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452 死のライオン

 俺達は動物嫌いのエルフを連れ、ミィちゃんのいる小屋へと行く。

 扉を開けると「グルルルルルル!」という唸り声が聞こえ……。

 姿を現したのは大きな猫だ。

 見た目はライオンとかトラとかではない、猫だ。

 可愛らしい顔とは裏腹に唸り声はライオンのようだが……。

 とにかく猫だった。


「……凄い大きいね」

「ああ、うんそれに毛並みも良いな」


 相当大切にされているのだろう。

 毛並みはサラサラで特別猫好きというわけではない俺でも触りたいと思えるほどだった。

 それにしても……。


「……威嚇されてるな」


 ミィちゃんは鎖に繋がれており、すぐに飛び掛かってくる様子はなかった。

 しかし、それでも迫力はしっかりとあり……。


「力を示せばいいんだろ? なら……」


 と言いながらトゥスさんが銃を構え、俺はそれを慌てて止める。


「待て待て待て……」


 当てる気はないだろうが、それでも危険には変わりがない。

 そう思って俺は彼女を止めた後ミィちゃんに近づく。

 こういった猛獣のたぐいは背中を見せちゃいけないとか聞いた覚えがある。

 確か、人間が正面を向いている状態では襲いにくいらしいと聞いたことが……。


「キューラちゃん!」

「だ、大丈夫だって」


 そうは言っても怖いのは変わりがない。

 だが、この子に認めさせなければ何も変わらないのだ。

 そう思って何とか近づいた後……。


「ミィちゃん?」


 名前を呼ぶと牙をむき出しにするミィちゃんに対し、俺はさらに近づくと……。

 ミィちゃんはネコパンチをしてくる。

 それを慌てて叩き落すと、ミィちゃんはじっと叩き落された手を見ている。

 強くやったつもりはなかったが、まずい事をしてしまっただろうか?

 そう考えていると――もう一度ネコパンチをしてきた。

 当然叩き落とすと……不思議そうな顔をしている。

 一体どうしたのだろうか?


 いや、もしかしたら……。

 俺は再び迫るネコパンチを少し強めに弾く。

 力を示すというのがこういう事であれば楽なんだが……。


「……ごろごろごろ」

「……なついたね」


 あきれた様子のチェルではあったが、どうやら彼女の言う通り懐いたみたいだ。

 なんというかあっけない……。

 だが、このミィちゃんはどうやらそれだけで俺を強者と考えたようだ。

 まぁ、ありがたいんだが……。


「それじゃご飯からな」


 俺がご飯を用意しようとするとじゃれついてくるミィちゃん……。

 可愛い、可愛いんだが……ちょっと邪魔、だな。


「ほら、少し離れてろって……」

「あはは……なんか、思ったより可愛いね」


 チェルはそう言うとミィちゃんの喉元を撫で始める。

 俺の仲間は大丈夫なのだろうか? されるがままだ。

 そのおかげでどうにか世話ができそうだが……。


「これ、意外と大変、だな」


 そう言うと俺は一つ溜息をついた。

 餌を用意すると匂いにつられたのだろう、ミィちゃんは餌の方へと近づいてきた。

 ゴロゴロと喉を鳴らしながら食事をし始めた。


「後は洗って、遊ぶ」

「そうですね……もう危なくはない、みたいですけど……」


 クリエは不安そうな顔をするが、ファリスの方は何処かうきうきとしているようだ。

 動物が好きなのだろう……。

 なついてくるぶんには可愛い、とは思うが……こう大きいとじゃれついてくるのにも少しどころじゃない危険がある。


「懐いたからと言って気を抜くなよ?」

「……面倒だね」


 トゥスさんはそう言うと何か更に告げようとするがすぐに口を閉ざす。

 ここで揉めても平行線だと気がついてくれたのだろうか? とにかく、このままでいてくれたらいいが……。


「トゥスさんも気を付けてくれよ?」

「……近づかないから、平気だよ」


 そっけなくそう言う彼女だったが……。


「ふん」


 どうやら先ほどの言葉を慎んでくれという発言に怒ってしまったのだろうか……。

 少し、いや悪い事をしたな……。

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[一言] トゥスさん実は動物が苦手説
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