415 結界魔法
「結界か!?」
いや、でもまさか……だ。
結界魔法というのは勇者だけが使える。
その証拠にどんなに調べても学校じゃその存在は明らかになっていなかった。
クリエと出会い街にそれを施してくれたからこそ分かったものだ。
だというのにどういうことだ?
俺が疑問を思い浮かべていると彼はニヤリと笑う。
「実はここで生まれたものの中に転生者と名乗る男が居た」
「……へ?」
また転生者か?
いったいどうなってるんだこの世界は……。
「彼はひ弱であったが、知識は子供とは思えないほどだったらしい」
「どういうことですか?」
チェルは胡散臭そうな話に警戒しているのだろう。
どこかとげとげしい言い方だった。
そりゃそうだろう……。
いきなり転生者なんて言葉を出された日には普通の人なら、頭おかしいんじゃ? なんて考えてもおかしくはない。
「そのものが言うには結界魔法という物があるはずだと……そして、それは他の転生者が知っているのでは? とな」
ああ、まぁ……。
魔法がある世界から来たなら持っているかもしれない。
この世界では前世の知識は使えるらしいからな。
とはいえ、体はこの世界に適応しているわけだ。
同じように使えるかは分からない。
かなりの賭けだぞ……それは……。
「それで?」
トゥスさんも呆れたようにため息をついている。
まぁ、普通の反応だよなぁ……。
「見つけたのだ」
「でも、結界は私達勇者の力ですよ?」
クリエもにわかには信じられないと言った風だった。
そりゃ勇者本人しか使えない魔法を転生者なるよくわからない素性の人が使えます。
なんて言われたらなぁ。
「おそらく似たような違う魔法だろう、事実この町には魔物すら入れん」
敵意のないというのは絶対条件なんだろう。
その証拠にライムはここに居る。
しかし、ここにきてまた転生者か……。
俺も含めここには様々な転生者がいるようだ。
日本でも前世の記憶を持った人がいるなんてバラエティ番組があったが……。
それとは違い異世界単位でそうそうこんなに転生者が重なることがあるのだろうか?
ただ唯一分かっていることはある。
ラノベのように俺強い! なんてことは出来ないというのは俺と同じなんだろう。
じゃなきゃ勇者の奇跡なんて必要ないしな……。
だが、以前の知識をうまく利用することはできる。
その結果あの本は出来たんだろう。
だが、そうなるとあの本もチート魔法なんてことはないはずだ。
恐らく俺の知らない魔法を使ってくる転生者はいるだろう。
そして、更にはそいつが仲間になるとは限らない。
下手をしたら敵として現れる。
いや、それだけじゃない。
もしかしたら魔王すら転生者の可能性もある。
まぁ、そう言っても転生者が強力なわけじゃ無い……。
しかし……結界なんて強力魔法を使える人間は仲間に欲しい。
何せもうクリエは魔法を使えないんだからな。
「どうしたんだ?」
「いや、なんでもない……」
俺はそう言った後、本来の目的であるヘレンたちをここで預かってもらえないかを尋ねることにした。
「それよりも、ここでヘレンとイリスを預かってもらえないか?」
すると彼は腕を組み。
悩み始めた。
そりゃそうだろう……。
いきなり、仲間を預けるって言われるのだから誰だってそうなるだろう。
「なぜだ?」
「理由は彼女たちが旅に慣れていないのと安全な場所に居てほしいからだ」
クリードに戻れば安全かもしれない。
だが、あくまでかもしれないというだけだ。
クリードも国である以上、建前というのがあるんだからな……。
「それでいいのか?」
「ああ、ここなら安心だからな」
そう言うと彼はゆくっりと頷いてくれたのだった。




