421 クリード到着
魔物を倒した後は処理をし、クリードへと向かう。
騎士王と名高いカヴァリならきっと何とかしてくれるだろう。
そう思って向かっていた。
勿論、かくまってほしいわけではない。
目的は魔大陸へと向かう事だ。
そして、クリエにとって安全な世界を作る。
それが今俺達がすべきことだ。
そうこう考えている内になつかしい街へとたどり着いた。
だが、油断はできない。
物陰に隠れた俺達は門を睨む。
どこに別の国の奴が潜んでいるか分からないからだ。
連絡手段さえあれば、カヴァリに連絡を取れるんだが……。
あいにくレムスは今いない。
ライムでも手紙を届けることはできるが、スライムの使い魔なんて珍しいからな。
あっという間にばれてしまうだろう。
「さて、どうしたものか……」
俺は思わずそうつぶやいてしまった。
すると溜息をついたチェルに頭を叩かれる。
「キューラちゃん……」
「な、なんだよ」
何故頭を叩かれなければならないのか?
そう思っていると彼女は顔を近づけてきた。
いや、確か彼女にも俺が男だったってことを言ったような気がしたが……。
なぜそこまで近づく?
「こんなところで迷ってても仕方ないでしょ? ほら行こう?」
「は、はぁ!? いや、敵がどこに居るのかもわからないのに危険だって!!」
俺には仲間を守るって言う大事な役割もある。
そう言いかけたところで彼女は半眼になり俺を睨んできた。
そりゃ……カインの事は守れなかった。
そんなこと分かってるんだ……。
「そんな顔しない」
そう言われてもどんな顔をしているのかが分からない。
「キューラちゃん、大丈夫ですよ」
そう言って抱き着いてきたのはクリエだ。
だが、振り払う事すらできなかった。
そんな事をすればショックを受けるだろうし、何よりそんな気力もなかったんだ。
「ここで待ってた方が状況が悪くなるって思わない?」
「確かにそうだね、今のところアタシたちは死の山に入ったって言われてるだろうしね」
ん?
いや、だがあそこは……。
「忘れたのかい? あそこは入ってはいけないっていう話はないんだよ、死の山と恐れられてるだけさ……」
「……あ」
確かにそうだ。
あそこに何があるか知っている人はいるかもしれない。
だが、それは極めてまれなケースだろう。
何故なら危害を加えようとする人間は入れず、入れてもそう考える人間は出れないのだから……。
チェルやトゥスさんの言う通りだ。
こんなところで腐っている方が時間がもったいない。
「行こう」
俺達はもう堂々と入るしかない。
それに考えてみればいくら俺達を探すためとはいえ、国境には検問がある。
それを優先して受けさせるというのは自国ならともかくこっち側の兵には通じないだろう。
無理やり押し通ればそれこそ戦争のきっかけにもなりかねない。
なによりクリードは騎士王が納める国だ。
戦うのは得策ではない。
二人の言葉のお陰ですっかり忘れていたことを思い出した俺は仲間を連れ門へと向かう。
そして、検問を受ける列へと並ぼうとしたのだが……。
一人の兵士は俺達へと目を向けると……。
「貴女達は……! どうぞ、こちらに」
と手招きをしてきた。
いったいどういう事だろうか?
疑問に思っていると彼は笑みを浮かべ……。
「王より、貴女達が来られた際は検問は不要だと伝えられています。王の友人を待たせるわけにはいきません……さぁ、どうぞ」
どうやら、カヴァリがあらかじめ手を回してくれたようだ。
彼に感謝をしつつ俺は兵へとお金を支払う。
これは変わりのない事だ。
兵もそれはそれと考えているのだろう。
しっかりと受け取ってくれた。
列からは視線を感じるが、ここでたじろぐのも変だ。
堂々とし、俺達はクリードへと戻った。
すぐに休みたいところだが、まずは王のところに行こう。
先についているのであれば、話を色々としておきたい。
そして、魔大陸へと渡る術を手に入れる事が出来ればいい。
そこまでうまくいくとは考えてはいないが……今は頼る人が彼ぐらいしか……居ないんだからな。




