表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
440/490

420 コボルト

 街道が進めない。

 その理由は簡単だ。

 街道を進めば当然誰かと鉢合わせになる。

 俺達がこっち方面に来ているのはばれてるだろう。

 なら、国境を越え、こちらを確認する。


 俺ならそうする。

 だからこそ、街道は安易に向かえないのだ。

 そうなれば当然……。


「コボルトだ!」


 俺は前に居る犬……いや、オオカミの魔物を見つけた。

 人型でもあり、群れを成す。

 俺が最初に戦った魔物で……。

 カイン達と出会うきっかけになった魔物だ。


 雑魚とされる魔物……。

 しかし、油断はできない。

 魔物は魔物だ……油断は命取りになる。


 冒険者に多い死因……。

 それは知識の無さは勿論だ。

 しかし、原因は多くある。

 その一つに……。


「油断するんじゃないよ! キューラ!!」

「ああ!!」


 知り過ぎているからこその油断。

 どんな状況でも油断はしてはいけない。

 俺は……もう仲間を失いたくはないんだ!


「行くぞ!! クリエ、ファリス突っ込むぞ!!」


 俺達は武器を構え前を走る。

 接近戦を得意とするクリエとファリスじゃ今の位置は厳しい。

 一方俺は遠近両用だ。

 だが、一緒に行く理由は勿論ある。

 おそらくコボルトは奥に群れがある。

 なら援軍はすぐに来てしまうはずだ。


 そうなったら範囲攻撃のないクリエは不利だ。

 ファリスが居ると居てもどのぐらい対処が出来るかもわからない。

 なら、俺もついて行った方が良い。

 後方にはチェルもトゥスもいる。


 チェルは神聖魔法の使い手だ。

 攻撃魔法だって使えるはず……そして、トゥスさんは強い。

 文句なしにだ……。


『ガルァァァァァァァァァ!!』


 魔物は咆哮を上げ俺達を睨む。

 だが、襲い掛かってこない。

 という事はやはり先ほどの咆哮は……仲間呼びか……!!


 なら、俺は足を止めて魔法を――!!


「やっぱり仲間が居ましたか!!」


 クリエはそう言うと手に持った剣を握る手に力が入る。

 そう言えば彼女が戦うのは久しぶり、だったか……。

 緊張するのも無理はない。

 いや、彼女は暫く戦う事から避けていたんだ。


「クリエ、無理はするなよ!」


 俺はそう言うとコボルトたちを睨む。

 そもそも、クリエやファリスに無茶をさせる気はない。

 なら、方法はただ一つ。

 奴らを一掃する。

 そのやり方は単純だ……。

 しかし、ここには影がない。

 だが、そんなのは大した問題ではないんだ。


「グレイブ!!」


 石を飛ばす魔法。

 単純だが初歩魔法の中で一番扱いやすい物だ。

 そして、俺はその初歩魔法を何度も使ってきた。

 魔法ってのは単純に強い物を選べばいいわけじゃ無い。

 そもそもそれだったら俺一人突っ込んで防御をライムに任せればいいだけだ。

 しかし、そうやるわけにはいかない。

 というか、ライムは何処に行ったんだ?

 俺は魔法を放った後に気になって辺りを探してみる。

 するといつの間にかクリエの頭の上にライムが居た。

 

 人の頭の上が好きなのかあいつは……。

 そう思いつつも、きっとクリエを守ってくれているのだろう。

 俺が望むことをやってくれている頼もしいやつだ。


「……ら、ライムちゃん!?」


 事実、久しぶりの戦闘で体が慣れていない彼女の身を守ってくれていた。

 相手にスライムが居ると分かり、焦り始めた魔物たち。

 当然だろう……この世界においてなんでも溶かすスライムというのは強敵だ。

 そもそも弱点がほぼ無いと言って良いんだからな……。


『がる!!』


 コボルトは倒れた仲間達を見て動ける者だけで逃げていく。

 まだ息があるものも置いて行った。

 助けないのは自分たちの命を優先したんだろう。

 だが、なんか悲しいな……そう思ってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] スライムつおい
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ