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443 シュター

 洞窟から出ても魔物に襲われることはなかった。

 何故だろうか? 気にはなった……。


「気配はする」


 というファリスの言葉に俺は首を傾げる事となった。


「どういうことだ」

「あの洞窟、きっと帰ってきた人いない……だから怯えてる」


 なるほど、つまり洞窟から出てきた俺達は強者だから近寄らないようにしている。

 まったく、面白い大陸だな……。

 魔物まで強者に従うのか……いや、魔物だからこそか?

 とにかく、街までは安全に移動が出来た。

 後はシュター武具店へと向かうだけだ。

 と言っても、もう場所は分かっているし、迷う事もない。


 扉をかいくぐり、店主と目が合うと――。

 彼女は口角を吊り上げる。


「戻ってきたかい」

「おい、聞いてないな……あんな魔物がいるなんて」


 トゥスさんが突っかかるが、彼女は首を横に振る。

 どうやら、バカにしているというわけではなさそうだ。


「どんな魔物が居たとしてもあんた達は戻ってきた……匂いで分かるよ鉱石だって持ってきてるじゃないか」


 ドワーフの特性なのだろうか?

 どうやら俺達が鉱石を持っていることを知っているようだ。


「試したのか?」

「……さぁね」


 いや、きっとそうだろう。

 死ねばそれまで……彼女が武器を作る必要なんてない人物だったというわけだ。

 だが――俺達はこうして戻った。


「なら、武器を作ってくれ……とびっきりの奴を」

「……ああ、良いよっとそうだ……名乗ってなかったね」


 こちらから聞こうとしていたことを彼女は気がついたかのように話し始める。

 なるほど、名乗る必要すらなかったわけだ。

 今までは……。


 彼女は俺達の強さを見てはいたが、自分が武器を作ったり名乗る人物ではないと考えていたのだろう。

 しかし、戻ってきたことからそれを変えたんだ。

 これが魔大陸か……。


「私の名前はファル……ファル・シュター、魔大陸一の鍛冶屋だよ」


 さぁ鉱石をよこしな。

 そう言うかのように差し出された手に俺は鉱石が入った袋を手渡す。


「確かに……」


 歯をむき出して笑う彼女は――。


「それじゃ、その前に手を見せな」

「手?」

「ああ、そうだよ……手だ」


 なんで手なんかをと思ったがそうか、ガントレットならサイズがあるよな。

 そう思いつつ手を差し出すと彼女は俺の手を触り始める。


「ふーん……」


 いや、ふーんってこの状況は何なんだろうか?

 フニフニと触られ続けるのはちょっと違和感と言うか恥ずかしいというか……。


「あんた名前は?」

「……キューラ・クーア」


 俺が名乗ると彼女は目を丸める。

 そして、にやりと笑みを浮かべた。

 それがいったい何を意味するのか?


「あんたが実力を試した奴が誰だか分かっただろう?」


 それに対し、威嚇するようにそう言うのはトゥスさんだ。

 しかし、彼女には興味がないのだろうか?

 目の前の女性は――。


「良いよ、最高の武器を作ってやる。ただし……その武器を使って一回でも負けてみな? あんたの一生を全部壊してやるからね」


 ゾクリとする声だった……。

 絶対に負けることは許されない。

 そんな事を言われてここまで恐ろしいと思えるだろうか?

 いや、彼女にはそれをやるというすごみがあったのだ……。


「あ、ああ……分かった」


 だが、負ける気は俺にだってない。

 だから、頷き答えた……。

 この選択がどうなるかなんてわからない。

 だけど、クリエを守るために……もう、負ける気はない。

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[一言] 一度でも負けたら一生ペットとして飼われそう
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