424 出発
「それで、入江は何処なんだ?」
「この町から南に行った町だ……」
彼が言う事だ恐らくはここから近いはずだ。
「どのぐらいでつく?」
しかし、確認は必要だ。
そう思い尋ねてみると彼は――。
「日が暮れる前につくだろう」
と言葉が返ってきた。
それなら明日の朝に出発して、船に乗り込めばいいか……。
そう思いつつ俺は仲間たちを見渡した。
「船は動かせるか?」
これは確認しなければならないことだ。
船を動かすには船員が居る。
だが、その技術を仲間が持っていればそれに越したことはない。
「……アタシに任せな」
誰もいないか……。
そう思っているとトゥスさんがそう口にした。
「助かる……」
頼むぞ、そう言おうとしたのだが……トゥスさんは腕を組みため息をついた。
一体どうしたというのだろうか?
「だが、航海士はいないだろう?」
ああ、そうか……航海士は必要だ。
料理はまぁクリエが居るとしても……。
そう思い仲間たちを見渡す。
チェルと目が合うと彼女は思いっきり首をぶんぶんと横に振った。
そうだよな……彼女は神聖魔法の使い手としては一流。
その上航海士の知識があるとすればチートもいいところだ。
「……とすると」
残るはファリスだ。
だが、ファリスは首を傾げている。
航海士というのをそもそも知らないのだろう。
「天候をよんだり、波でどの程度さらわれたりとかを見る人かな?」
俺はそう伝えると彼女はますます首を傾げるが……。
出来るってことはなさそうだな。
「そんな事、出来るの?」
こんな事を言っているからな……。
「航海士ならこっちのものを出そう、勿論船員もだ」
「そうは言っても……」
俺は彼に悪いと思った。
だが彼は首を横に振り……。
「船をだれが守る? そのためにも船員は必要だろう?」
ああ、そうか……確かにそうだった。
船を手に入れたとしても放置しておくわけにはいかない。
いずれこっちに戻ってくるんだしな。
とはいえ魔大陸じゃ腕の立つ人間が居なければ船は奪われて終わりだろう……。
「それで、その船員は腕のほうは?」
「安心しろ、この国の騎士の一部を貸そう」
ちょっと待て……それは嬉しいが……。
「大丈夫なのか?」
俺は王に思わず訪ねてしまった。
だってそうだろ?
騎士だぞ騎士……そんな簡単に貸していいのか?
そう思っていると……。
「何を言っている? ここは騎士王の収める国だぞ? いざとなったら私が守ればいい」
なんと言うか、すごい自信だな。
いや、彼の収める国の者である俺からすれば頼もしい事この上ないんだが……。
まぁ、彼が居るなら確かに大丈夫なはずだ。
なら……。
「分かった、ありがたく借りていくよ……」
これで船の手配は出来た。
後は……。
「いつ船に乗り込むんですか?」
クリエは首を傾げながら聞いてきた。
そう、問題はそれなんだよな……。
港ほど人がいるわけではないだろう。
だが、観光名所になっているという事は比較的安全で人も集まっているという事だ。
まぁ、物が物だから、集まってくるのは冒険者なんだろうが……。
その冒険者が俺達を狙う人達だったらアウトだ。
「夜だな……夜であれば、危険だという事で近づく事を禁止している。そのうちに入り込み明朝に出港する」
カヴァリはそう口にし、俺もその判断に頷くのだった。




