462 捕らえろ!
怪しい二人を追いかけ俺達は街中を走る。
目立つとは思うが周りの人たちは無関心だ。
だが、そんなことはどうでもいい。
今は仲間だ。
彼らを見失う事だけは絶対にダメだ。
仲間をもう絶対に失うわけにはいかないんだ。
「キュ、キューラちゃん!」
「ああ!」
クリエに名を呼ばれ俺は頷くと――。
「氷霊よ走れ! 我が敵を捕らえろ……フロスト!!」
普段は使わないと決めている氷の魔法を唱える。
すると地面は見る見るうちに凍り付き。
二人の男の足元まで氷は瞬く間に走る。
本来は拘束の魔法ではなく、あくまで足場を凍らせるものだ。
だが、詠唱により力を得た魔法は見事に二人の男を捕えた。
「な、なんだよ! この魔法は!?」
「攻撃魔法だとライムに影響があるからな」
これならばもしライムが飛び出しても問題はない。
だからこそこの魔法を選んだのだ。
「く、クソ!!」
「皆をどこに連れて行ったんですか!!」
流石にクリエも怒っている。
それもそうだろう。
しかし、そんな問いに簡単に答えてくれるのならば、逃げたりしないだろう。
「クリエ、退いてくれ……」
俺はライムをクリエに預け拳を握る。
そして、一人を思いっきり殴りつけた。
「キュ、キューラちゃん!?」
「……ひっ!?」
一人は思いっきり殴られて倒れてしまい、動かないが死んだわけじゃないだろう。
俺は残った一人の胸ぐらをつかみ。
「お前らが簡単に吐かないことは分かってる。だが……相手が悪かったな?」
「ど、ど、どどういうことだ!」
この状況で理解できないのか……。
「俺は仲間を助けるためなら何でもする……お前達が死なないようにいたぶるだけだ」
なるべく脅す様に低い声を出す。
しかし、どうやっても可愛い声だ。
「い、いたぶる……だって、お前が?」
「今の拳の威力を見ただろ? 武器を身に着けてなくてもこれぐらいはできる」
ニヤリと笑って見せると明らかに相手の表情が固まった。
これでいい……。
「まず問う……仲間はどこだ?」
無事かどうかを尋ねる必要はない。
無事でなければ俺達を釣ることはできない。
仮に無事じゃなくても嘘を言っていたら見抜く手段はない。
だからこそ、どこかどうかを聞くのが手っ取り早いわけだ。
「そ、それを言うと思うか?」
「黙ってられると思うなよ?」
俺はそう言うと腕をつかみひねり上げる。
「……そんな、キューラちゃん」
クリエにはショックだろう。
だが、彼女の前で殺しをするつもりはない。
だから、ごめん……これだけは許してくれ。
「いえ、言わないとこの腕が使えなくなるぞ?」
脅しではないことを示すために俺は腕をさらにひねり上げる。
すると――。
「み、港の倉庫だ!」
その声はもう一人の男から聞こえた。
彼は起き上がると――。
「そ、そいつから手を放してくれ!」
「ジョール……なんで……」
嘘、ではなさそうだ。
俺はそう判断し手を離すと――。
「くそ!! なんで――」
「お前を見捨てるなんてできないんだ……お前を助けてやれない俺を、こんなに弱い俺を……許してくれドッツェ……」
「「…………」」
なんだこの空間は――二人は見つめ合い、互いに互いの名前を呼んでいる。
いや、なんか見てはいけない物を見た気がする。
「いこう、クリエ」
「ええ、そうですね」
互いに棒読みになった俺達は港へと向かう事にした。




