435 買い物
俺達は鉱石を手にいれるために教えられた場所へと向かおうとするが……。
しかし、その為に準備が必要だ。
「はいよ、ポーション一個5000ケートだ」
「は?」
この魔大陸ではまともに買い物すらできない。
相手は俺達が女性中心……いや、今は俺もそうか、とにかくそう見て値段を吹っかけてきているのだろう。
妙にその視線がいやらしいのが分かった。
「ならいらない」
「おいおい良いのか? 冒険には……」
確かに薬は必要だ。
チェルがいつだって魔法を使えるわけじゃない。
そんなことは分かっている。
だが、値段が値段だ……。
流石に法外過ぎる物を買うわけがないだろう?
そう思いつつ、店を去る……。
どうやらこの大陸ではそう言った店さえも自分というのを認めさせなければならないらしい。
「変な町だね」
「これが普通」
それはチェルとファリスの会話からも分かった事だ。
しかし、本当に変な場所だ。
力こそすべて……というのは前から聞いていた事だ。
だが、ここまでとは思わなかった。
「キューラちゃん、それでどうするんですか? 食糧だって……」
「現状まともに買い物はできない、相手は商人だ……見た目的にも戦いに優れてるわけじゃない、襲い掛かっても何かしらの策があるんだろう」
力こそすべて……そうは言ったものの単純に力だけで示す……それだけではなさそうだ。
なら、下手に刺激するのはやめた方がいい。
何より……。
「今は目を付けられたくない」
ただでさえ先ほどの騒動があるんだ……。
「ん?」
いや、待てよ?
先ほどの事があって、買い物に選んだここは離れた場所だ。
逆に近くであればどうなんだろうか?
「あっちに戻ってみよう」
「騒いだ方じゃないか……平気なのかい?」
「いや、もしかしたら……」
あちらでは買い物ができるのでは?
そんな事を考えながら向かってみることにした。
少し離れているから歩くことになるが……。
それでも何も買わずに町の外に向かうよりは良い。
「だ、大丈夫かな?」
「多分平気」
ファリスはこっち出身だし、彼女の言葉を信じてみよう。
港の方へとつくと早速道具屋を探す。
そこの店主は俺達を見るなり、目を丸めるが……。
「なんにしやすか?」
と丁寧な対応だった。
「ポーションに薬草……ほかにもロープとかも買い足したいんだが……」
俺がそう言うとうんうんと頷いた彼は……。
「ここら辺がおすすめですよ」
と言いつつ計算をしていき――。
「全部合わせて500ケート、いかがでしょう」
先ほどと比べても明らかに値段が違う。
だが……それでも高い。
そう思っていると表情に出てしまったのだろうか?
「な、なら450……いや300ケートでいかがでしょう?」
これはまた大きな値下げをされたな。
「値段変わり過ぎじゃないのかい?」
トゥスさんも流石にいぶかしんでいるが店主はにやけながら答える。
「いやぁ、姉さんはあいつを倒したんですよ? そりゃぁ値も下げますよ、へへへへ……今後ともごひいきにしてくれたら嬉しいです」
本当この大陸は力こそすべてなんだな。
「赤字じゃないのか?」
「いえいえ、姉さんがここで購入したと聞きゃ悪さする連中も減るでしょう? それに良い道具屋だって評判になる」
そうとは限らないんじゃないか?
「へへへ、今まだ噂が広がってないでしょうけど港の元締めがやられたと事実が今日中に流れやす、そうなりゃ姉さんに逆らうのは馬鹿ぐらいですよ?」
あいつはそんなに強かったのだろうか?
私はそうは感じなかったんだが……とにかく、今はその事に感謝しておこう。
「分かった見たところ問題もないし、安くなる分には文句はないそれで買うよ」
俺はそう告げると店主は笑みを浮かべるのだった。




