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406 クリードに抜ける方法

「さて……」


 その日の夜、俺は仲間たちに話をすべく焚火の前に集まってもらった。

 改めて話をするからだろう、彼女たちはじっと俺を見ている。

 そう注目されると変に緊張してしまうんだが……。

 まぁ、そこは良いだろう。


「それでこれからの事なんだが……やっぱり、町には当分入れない」


 それは今日のあの襲撃で分かったことだ。

 そして……。


「町の近くに近寄ることも危険だ……それに、巡回してるだろう範囲に入るのもだ……」


 普通魔物退治というのは冒険者の仕事だ。

 だが、兵に余裕がある町は兵にもさせている。

 その理由は勿論金が浮くからだ……。

 どっちにしても冒険者は賞金稼ぎのようなこともする。

 現状俺達は魔物退治並みに美味しい収入源にされてしまう可能性もある。


 それだけじゃない。

 犯罪者という事は死んでも生きていても関係ない。

 体の一部……それも本人だと分かるものがあれば十分と考える連中だっている。

 そうじゃなくても女性だらけのこのPTは危険だ。

 

 捕まってそのままなんてことも十分あり得る。

 勿論抵抗できるものは殺されるだろう……。


「補充もできない、足手まといは置いていけない。それでどうするんだい?」

「トゥスさん、そんな言い方ないだろ?」


 俺も今の言葉には流石に頭に来てしまった。


「ほかに何か言いようがあるかい?」

「イリスは監獄の町で俺達を助けようとしてくれた。それにヘレンだって協力をしてくれていた……なのに足手まといだ! なんてあんまりじゃないか?」


 そう言うと流石に彼女は黙り込んでしまった。

 それは苛立ちか、それとも考え直したのかは分からない。

 だが、それでも足手まといなんて言葉は何度も使ってほしくはなかった。

 それに……恐らくそれを一番理解してるのは彼女たちだ。

 だからこそ俺はその話題はこれで終わりとばかりに何も言わないようにし……。


「話を戻そう、だからクリードに行くためには……」

「国境を越えられんという訳か」


 爺さんの言葉に俺は頷く……。


 国境には二つの国の兵が居る。

 片方の国に犯罪者の情報が行ってなくても自国の兵にさえ情報が伝わっていればその場で協力をし取り押さえられるからだ。

 逆に情報がなくてもそうすれば犯罪者が入国する可能性が未然に防げる。

 だが……今はそれが逆に厄介になっている。


「だから安全にクリードに行くためには……こっちのルートだ」


 俺は新たな道を示す。

 それは近道でもあった。

 だが……。


「ちょ、ちょっと待ってキューラちゃん!? このルートは……」

「危ないな……だが、他に道はない」


 俺がそう言うとチェルは不安そうに顔をゆがめる。

 だが、それでも行くしかないんだ……。

 学校で近づくなと言われた場所だ……だが、ここしかない。


 そこは強力なアンデッドが居るという話の山だ。

 山頂には花畑があり、昔は人が頻繁ではないものの訪れていたらしいが……。

 ん? 花畑にアンデッド……? なんか引っかかる気がするが……。

 まぁ気のせいだろう。


 だが、このルート変更は正しいとは思う。

 なぜなら、先ほども思った通り、強力なアンデッドが居るという話だからだ。

 つまり、人が近づかない。

 冒険者がアンデッドを退治しようと入り込んだという話は聞くが……。

 そのまま帰ってこないなんて言う事も聞いた覚えがある。

 それだけならここを通ろうとは思わない、だが、それでもこの道を進むには理由があった。


「ここは元々山頂までの道はあるはずだ……勿論クリード側からも、うまくすれば向こう側に越えられる」

「それは聞いたことあるけど……」


 そう、通るだけなら抜けていけるという話だ。

 どうしても関所を通れない闇商人なんかがここをよく使うという話……。

 それもあり、学校では避けて通るようにと言われていた。

 だが、確かに通れるという証明にもなっている。


「……行こう」


 トゥスさんの方へと目を向けるが、流石に彼女も関所を通ろうなんて言う愚策は言わなかった。

 ただ黙って話を聞いていただけだ。

 するとそれを見ていたレラ師匠は……。


「不満だったら来なくてもいいぞ」

「それが出来たら簡単だけどね」


 苛立ったような師匠の言葉に呆れたようなトゥスさんの返事。

 このまま喧嘩にならないか、心配ではあったが流石にそうはならなかった。

 ほっとしつつも俺は地図をしまうと……。


「それじゃ、今日のところはしっかり休むんだ……良いな?」


 念を押す様にイリスとヘレンにそう伝えた。

 この度はどれだけ二人の体力を持たせるかだ……。

 俺には二人を見捨てる気なんてない。

 だからこそ、しっかり休んでほしい。

 そう思って口にしたんだが……。


「見張りぐらいなら……」


 と言い始めたのはヘレンだ。

 イリスの方は俺のいう事を理解してくれたのかもう寝る準備をしてくれていた。

 しかし……ヘレンは近づいてくると……。


「できます!」

「だめだ……ちゃんと休んでくれ」


 俺はそうはっきりと伝えた。

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