466 買い物と……
「ううー」
買い物へと向かうと途中。
クリエは不機嫌な様子で俺を睨んでいる。
一体どうしたというのだろうか?
「クリエ?」
彼女の名前を呼ぶとぷい! っとそっぽを向いてしまう。
う、うーん……どうしたのだろうか?
「……えーと、クリエさん?」
もう一度名前を呼ぶと彼女はチラリとこちらを見るがすぐに目線を反らしてしまう。
ご機嫌は斜めのようだ。
しかも俺が何かをしてしまったというのは分かるが……。
一体なにをしてしまったのだろうか?
「えと……。ど、道具屋に行こうか」
そう言うと彼女は何も答えずについてくる。
気まずい……非常に気まずいが……。
こういう時になんて言えばいいのだろうか?
ごめんなさいと謝るか?
「…………」
いや、無いな……。
謝ることは別にできないわけじゃない。
ただ、無いと思った理由は単純だ。
借りに謝ったとして「なんで謝ったんですか?」と理由を尋ねられたら答える事が出来ない。
そこでさらに彼女の機嫌を損ねてしまうのは分かりきっていた。
だからこそ、理由が分からない状態で謝るのは危険だ。
「……浮気者」
「え? 今なんて言った?」
ぼそっと何かを言った気がするが……。
一体どうしたというのだろうか?
彼女は答えることなくまたそっぽを向いてしまう。
うん、やっぱりご機嫌が斜めだ。
こんなクリエは初めて見たが……。
「うう……」
そんな態度を取られると非常に苦しい。
俺にとってクリエは大事な存在だ。
彼女がいなければこんな戦いを続ける理由すらなくなってしまうぐらいには……。
だからこそ、こちらを向いて笑ってほしいんだが……。
どうやらそれが今は叶わない状況のようだ。
どうしたものかと考えつつも歩き続けるとすぐに道具やへとたどり着く。
毒消しや薬草、香草などを買い足しつつ、クリエの方を改めて見るが……。
彼女はどうやら俺の視線に気がついていないようで物思いにふけっているようだ。
その様子が悲しそうで……見ているだけで胸が苦しくなってきた。
「クリエ……」
声をかけると彼女はハッとし、プイっとそっぽを向く。
だが、すぐにこちらをチラリと目を向けてきた。
「うー」
そして唸り声をあげていた。
なんだか可愛い、とも思える行動だが、不機嫌なのは変わっていないらしく……。
手を出そうとするとするっとよけられてしまう。
それどころか――。
『………………』
心なしかライムにまで威嚇をされているような気がする。
なんでそう思ったのか?
詳しくは分からない……だが、そんな気がしてしまい、俺はがっくりと項垂れる。
今はほとぼりが冷めるのを待つしかないのだろうか?
「道具は買ったし、戻ろう」
そう言うと何も言わずについてくるクリエ。
うん、それはそれで……寂しい物がある。
せめてなにか一言離してほしいが……今は何も話したくないようだ。
息が詰まるような空気の中、なんとか俺達は宿へと戻るのだった。




