444 予約
「こんなもんかね……」
ファルさんはそう言うと席を立ち先ほど渡した鉱石を調べ始めた。
何も言わずにじっと見つめているその姿に俺は戸惑ってしまう。
折れには分からないがもしかしたらよくない石が入っていたかもしれな――。
「これは使えないね」
彼女はそう言うとその辺へと乱雑に置き始め、今度は小さめの鉱石を見つめ始め。
「うん、いいじゃないか」
そう言ったものは丁寧に扱う。
「……な、なにが違うんでしょうか?」
クリエはぽかんとしながらそれを見つめているが……。
勿論俺にだってわからない。
「不純物が多いんだよ、ドワーフは人と違ってねそういうのが分かるんだ」
「そう、なんだ……」
チェルは少し驚いて見せたが、それに対しファルさんが得意げになることはなかった。
恐らくはそれが普通だからだろう。
「でも不純物が多いなら作る過程で飛ばせばいいんじゃないのか?」
「そうだね、そうすればいいだけじゃないのかい?」
俺とトゥスさんは同意件だったが――。
「あのね、それじゃ飛ばしきれないから少ない物を選んでるんじゃないか……良いんだよ別にすぐぶっ壊れるような武器でも勿論壊したら許さないけどね」
…………。
この人にっこりと笑ってはいるが……絶対に怒っているのは分かる。
「よ、余計なことは言わないから普通に作ってくれ……」
「よろしい」
どうやら武器づくりに手は抜かないでいてくれるようだ。
とりあえずは助かったという事だろう。
「……それで、武器はどのぐらいで作り終わるんですか?」
「……だいたい14日程度だね」
チェルの質問にそう答えてくれたが……。
時間がかかるんだな。
いや、まぁ……そうだよな。
そのぐらいかかっても仕方がないのかもしれない。
「案外普通だね」
「え? そうなのか?」
「ああ、どんな武器でもちゃんと期間内には仕上げてやる。興が乗ったらもっと早くなるかもね」
彼女はそう言うと手の平をぶらぶらと振り……。
「あんたらは宿でも見つけて休んでたらいいさ、あの騒ぎで強さは証明してるからね、問題はないだろう」
ああ、そうか、そうだった。
そう言えば戦ったな……強くはなかったが……。
「分かったそうするよ」
しかし、二週間か……何か仕事の依頼でもあると助かるんだが、それは宿屋の主人に聞いてみるか……。
宿へとつくとやる気のない受付が俺達の方へと目を向ける。
すると暫くぼーっとしていたのだがすぐに態度を改め――。
「いらっしゃい!」
笑みを浮かべ始めた。
「……すっごい変わりようだね……」
チェルは思いっきり嫌そうに表情を浮かべるが、対し店員は――。
「何を言ってるんですか? 強者に対して当然の態度です!」
屈託の笑みを浮かべる女性にあまりいい印象はないが……。
どうやらまともに宿を使えるようだ。
「ここに泊まりたいんだ……安い部屋で良いんだけどさ?」
「ぜひ! 安い部屋なんて言わずに特上を無料でお貸ししますよ!」
無料って……。
「なんかすごく怪しいです」
ああ、俺もそう思うよ……。
俺は頭の上に乗っていたライムをクリエへと渡すと受付に――。
「なら一番安い部屋の代金でその部屋を頼む」
「え?」
「タダより怖いものは無いからな……それでついでなんだが仕事の斡旋はギルドか? それとも酒場か?」
俺が訪ねると不本意そうな表情を浮かべるかと思ったのだが、料金を手に取った女性は笑みを浮かべ――。
「はい、お仕事でしたら酒場に張り出されていると思いますよ」
少し浮かれた声を出しながらそう教えてくれた。
「行くのかい?」
「いや、今日は休んでおこう……」
後ろでチェルが笑みを浮かべて怒ってるからな……。




