422 カヴァリの元へ
爺さんを置いてこなかったことに後悔しつつ、俺は王カヴァリへと謁見が出来ないか門兵に尋ねてみる。
「それで、話したいことがあるんだが……」
すると門兵は少し戸惑っていた。
いや、それはそうだろう。
いきなり来て王に会わせろと言うのは無理がある。
謁見待ちをしている人は沢山居るからだ。
「しばらく時間をいただいても大丈夫でしょうか?」
当然そんな返答が返ってくるわけで……。
俺は頷いた。
すると門兵はほっとしたような雰囲気で城の中を差す。
「では城の中でお待ちください」
「って、いいの? ほかの人も待ってるんじゃ?」
チェルは驚きそう言うが、門兵は頷く……。
どうやら大丈夫みたいだが……。
「残念ながら王は今忙しく、謁見の時間帯に会えないのです。でずので城の中で休んでいただき食事の時間にでもと……」
いや、それはありがたいんだが良いのだろうか?
「大丈夫なのか? 勝手に決めて」
俺は彼に尋ねると彼は首を横に振る。
やっぱり駄目なんじゃないか……。
そう思っていると……。
「とんでもない! これは王に言われていることです」
「……なら、遠慮なくそうさせてもらったほうが良いんじゃないかい?」
彼の返事を聞くなり、悪人じみた笑みを浮かべるトゥスさん。
これは恐らく……。
「当然、最高級の酒も用意してあるんだろ?」
やっぱりそういった事が狙いか……。
「ひ、必要とあれば用意いたしますが……」
当然門兵は困り果てていたが、ここでそんなのはいらないと言えばトゥスさんの事だ。
不機嫌になるに違いない。
本当にこの人はエルフなんだろうか?
いや、種族的にはエルフなんだが……。
やはりどう考えてもエルフには見えないよな?
「おい、キューラ人の顔を見て失礼なことを考えるのは止めてくれないかい?」
「…………とにかくそういう事なら入らせてもらうよ」
ここで反論しても無意味だ。
そう思った俺は門兵へと告げると城の中へと入る。
ふと不安になって後ろを振り返るとレラ師匠と爺さんは立ち止まっていた。
爺さんを師匠が止めてくれたのだろうか?
そう思っていたのだが……。
「我々はここらで失礼するとしようかの」
「……は?」
予想外の言葉が聞こえてきた。
なぜこんなところでそんな事を言うんだ?
「どうして?」
俺が訪ねるとレラ師匠は眉を顰め困ったような表情を浮かべた。
対し爺さんは……。
「レラの奴は町に戻って残った奴らを支えなければならん、わしはまぁ……根無し草じゃからなぁ、こう言ったところは苦手じゃ」
爺さんはそう言うと笑いながら俺達へと背を向けた。
レラ師匠はやはり困ったような表情を浮かべていたが……。
「まぁ、そう言う事だ」
「……わかった、でも、気を付けてくれよ師匠」
いくら強いといっても人一人で出来ることは限られている。
ましてや今あそこは敵だらけだろう。
心配じゃないと言えばうそになる。
だが、置いてきたフリンの事も心配だ……。
それに何より彼女を止める権利は俺にはないからな。
「それじゃ師匠、またな」
俺は頭を下げそう伝えた。
彼女には感謝をしている。
ここまで一緒に来てくれたことも……技を教えてくれたこともだ。
だが、彼女としてはノルンの生きた町から離れたくない。
そう思って当然だろう。
だからこそ、俺には止められなかった。
いや、止める権利なんてないんだ……。
俺はそう思い、振り返るとほかの仲間を連れ城の中へと入っていく……。
これを終わらせるには俺達が魔王を倒すしかない。
そして、この新大陸に平穏をもたらすしかないんだ。
英雄でも勇者でもないとは思っていたが……。
それでもやるしかないんだ。




