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47 王の依頼

 王カヴァリはクリエを犠牲にするつもりが無い。

 その事を知ったキューラはその王より自身の覚悟は本物か確認をされる。

 彼は自分の言葉を引っ込めるつもりはないと口にし――挙句、もしもの場合は世界をも敵にすると告げた。

 王を目の前にそう言い切った彼は運良くも信頼を勝ち取るのだった。

 クリエは兵士に連れられ再び、この謁見の間へと足を運ぶ。


「キューラちゃん……」


 心配そうに俺を見つめる彼女に俺は頷きながら微笑むとその顔に笑みを浮かべ――


「うへへ……」


 うん、クリエはやっぱり可愛い笑顔の時もやっぱりうへへと笑うのか……いや、まぁ予想はしてたけどな。

 それよりも一緒に入ってきた兵士の人ってまさか――

 俺は見覚えのあるその顔へと注目してみる。

 間違いない、あの時……王に伝えてくれると言ってくれた兵士だ。


「さて、まずは仲間を集うのだったな?」

「え、あ……はい!」


 そうだ、まずは仲間が必要だ。

 しかし、貴族のようにクリエを道具扱いする連中は勿論候補なんかに入れられない。


「一応、一人は目をつけている人が居ます……」


 俺はエルフの女性を思い浮かべながら王へと告げる。

 本当はチェルも一緒に居て欲しいんだが――


「そうか、実は私からも紹介したい者がいる……ジェイク君あの者をここへ」

「はっ!」


 あの兵士さんはジェイクというのか、後で礼を言っておこう。

 そんな事を思いつつ、俺は彼が去って行った方へと目を向けた。

 そんな時だ……


「勘違いしないでほしいのは世の中には我らと同じ人間も居ると言う事だ」

「あ、あの……それは一体どういう事でしょうか?」


 クリエは王と俺の会話を聞いていない訳だから……まだ、王様を警戒してるんだろう。


「勇者殿、貴女の一人目の従者と同じ事を考える者ということだ」

「へ?」


 目を丸め、驚くクリエ……

 それにしても、そんな事で驚くなら今までどんな迫害を受けてきたんだ勇者は……

 まぁ、これからはそんな事させはしない。


「来たようだな」


 俺は扉の方へと目を向ける。

 王が紹介したい人とは一体……そもそも女性じゃなきゃクリエが嫌がるかもしれない。

 その場合はまた我が身を犠牲にするか……そんな事をぼんやりと考えていた時だ、入ってきた女性に俺は目を疑った。


「彼女は嘗て魔王と対峙したエルフの子孫……そして、我らが同胞でもある」

「………………」


 王の前だと言うのに面倒くさそうな表情を浮かべた女性は火の付いていない煙草を咥え――


「彼女の祖先は力が足りぬことに嘆き、弓ではなく銃と言う手段を作った」


 そう、そこに居たのは俺が思い浮かべたエルフらしくないエルフ……トゥスさんだ。


「……そして、彼女と共にもう二人の候補を助け出してほしい」

「――は?」


 彼女が出てきた事に驚いた俺達は予想外の言葉に同じ顔をする。


「一人は癖があるがきっと旅には必要だろう、そしてもう一人は貴族ではあるが人の命の重みを知るものだ……どちらもまだ若いがな」

「貴族……」


 俺は教会で出会った男を思い出し、思わず顔を歪める。

 だが、王は気にした素振りも無く――


「言っただろう? 誰もがそうではない……それにあの子の力はお前達に必要だ」


 ……そうは言ってもな実際に会わないと分からないってのが本当だ。


「出会ってから決めると言うのは?」

「それでも構わない、君達が良いと言えなければ意味が無いからな」


 それなら、良いかそれに助けろと言われたんだ……

 例え貴族でも危機に陥っているのならば放って置くのは良くない、それにしても――


「紹介したい人ってのがトゥスさんだとは思わなかった……」


 彼女に向けてそう言うと、トゥスさんは指で火の付いてない煙草を指差す。

 おいおい、王の前だぞ? そう思い王様へと目を向けると彼は頷いている。

 良いって事か? でもなぁ……


「早くしてくれないかい?」

「い、いや……でも……此処で煙草は」


 俺が渋るとトゥスさんはクリエの方へと目を向け――すぐに俺へと瞳を向ける。


「あ、なら私が付けますよ?」


 その意図に気が付いたのかクリエはそう言うのだが、トゥスさんは首を振る。


「やめときな、アンタは精霊石の影響で魔力が乱れてる。自身も気が付かないだろうが、下手に魔法を使えばまた倒れるよ、石は取り除いたから徐々に戻るけどね」

「な、なぁ……それ早く言って欲しかったんだけど!?」


 超重要事項じゃないか!! そう思いトゥス案へと声を上げると彼女はニヤリと笑い――


「どうぜ、起きた後にまた会うんだ忠告は本人にした方が良いだろ?」


 そ、そうなのか? いや、伝えて欲しいぞ……というか、トゥスさんはこうなる事が分かってたのかよ……


「さて、お嬢ちゃん達……よろしくな」


 彼女は兵士に火をつけてもらい、紫煙を吐き出すとようやく笑みを浮かべてそう口にする。

 正直な話、これはありがたい。

 トゥスさんは怖いけど……奇跡の事を知っていてクリエを物扱いはしない、元々頼むつもりだったんだからな……王様のお蔭で探す手間が省けた。


 俺はクリエの方へと視線を逸らし、すぐに王様やトゥスさんの方へと瞳を戻すと頷いた。

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