433 気に入られたキューラ
俺は一人ではない。
そう確信した俺は前へと目を向ける。
するとそこに居る女性は笑みを浮かべ……。
「あはははははははは!! いいねぇそういうの好きだよ」
豪快に笑い始めた。
「え……あの……」
突然の事に俺は戸惑っていると、彼女は俺へと近づき頭に手を乗せようとし肩に手を乗せてきた。
おそらく頭にはライムが居たからだろう。
「武器、作ってやるよ」
「なんで?」
なんで突然? いや、武器を作ってくれるという話だったが……。
一応こっちは必要ないと言ったつもりではあった。
しかし、彼女には伝わっていなかったのだろうか?
「魔王を殺すかい、面白いじゃないか……それに乗ったよ。どんな武器でも作ってやる」
にやりと笑みを浮かべた彼女に対し俺は困惑する。
「なんで突然……」
そう尋ねると彼女は目を閉じ口元だけゆがませる。
「そうだね、あんたは魔力が高い、実力もある……度胸もね……もし本当に魔王を倒せるなら」
彼女はそう言うとゆっくりと瞼を開く。
「未来の魔王に名を売っておけば、商売になるからね」
なるほど……。
「でもキューラちゃんは武器いらないって言いましたよ?」
「何を言ってるんだい、魔王を倒すにはちゃんと武器が必要だろう? あんた達のもだ……そんな、ナマクラよりも立派なもんを作ってみせるさ」
彼女はどうやら主張を変えるつもりはないみたいだ。
だが……確かに武器が壊れたら必要だ。
この世界の武器は精霊石で強化できるため刃こぼれしにくかったりするが……。
武器が消耗品だという事は変わりない。
だとすれば……。
「たすかるよ」
よくよく考えれば今はいらないなんてことを考えず。
素直に好意を受け取っておくべきだったか?
ここが魔大陸だという事で警戒していたのかもしれない。
「ああ、ただし……必要なもんはあるよ」
「なんだい結局金をとるのかい? がめついねぇ」
「いや、そこまで露骨に嫌がらないでも良いでしょ?」
トゥスさんの言葉にチェルは突っかかるが……。
まぁ料金ぐらいなら……。
「いや、素材だね……武器の素材ぐらいは自分で集めてきな。質のいい武器ってのは素材の時から使い手を選んでくるものさ」
彼女はそう言うと口角を上げにやりと笑う。
そして、タバコを加えると火をつけ……。
「逆に言えばあんたらが素材を手にいれられなかったら、それまでの事……特別サービスで場所は教えてやるからさ」
なるほどな……一筋縄じゃ行かなそうだ。
「分かった、それでその素材は?」
どこにあるのか?
俺が訪ねると――。
「キューラちゃん……」
クリエは俺の服をぎゅっと掴んできた。
不安なのだろう……力こそすべてのこの大陸で何を要求されるのか……。
そりゃ俺だって不安だ。
だが――あの子が紹介してくれたんだ……それを無駄にはしたくない。
きっと俺の……俺達の役に立つはずなんだ。
「大丈夫だ、無理はしないよ」
俺はクリエに微笑むと彼女は目を丸め少し顔を赤らめた。
「……女同士で付き合ってるのかい? 変な連中だね」
「名前も知らない人にキューラお姉ちゃんをそんな風に言われたくない」
そういえば彼女の名前を聞いていない。
だが、ファリス……そんな突っかかるように話していたら素材の場所が聞けないだろう?
「ふん、別に関係ないけどね……さて、素材の場所だけどね」
あ、教えてくれるのか……名乗らないけど……。
まぁ、そこは後で聞くとして魔大陸は初めてだ……ちゃんと確認しないとな。




