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460 睡眠不足

 自分で言っておいてなんだが……。

 本気じゃなかったのか? というのは言わなかった方がよかった。


「……寝れない」


 あの笑顔が頭から離れない。

 というか、こういう時に限ってファリスは何処に行ったのだろうか?

 先ほど可愛らしい笑顔を見せてくれたクリエは真横で寝ている。

 しかも、俺は抱き枕だ……。


「うへへ……」


 時折聞こえる笑い声はいつも通りの声ではある。

 だが……。


「……良く寝れるな」


 顔を少し赤らめていた彼女は何処にやら……。

 落ち着いたのかすっかり熟睡している。

 ずるい……とは思うが……俺が気にし過ぎなのだろうか?

 俺の方はどうにも寝れそうにない。









 夜が過ぎ……寝れないとは思っていたが目をつむって無理やり無になっていると何とか少しは寝れたみたいだ。

 とはいえ、眠気が無いわけではない。

 だが……。


「うへへ……キューラちゃん、おはようございます!」


 笑みを浮かべて挨拶をしてくる彼女を見ると眠いだなんて言っていられるわけもなく。


「あ、ああ……おはよう」


 上擦った声で返事を返す。

 ファリスの方はついに戻ってこなかった。

 一体どこに行ったのだろうか?

 不安になりつつも部屋を出ると……。


「キューラちゃん!!」


 チェルとトゥスさんが走ってきた。

 トゥスさんは面倒そうな表情だが、チェルの方は焦っている。

 一体なにがあった?

 いや、なんか嫌な予感がする。


「ファリスちゃんが!!」

「ファリスが、どうした?」


 昨日彼女の姿は見えなかった。

 彼女が裏切るとは考えづらい。

 だが……ここは彼女にとって……危険な地ではないのだろうか?

 何故なら彼女は魔王軍の裏切り者だ。


「それが……昨日の夜、急に外に出て!」

「ったく……面倒な子供だね」


 そう言いつつ彼女はタバコの火をつけようとし――その手は震えていた。

 よほど怒っているようだ。


「トゥスさん……何があったんだ?」

「奴らだよ……新大陸の奴らが攻めてきたんだ……クリエを狙ってきたんだろうね」


 息をのむクリエを見つめ、俺はすぐに二人の方へと目を向ける。

 するとチェルは両手を胸の前で合わせ……。


「お姉ちゃんの敵は私の敵って……一人で向かっちゃったの……」


 彼女の事だ負けることはない……と信じたいが――。

 違和感がある。


「気になるところがある」

「なに?」


 いや、違和感ではなく……確信と言ったほうが良いかもしれない。


「チェル……君はなんでその時に俺に伝えなかった?」

「だ、だってその時間がなかったから……」


 なるほど、でも本当に彼女が誰にも伝えずに昨日の事を朝になって言うだろうか?

 それに……。


「トゥスさん、タバコつけないのか?」

「はぁ? 吸ってる場合じゃ……」

「トゥスさんなら、呆れながら吸いそうな気もするんですが……」


 そう、彼女ならきっとタバコを吸う。

 それだけじゃない……。


「クリエの事をクリエって呼んだの初めてだよな?」


 彼女は確かクリエの事をお嬢ちゃんと呼んでいた。

 クリエお嬢ちゃんとも呼んでいたが……呼び捨てではなかったはずだ。

 それに何より……。


「あのファリスが何も言わずに消えるはずがない」

「そう、ですね……なんか二人とも変ですよ……」


 昨日の事があってファリスがいないことを疑問に感じてはいたが、二人の姿も見えなかった……。

 魔大陸に来て新大陸への警戒が薄れていたのだろうか?

 いや、薄れていたんだろう……。

 俺は手にいれたばかりの装備を身に着け――。


「皆をどこにやった?」


 目の前の二人へと問うのだった。

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