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408 危険な山登り?

 塞がれてしまった道を見つつ俺はため息をつく……。

 無事だったのは良い。

 だがこれで山頂にどうしても向かわなければならなくなってしまった。

 ほかに横道があればその必要もないだろうが……。

 この先につながっているかは分からない。


「……道を探しつつ行くしかないか」


 安全に岩を壊せる手段があればそれでいいんだがそうはいかない。


「うん、その方が良いと思う」


 チェルは俺の言葉に頷き、他の仲間たちも頷いた。 

 流石のトゥスさんも岩を壊して先に進むなんて言う無茶は言わなかった。

 俺達は山道を進みながら横道を探す。

 だが、不思議なことに横道は見つからない。

 普通なら見つかりそうなもんだ。

 だというのに何もない。


 ただ登っていく道しかないのだ。

 おかしい? そう思いつつそれも仕方がないかとさえ思ってしまった。

 ここは死の山ともいわれる場所だ。

 人の手が入っていない。

 そう、人があまり入らないからこそ道が整備されていない。


「それにしては……おかしいですね」


 しかし、違和感を感じた。

 そして、それはクリエも感じたようだ。

 山道を登るのは容易ではない。

 ましてやろくに整備をされていない足場の悪い場所を登ることになる。

 そう思っていたんだ。

 だが、俺達が今歩いているのは明らかに人の手が入っていた。

 何故だ? どうしてこんなに綺麗になっているんだ?


 それに、さっきから魔物に出会わないのもおかしい。

 動物はいる。

 それは間違いない。

 だが、襲ってくるような魔物ではない。

 一体ここに何が起きてるんだ?

 いや、そもそもここはこれで普通なのだろうか?

 そんな疑問を感じつつ俺達は再び驚いた。


「なん、ですか……あれ」


 ヘレンが指をさし驚いているのは魔物が居たからじゃない。

 相変わらず平和な光景が広がっているだけだ。

 いや、相変わらずではないか……。

 そこには休憩所のようなものがあった。

 明らかに人の手が加わっている。

 それだけじゃない、そこには当然のように人がいるんだ。


「いらっしゃい!」

「……なんでこんなところに?」


 俺は思わず口にする。

 恐ろしい魔物なんていない。

 それどころか安全だ! だってのに世間では危険な道と言われている。

 何故そんなことになってるんだ!?


「あ、あの……」


 俺達が疑問を抱えているとチェルが店員の男性へと声をかけた。


「ここって危険な山……ですよね?」


 そう言うと彼は目をぱちくりさせ、大笑いをし始めたのだった。


「ああ、そうさ! 登った者は帰ってこない危険な山だ!」


 そうは言うが何故そんなにこやかなんだ?

 意味が分からない。

 俺は首を傾げ悩むと彼は笑いながら答える。


「だが、それはあくまで外の話だ」

「え?」


 俺達は同時に呆けた声を出す。

 いったいどういう事だろうか?


「確かにここは死の山……だが、あの方が変えてくれた……ここは私達の村、いや、町だ」


 彼はそう言うと遠い目をしながらゆっくりとした動作で山道を指さした。


「迫害されし者達よ……この先は険しい道だ。しかし、我々の町は君達を受け入れよう」

「……どうだか」


 トゥスさんは信用できないのだろう。

 そう言っては信じられないと言った風に表情をゆがめた。

 すると彼は笑い。


「ははははは! 話に聞いた通りのお嬢さんだ」


 その言葉にびくりと反応し彼を睨んだ。

 トゥスさんの事を聞いたことがある? 一体どういうことだ?

 彼女はここに来たのは初めてだろう。

 だとしたら、なぜ彼が知っている?

 しかも彼女をよく知る人物から聞いたような感じだ。


「まて、なんで……」


 俺が聞こうとしたら彼は真面目な顔になり……。


「それはこの先に行けば分かる」


 それだけを言うともう何も言う必要はない。

 そう言うかのように黙ってしまった。

 一体何なんだ?

 俺は疑問に思いつつも山道を見つめる。


「どうするんだ?」


 そう言ったのはレラ師匠だ。

 どうする、か……。

 もし本当にこの先に安全地帯があるなら、俺はそこに行きたい。

 逃げたいというわけではない。

 イリスとヘレンの二人の事だ。

 このまま連れて行けば確実に危険だ……。

 俺達が危険ではない、彼女たちがというわけだ。

 何故ならこのままではきっと彼女たちは力尽き、追手に襲われそのまま死に至る。

 そんなことは分かっている。

 だからと言って今までは置いていくことは選択肢になかった。

 俺達が居なければ彼女たちは死ぬよりもひどい目に遭っていたかもしれないからだ。

 だからこそ、俺は……。


「行こう、本当に安全な場所があるなら……俺はそこにかけたい」


 勿論うのみにするわけじゃ無い。

 だが、彼は信じても良い……そんな気がするんだ。

 何より……山道を見つめていると何かに呼ばれる気がする。

 これは先ほどチェルが感じたのと同じだろうか?

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