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434 条件

「素材があるのはこの町から南東……の洞窟だ。そこには特殊な鉱石がある」

「それが必要なモノ?」


 俺が訪ねると彼女は頷いた。


「だけどね、そこにはロックイーターが生息している……」


 なるほど……。

 これは一筋縄ではいかなさそうだ。


「準備だけはしっかりしていこう」

「そうですね」


 クリエは俺にしがみつくようにしていたが、どうやら洞窟に向かうのは賛成してくれたようだ。


「勇者ご一行なんだ、どの程度の実力か見せてもらうよ……この魔大陸は弱いものは生きていけない、そういう土地だからね」


 楽しげに笑う彼女に対し俺は目を向けて頷く。

 すると――。


「アタシは反対だね……」

「トゥスさん!?」


 腕を組んだトゥスさんは低い声でそんな事を口にする。


「何を言ってるの? ここまで話聞いて反対なんて……」


 チェルも行く気だったのだろう、にしても……この頃彼女がトゥスさんに対する態度がトゲトゲしい気がする。


「名前も名乗らないようなやつを信用できるかい? アタシには無理だね」

「名前教える必要ない……弱者には……特に」


 トゥスさんの言葉に対しそう答えたのはファリスだ。


「そういう事だね、弱いやつの知り合いだとか武器を作ったなんて言ったらうちの評判がガタ落ちだ。そっちの嬢ちゃんの事は面白いと思うし気に入ったよ、だけど名乗る気はまだないね」


 自ら名乗ることはなく、名前を知りたいなら実力を示せという事か……。

 中々にシビアと言うか……面倒な大陸だな。

 そんな風になっているなら……。


「その話からすると、聞いたら評判が落ちる可能性があるのか?」


 そんな事を尋ねてみると……。


「聞く必要なんてある? この世界では安易に名乗るのは危険だ、強ければそれでいい、だけどもし負けた日には……その武器を作った私まで被害を被ることになるからね」


 ああ……なるほど……理解できない。

 どう考えても俺は魔大陸にはなじめそうもない。

 まぁ、そこは魔王になってから変えてしまえば良い。


「ふん……」


 だが、当然そんな説明じゃトゥスさんは納得できないみたいだ。 

 それも仕方がないとは思うが……。


「トゥスさん、とりあえず今は――」

「ああ、分かったよ」


 溜息をついた彼女はシュターさんを睨む。

 とにかく、今はその鉱石を手にいれないといけないわけだ。


「それで、その鉱石ってどんなものなんだ?」

「自分で選びな……」


 それはないんじゃないだろうか? もし持ち帰ってこれじゃないとか言われるのは勘弁だ。


「自分の武器に使われる鉱石ぐらい選べないようじゃ魔王を倒すなんてことは不可能だ」


 いや、その理屈はないと思うんだが……。

 俺はそう思いつつも彼女はもう何も答えてくれないのだろうと察してしまった。


「それで目的の物を持ってこいってのも厄介だと思わないのかい?」


 トゥスさんが反論をしてくれたが、それに対してはチェルも頷いていた。

 すると――。


「ならこの話は無しだね」

「そんな――」


 更に食い掛ろうとするチェルを抑え、俺はシュターさんへと告げる。


「分かった鉱石は持ち帰るよ」

「それでいい」


 俺の言葉に満足そうに笑う彼女を見て……。

 彼女は武器を作るとは言ったが、俺が武器を作るに値するかを見られているのだろうなと感じた。

 とにかく、彼女を納得させなければこれからやることは無駄に終わる。

 だが、それでも質のいい武器が手に入るというのなら……。


「行こう、彼女を納得させる」


 俺にとれる選択はそれぐらいしかなかった。

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