423 交渉
客室へと通された俺達は黙ってその時を待っていた。
ここに居るのは俺とクリエ、ファリス、チェルにトゥスさん……そしてライムだ。
部屋の中には会話がない。
当然だろう……皆疲れていた。
だからこそ、皆黙り込んでいたのだ……。
トゥスさんに限ってはなにか考え事があるみたいだが……。
何も言ってくれないからわかるわけがなかった。
そんな中、待っていると日が沈みかけたころに兵士に呼ばれ、俺達はカヴァリの元へと向かう。
彼は俺達の顔を見るなり立ち上がり、笑みを見せてくれた。
「よくぞ無事だった」
王様にそう言われるのは正直複雑ではあったが、彼なら本意だろう。
俺は頭を下げる。
すると――。
「よい、顔を見せろキューラ……」
「はい、今回は……いえ、今回も助けていただきありがとうございます」
彼には本当足を向けて寝れないだろう。
そう思っていると彼は難しい顔していた。
どうしたというのだろうか?
疑問を浮かべていると……。
「ああ、だがこのクリードにも捜査の手は伸びかけている……早々に手を打ちたいが……」
やっぱりな……。
恐らくこの神大陸では俺達が安心して寝泊まりできる場所はない。
勿論魔大陸だっていつ襲われるか分からないんだ。
安心できるか? と言われたらできないだろう。
だが……。
「実はその事で貴方に頼みがあるんだ」
俺は話を切り出す。
すると彼は座り――。
「なんだ? お前たちの頼みであれば大抵のことは何とかしよう」
彼は何を頼むかを聞かずに頷く……。
正直その返事には助かったとしか言いようがなかった。
だが、まだ分からない。
あくまで彼が出来る範囲でしか、頼めないのだ。
もし俺達が頼もうとしていることが無理ならば別の道を探すしかない。
「どうした?」
俺が黙っているとカヴァリはせかしてきた。
俺はゆっくりと息を吸い……。
「魔王を倒しに魔大陸へと渡りたいんです、どうか船を手配できませんか?」
そう尋ねると――。
「ふむ……港は無理だな……すでに港は封鎖されている」
その言葉を聞き俺はがっくりと項垂れる。
「待て、港はと言っただろう?」
ん?
「私が旅をしていた時に作った船がある。整備もさせているしまだまだ使い物になるだろう……だが……」
「それはありがたいですが……何か問題が?」
俺の横に立つクリエは首を傾げつつ、王に尋ねた。
「ああ……ここから少し町から離れていてな……」
「なんだ……それぐらいなら」
問題はないはずなんだが……。
そうすると彼は頷き。
「ああ、そこまで行くのは問題ないだろう……だが、この船の場所は隠し港なんかではない……私が旅を共にしたという名目でな……観光地にもなっている」
なん……だって……。
いや……そもそも俺は知らなかったが……。
それでも知っている者たちが居るという事はそこを探しに来る奴もいるかもしれない。
「じゃぁ……」
「ああ、奴らはそこに来る可能性もある」
そうか……なら……。
「荷物の積み込みは?」
「すぐに手配しよう……だが、たどり着いたらすぐに出なければならない……船の中に運べる食糧もギリギリだろう……」
彼はそう言うと……。
「下手をすれば足りないかもしれない……」
「それでも行くしかない、それが一番安全なんだからな」
表情をこわばらせていたが、俺はそう答えた。




