463 不安?
「……キューラちゃん」
「どうした?」
クリエは不安そうな顔をしている。
仲間が心配という事だろう。
立ち止まった彼女に目を向けた俺は……。
「早く行こう」
そう告げる。
すると彼女は頷き――。
すぐに考え込む。
仲間が心配というのは間違いないだろうが、他にも何かあるみたいだ。
「どうしたんだ?」
俺が訪ねると彼女は言いにくそうに表情をゆがめる。
やっぱり何かあるみたいだ。
「あの……あの……私達、ああ見えてるんでしょうか!?」
「はぁ?」
仲間の危機に何を言っているんだこの子は。
第一……。
「如何見えてようが関係ないだろ、そもそも人前で――」
いちゃついた覚えはない。
抱き着かれた覚えはあるが、この頃は少なくなってきている。
ような気がする。
なんか寂しい気分もするが……そこはまぁ、人前でやられるよりはいいだろう。
「でも、でも!」
彼女にとっては重要らしく、涙目だ。
確かに先ほどのは強烈だった。
だが……。
「まぁ、同じような目で見る人はいるだろうな」
「そ、そんな……」
同性同士、いや、俺は男だが……。
はたから見たら同性にしか見えない……いや、身体は女になったままだし女同士って事に……。
ああ、とにかく!
「でも、ほら女の子同士なら! 花、花がありますし!」
「……クリエ、その言い方は差別的だぞ……男性同士だろうが女性同士だろうが、嫌な人は嫌だし、好きな人は好きなんだぞ?」
否定するのは簡単だ。
だが、それをしてしまえば考えることを放棄してしまう。
それはあまりにももったいない事だろう。
今回の事は役には立たないとは思う。
だが、いずれ何か役に立つ情報を得る機会があるかもしれない。
そんな時、自分は受け入れられない……ではその情報は手に入らないんだ。
「うう……そうですね」
クリエは反省したようにしゅんとした。
その様子は可愛いが……。
「とにかく、今は皆を助けに行くんだ」
「! は、はい!」
クリエは頷き、俺達は急ぎ港の倉庫へと向かう。
ここから走って行けばすぐにつくだろう。
そう思っていたのだが……。
捕まってから時間が経っているはずだ。
早くしないと手遅れになるかもしれない。
「……キューラちゃん、アレ!!」
クリエは倉庫らしき場所を指さし声を上げる。
だが、そんな事をされなくても何が起きているか分かった。
煙が上がっている。
「急ぐぞ!!」
「分かりました!!」
クリエと共に倉庫へと入るとそこでは――。
「アンタ……舐めた真似してくれて、死にたいのかい?」
片手で襟首をつかみ上げ男のこめかみに銃を突きつけるトゥスさんの姿が見えた。
彼女だけではない。
大鎌の柄で自分よりも大きな女性の後頭部をぐりぐりとしているファリスの姿もあり……。
「チェルが……固まってる」
その間で呆然としているチェルが一人こちらの方へと目を向け――。
「あ、キューラちゃん」
そう口にした。
どうやら、無事みたいだ……。
にしても……どうしてこうなった。
中には脱ぎ掛けの男もいるが……見事に気絶をしている。
何をされそうになったのか深く考えずともわかるんだが……。
というか、これ起きた後に襲おうとしたんだろうな……。
だけど、逆に仕返しをされて……こうなったんだろうな。
「助けは……必要なかったみたいですね」
「そう、だな……」
惨状を目の当たりにし、俺達はそうつぶやいた。




