426 夜の街道
真夜中の街道を進むのは怪しすぎる。
だが居ないというわけではない。
とはいえ普通に旅をするのなら、冒険者以外で好んで夜に外に出る者はいないだろう。
「さて、そろそろ行くか」
だが、俺達は外に行かなければならない。
それに対し、王は何も考えてないなんてことはないだろう。
その証拠に外に出ると馬車が用意されていた。
「へぇ……なるほどね」
トゥスさんはそいう言うとにやりと笑う。
相変わらず悪人っぽい笑い方だ。
そんな事を考えていると……。
「この馬車に乗り、整備の者として紛れ込むんだ……そうすれば街道で奴らに会っても避けられるだろう」
王カヴァリはそう言うと腕を組み頷いた。
王様自ら見送りとは……。
「キューラよ……これから先、お前が行く先は力こそすべての場所だ……」
「ああ、分かってる……」
そして、協力者はいない。
だからこそ、気を付けなければならない。
そんなことは分かってる。
何せ俺はクリエを守らなきゃいけないし……。
魔大陸に行く以上心配なことはある。
ファリスの事だ。
彼女は元々、魔王の手下だった……。
しかし、今は俺達の仲間だ。
仲間になった理由からしても向こうでは頻繁に襲われるはずだ……。
「……行こう」
俺はそう言い、馬車へと乗り込む。
仲間たちも乗り込んでいき……。
「では気を付けて行ってこい」
「ああ……行ってくる」
次に戻ってくる時は俺達が魔王を倒した時だ。
もし、負けた時は……考えたくもないな。
馬車は揺れ……夜の道を進む。
魔物が出てきたら俺達は基本的に対処はしないならしい。
そのために一応騎士もついている。
ありがたいことこの上ないが……。
「大丈夫か?」
「平気だと思うよ、だって冒険者の王で騎士王って言われている人の部下だし」
チェルの言葉にクリエも頷き。
「私もそう思います」
微笑みながらそう言った。
まぁ、二人が言うならそうだよな。
だが、いざとなったら戦う事には変わりがない。
気は抜かない方がいいよな?
港までは何度か魔物に襲われはした。
だが、俺達は外には出ない。
騎士たちはすごい勢いで敵を倒していくのだ……。
無駄のない動きだ。
「すごい……」
俺達にはない物だった。
仲間同士を信じることはある。
だが、彼らはそれ以上と言って良いだろう。
一人一人が、自分の傍に居る仲間のクセを掴んでいるとでもいうのだろうか?
例えば右側が少し不自由なのだろうか?
彼の右側には誰かが必ずいる。
そして、弱点から狙われることがあればすぐさま仲間が補助に入るのだ。
その事を知っているかのように彼自身も臆することなく攻撃を仕掛けている。
これがクリードの騎士……。
「まったく、頭がおかしい連中だね」
それはトゥスさんの口から聞こえた言葉だ。
だが、決して馬鹿にした言葉ではない。
そんなことはすぐに分かった。
「キューラしっかり見ておきな……こんな機会はもうないよ」
「ああ……」
俺は頷き彼女の言葉通り、騎士たちの戦いを目に焼き付ける。
これから魔王と戦うんだ……だから、吸収できるものは身に着けてやるさ。
それからしばらく進むと港にたどり着いた。
警備にはあらかじめ話はしているのだろう。
俺達はスムーズに船に乗り込んだ。
荷物はすでに運び込まれているようだ。
後は出港するだけ……。
そして、これで俺達は神大陸とは暫くお別れだ……。
「海の加護がありますように……」
俺達が出発する前にそんな事を伝えてくれた兵士が居た。
彼はにっこりと微笑む。
「行こう!!」
俺は自らそう言いながら船が進む先を睨んだ。
目指すは魔大陸……。
魔王を倒すための旅が今始まったんだ……!




