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442 奥に居るモノ

 氷が届かないことに俺は安堵をしつつ走る。

 目的は敵の所へとたどり着く事だ。

 それもなるべく早く……。

 そうしなければいけない理由は単純なものだった。


 魔拳は強力な魔法だ。

 しかも体術を会得した今ならその威力はさらに上がっている。

 以前よりも腕を焼かれる感覚もなく、これならば長く使っていくことは可能だろう。

 だが……それでも諸刃の剣であることは変わりがない。

 だからこそ、切り札なんだ。


「見えた!!」


 目を凝らし先を睨むと氷の息の正体を見つけた。

 人間ではない。

 見たこともない魔物だ……。

 ドラゴンでもなく、人でもない。

 大きな毛玉がそこにはおり、それが氷の息を吐いていた。

 毛玉の近くには重なった人や獣の骨。

 こいつが氷を吐き、被害に遭った人々を襲っていたのだろう。


「これだけ、被害が出てれば噂になるはず……だけど、こんな毛玉がいるなんて聞いてないぞ……」


 つまり、あの人は試したのだ。

 これを知っておきながら……。

 自分の武器を使うならこの程度の状況を覆す何かを持っていなければだめだと判断したのだろう。

 死ねば死んだで仕方がない。

 ただそれだけ……。


「よし!!」


 だが、俺は違う。

 魔拳がある……抵抗できる手段がある。

 だからこそ――。


「残念だったな……俺はお前の天敵だ……!!」


 接敵し拳をふるう。

 毛玉は鈍重で簡単にとらえる事が出来た。

 いや、だからこそ獲物を氷漬けにしてたのだろう。


「貰った!!」


 俺はそう口にすると毛玉に再び拳を叩き込み……。

 毛玉には拳から炎が燃え移り、暴れはじめる。

 しかし、それは恐ろしいというほど凶暴な物でもなく……。

 やがて毛玉は大人しくなった。


「……あっけなかったな」


 これも師匠のお陰だ……。

 俺はそう思いながらふぅとため息をつく。

 そして辺りを見回してみると光る物を見つけた。


「見たこともない石だな」


 壁と言うか、岩にめり込んでいるそれを腰にあった短剣でコンコンと叩いてみると、甲高い音が聞こえた。

 金属であることは間違いないようだ。


「さて……どうやって持ち帰るか、その前に」


 どうやら、ここが終点のようだし皆を呼んでこないとな……。





 仲間達を呼び再び洞窟の奥へと訪れる。

 流石に俺一人じゃ採掘は無理だからだ。

 ここが平和になったとは言い切れないからな。


「それじゃ、掘るか」

「はい! 任せてください!」


 俺が無事だと知ると上機嫌になっていたクリエはうきうきとしながら持ってきていたつるはしで鉱石を取り始める。

 見た目とは裏腹に意外と力があるからな。

 彼女が加わってくれれば採掘もすぐすむだろう。


「どのぐらい持って行くんだい?」

「なるべく多めがいいだろうな……どんな武器になるか分からないし」


 持って行ってこれじゃ足りないよ、じゃ意味がないんだ。

 俺がそう言うとチェルも頷いてくれた。


「そうだね、でもここ勝手に掘って良いのかな?」

「問題ない、魔物を倒したのはキューラお姉ちゃん、追い出された人たちのものじゃない、ここはお姉ちゃんの場所」


 いや、神大陸じゃそうはいかないんだが……。

 まぁ、力こそ正義であるこの大陸ならではの事だろうな。

 今はありがたく思っておこう。


 しばらく、採掘をつづけた俺達は荷物を抱えながら戻ることにした。

 これ以上持って帰ろうとすればきっと帰り道で魔物と戦う時に面倒になる。

 ちゃんと戻る時の事は考えなくてはならないからな。


「まぁ、ライム居るけど……」


 俺の言葉に応えてくれたのだろうか? プルプルと震えるライムだったが……。

 この子にだって弱点はあるし、そのせいで今回は戦わせる事が出来なかった。


「それじゃ、戻ろうか皆」


 頷いて答えてくれた仲間たちと共に俺達は町へと戻る。

 目的はシュター武具店で装備を作ってもらう事だ。

 そういえば、彼女は名乗ってなかったな……なんて名前だろうか?

 帰ったら聞いてみようか……。

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― 新着の感想 ―
[一言] なんかよくわからない魔物だったけどヨシ!
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