそう告げる。


「…………」


 だが、当の本人はしゅんっとしてしまい。

 というか、その恐る恐るといった感じの上目遣いは卑怯だと思うぞ……

 それで落ちない男はいないだろ……


「ほ、ほら! 約束まだだろ? その後は服屋に行こう」

「! はい! うへへへ……」


 そして復活も早いな……


「じゃ、ちょっと借りていくよ」


 俺はトゥスさんと共に歩き出し、人気のない場所へと連れられ一つの部屋へと入った。

 そこにもやはり人の姿も気配もない。

 何でこんな所に? それにしてもクリエに関する話とは何だろうか?


「な、なぁ……」

「これから話すのは大事な事だ……そして、あの子自身の運命まで変える」

「どういう意味だ?」


 やはり、悪い事なのだろうか? 生唾を飲み込み音を鳴らす俺は――彼女の言葉を待つ……


「ああ、まずい事になった……」

「も、勿体ぶらずに早く言えよ……」


 どんなことが起きようと俺は言葉や意志は変えない。

 クリエは……絶対に――

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