436 坑道へ向けて
「水薬は持ったし、毒消しもある……これで大丈夫だね」
「はい、問題はないはずです」
チェルとクリエはそれぞれ荷物をチェックしてくれていた。
俺は地図とにらめっこだ。
魔大陸は初めてだからな、少しでも地形を見ておきたい。
そう思ってファリスに聞きながら地図を見ていたわけだ。
「でこの港町はここか」
「うん、魔王の城はここ」
ファリスが指を差したのは魔大陸でも険しい山らしき場所だ。
「いかにもって場所だな」
俺は思わずつぶやくと頭の上でライムがぴょんぴょんと跳ねていた。
そういえばご飯の時間だ。
「っと、お腹空いたよな、ほら」
催促されていることに気がついた私はリンゴを手に持つとライムは待ちきれなかったのだろう。
渡すよりも先に手にまとわりつきリンゴを取り込み始める。
すると満足したのか掌の上でプルプルと震え始めた。
こいつは……本当にかわいいな。
それに仲間としても頼りになる。
「さて……それで俺達が行く場所はっと……」
改めて地図に目を落とすとファリスがそこを指さしてくれていた。
かつては頻繁に採掘がおこなわれていたという坑道。
だが、ロックイーターが現れてからは人が寄り付かないという。
ロックイーター自体はそれほど強力な魔物ではないはずだ。
突然変異のジュエルイーターであれば特殊な能力ああるかもしれないが……。
「なんか引っかかるな」
特にこの大陸の人々は力こそすべてなわけで……。
魔物が出たら倒せばいいと考える人が多いはずだ。
なのにその坑道には人が寄り付かない。
「……もっと別の何かがあるんだろうね」
トゥスさんはため息をつきながら近づいてきた。
手には手入れをしたばっかりの銃を持ち、しばらくいろんな角度から見つめていたが満足する物だったのか腰へと収める。
そして、タバコへと火をつけると顎で俺に火を催促した。
「フレイム」
魔法で火をつけてやるとゆっくりと息を吸い、紫煙を吐き出し……。
「臭い」
ファリスは思いっきりしかめっ面をした。
確かにタバコは良い匂いではないが……。
「この香りがたまらないんじゃないか、まぁお子様には分からないだろうね」
挑発するようにそう言うと地図へと目を向け。
「さっきも言ったけど、他の原因はあるはずだ。用心しておくに越したことはないよ」
低い声で忠告をされた。
「ああ、分かってる」
じゃなきゃ人が近づかないなんてことはないだろう。
ロックイーターより恐ろしいモノがいる、もしくは人がいるはずだ。
「さぁ、向かおう」
俺は地図を確認した上で仲間達にそう告げる。
すると彼女たちは頷いた。
そんな中、一人悩んでいた少女は……。
「そうですね、キューラちゃんのためです!」
胸の前に両こぶしを持って来ながらそんな事を口にする。
いや、君を守るために俺は武器を手にいれるんだけどな?
まぁ、本人がやる気になってくれている文には良いのか……。
そう思いつつ、彼女へと告げる。
「クリエのためだよ、そこは間違えないでくれ」
すると暫くキョトンとした後に彼女は赤くなり……。
「うへへへ……」
と笑う。
うん、やっぱりこの勇者……笑い方で大分損をしているな。
まぁ、可愛いといえば可愛いんだが……。




