表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/490

43 クリエの答え

 3人を仲間に加えよう、そう提案するキューラにクリエは嫌だと言う。

 ある意味予想通りの言葉にキューラはクリエの説得を試みる。

 すると、クリエはカインはキューラとは違うと口にする……果たしてその違いとは一体何の事なのだろうか?

「俺と違うってなんだ?」

「そ、それは……でも……そう思うんです」


 なんだそれ? 勘ってことか?

 ううん、そうは言っても――


「彼は悪い人ではありません、キューラちゃんの言う事が嘘だとも思えませんのでチェルちゃんも本当に魔法が上手なんでしょう……ですが、私はあの子をカインさんを連れて行くのは反対です」

「だけど、チェルを仲間にするには――」

「……例えカインさんが女性でも、私は反対です、彼は危険です」


 危険って……待て女性でもだって?


「何で女性でも駄目なんだよ……ちゃんと説明してくれなければ納得が出来ない!」


 俺の自分勝手かもしれないが、これはクリエを守る為なんだ。

 簡単に引く訳には行かない。


「……キューラちゃん以外で男性の従者は取るつもりはありません、だけど、キューラちゃんがどうしてもと言うなら考えます。ですが――彼は周りが見えてない」


 ……そう言う事か、確かに初めて出会った時もだが、もしもの事を考えてなかった。

 枝なんかで道を決めて、目の前で危険だと話されているのにも関わらず林檎を取りに行った。

 チェルの魔法があったとしても俺達が居なかったら最悪2人はあの場で死んでいたかもしれない。

 どう見てもチェルだけで彼をコントロール出来ている風には見えない。

 狩りに行動を共にしても俺達もあの無茶苦茶ぶりをいつまで抑えられるかも分からない……


「でも、それじゃチェルだって危ないって事だろ?」


 それなのにクリエは何も考えていない? そんな事をするような子ではないだろう……


「……そう、ですね、ですから彼らには腕利きの冒険者を紹介しようかと思っていたんです」


 なるほど、確かにそれなら安心はできる。

 だけど――


「チェルの才能は諦めるしかないのか……」


 あの治癒魔法……これからの旅に必須だ。

 だが、そう簡単に仲間になってもらえないとは思っていたが……

 そして、その原因がカインになるとは思っていたが、予想とは違う結果で原因となってしまった。


「そ、その、ごめんなさい……」

「クリエが謝ることは無いよ、従者にする以上、従者(俺達)の安全を考えるって言ってたんだからな」


 そうクリエは俺と出会った時にそう言っていた。

 その時はありがたいと思ったんだけど……


「はぁ、もしトゥスさんも駄目だったら当分は2人旅か……」

「そ、それは駄目なんですか?」


 なんで残念そうな顔を浮かべる。


「その分危険だ。2人じゃ出来る事も――」


 少ない、そう言おうとしたら不意に頬に柔らかく冷たい物が押し当てられ――


「ひゃぁ!?」


 俺は何度目かになる恥ずかしい悲鳴を上げる。

 も、もしかして癖になってないか、これ?

 そう思いつつ恐る恐るクリエの方へと向くと――


「うへへ……い、今の悲鳴なんかすごい可愛かったですよ? あ、そのいつも可愛いですけど……うへへへへ」


 いや、まったく嬉しくない。


「ライム、その……急には困るぞ?」


 俺は一旦クリエを視界から外し未だにほっぺたに体を押し付けて来るライムへと文句を言う。

 するとライムは俺の頭の上へと移動をしピョンピョンと跳ね始めた。

 痛くはないが、その……微妙にくすぐったいぞ、それ……


「なんだ、腹が減ったのか?」


 そう言うと何故か跳ねる速度を上げるライム……怒ってる?


「もしかして――」

「ん?」

「自分も居るって言ってるんじゃないですか?」


 ああ、なるほど……確かに2人と俺は言っていた。

 だが、ライムを決して忘れていた訳じゃないんだが、それが気に入らなかったのか……


「ごめんライム、お前をのけ者にしてた訳じゃないんだ……今度からは気を付けるよ」


 俺の言葉に満足したのか頭の上で跳ねるのを辞めたライムはそのまま肩へと降りて来て今度は甘えるように擦り寄ってくる。

 声は何とか我慢できたが……こ、これはある意味辛い。


「羨ましい……」


 そしてクリエは何を言っているんだ? しかも真顔で……


「と、とにかく俺達3人じゃ出来る事は限られる。この街で新しい従者を得たいのは変わらないんだ」


 それもクリエを守る為の従者だ。

 従者になれば事が済んだ後はそれ相応の報酬が貰えるかもしれない。

 だが、それを狙う様な奴は要らない……必要ないんだ。

 だからこそ、これからの従者選びがより難しくなってくる。

 事実を知ってもクリエの力を使わせないと言ってくれる人物じゃなきゃ……

 だが、死の運命が待っている人を救うなんて事、賛同してくれる人はいるだろうか?

 ましてや、そのお陰で今まで世界が救われたのならそれで良いじゃないか? なんて言われるかもしれない。

 いや、だからこそあの3人を選んだんだろ俺は……

 仕方ない従者の問題は考えておこう。

 それよりも――


「とにかく、明日様子を見ていけそうなら王様に会いに行こう」


 あれからもう3日……残りは2日ある。

 とはいえ、ギリギリに行くようじゃ向こうも気分が良くないだろう……というか相手は王様だ。

 でも――


「は、はい……ごめんなさい」

「気にするな、ただ体調優先だ」


 そう言ってしまう俺はクリエに甘いのかもしれない。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ