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405 追手

「逃がすな! 追え、追え!!」


 そんな声が後ろから聞こえてきた。

 これは本格的にまずい……。

 奴らは間違いなく追手だろう。

 このままじゃ追いつかれる!!

 何か手を、手を打たなければ……。

 そう思いつつも俺はイリスを抱えているし、レラ師匠もヘレンを抱えている。

 師匠はともかく俺は皆から離れていく……。

 追いつけない。

 このままじゃ俺は捕まる。

 そうなれば皆が助けに来ることになってしまうだろう。


 トゥスさんは……もしかしたらそうしないかもしれないが、他の皆は絶対に助けに来てしまう。

 それはだめだ! それをしてしまえばきっと……ここで皆死んでしまう。

 それだけは避けなければならない。


「っ!」


 俺が後ろを振り向くとそこには迫ってきている冒険者や兵。

 間違いない。

 俺達を狙っている。

 くそ!! このまま捕まってやるものか!!


「凍てつけ!! アイスアロー!!」


 俺は魔法を唱え、それを地面へと突き刺す。

 瞬く間に凍った足場は奴らの足を取り滑らせた。

 これで少しは時間を稼げた。

 だが、相手は蛇とは違い人間だ。

 このままじゃだめだ……。

 しかし、クリエはきっと殺しは望まない。

 殺すだけなら簡単ではある。

 でもそれじゃだめだ……。


 彼女のためなら何でもするつもりではあるが、彼女が望まないことはしたくない。

 矛盾しているがそれでもだ!!


 俺は振り返ると奴らが起き上がる前に対策を打つ。

 簡単だ……殺さなきゃいい……。

 だから……。


「アースウォール!!」


 奴らと俺達の間に岩の壁を生み出し、俺は再び走る。

 だが、一つ作っただけではだめだ。


「……アース! ウォール!!」


 走りながら魔法を唱え続け、どんどん後方に壁を作っていく。

 俺は蛇足しながら横に壁を作り続け……。

 やがて聞こえていた声は遠くなっていった。

 何とかなったようだ。

 だが……。


「キュ、キューラちゃん……大丈夫?」


 抱えているイリスは俺を心配している。

 俺は頷き……。


「修行してなかったら体力が追い付かなかったかもしれないな……」


 と口にした。

 すると彼女はきょとんとしつつも……ゆっくりと顔を赤く染めていく。

 一体どうしたのだろうか?


「あの、もう、いいよ?」

「ん?」


 何が良いのか? そう聞こうとして俺は彼女を抱えたままでいたことに気が付いたのだった。

 慌てつつ、ゆっくりと地面へと彼女を下ろす。

 すると彼女は顔を少し赤くしながら服の乱れを直す。

 そんな様子を見ていた彼女たち二人はそれぞれ違った反応を見せた。


「うへへ……照れてるイリスちゃんが可愛いです。うへへへへへ……」

「チッ……私も抱っこされたいのに……」


 うん、その彼女たちとは言うまでもない。

 言うまでもないがクリエとファリスだ。

 というか……クリエはいつも通りだな。

 ファリスの方は不機嫌になってないだろうか?

 俺は不安になりつつ彼女の方へと目を向ける。

 すると当然目が合うわけで不安になったが、俺の不安など気にするなというのだろうか?

 彼女は微笑むと子供らしい笑みを浮かべた。


「と、とにかく追手は撒いたんだ……先に進もう」


 俺はそう言うと再び歩き始める。

 クリードの領までもうすぐだ。

 このまま何もなければいい。

 そう願ってはいるが何があるかは分からない……。

 何より……俺達には不安がある。

 そう思いつつ、俺はトゥスさんへと目を向けた。


「安全じゃ……なかっただろ?」

「結果論だね……」


 まぁ、それはそうなんだが……。

 彼女はどうも納得できないようだ。

 でも、それでも危険だと分かっている以上、二人を置いてはいけない。

 足手まといじゃない! なんて言い切ることは勿論できないが、それでもだ。


「ごめんね……」


 俺の心は顔にでも出ていたのだろうか? 不安そうな声を上げるイリス。

 慌てて首を横に振ってこたえる。


「謝る必要はない、イリスは助けようとしてくれたろ?」


 そう、あの監獄の町で彼女は俺達を助けようとしてくれた。

 その事は忘れたなんてことはない。

 恩があるんだ……彼女を見捨てることは元からできやしないんだ……。

 だから……。


「ほら、立ち止まってないで行こう」


 歩みを止めてしまった彼女へとそう伝える。

 そして、俺は手を伸ばした。

 彼女は少し戸惑ってはいたが……。


「キューラお姉ちゃんの好意を無駄にするの?」

「ぴぃ!?」


 そして、ファリスさんが怒っていらっしゃる。

 さっき俺が抱っこしていたことが気に食わないのだろうか?

 今度してあげてご機嫌を取ったほうが良いかもしれない。

 そう思っていたが、怯えた様子のイリスは首をぶんぶんと横に振り……。


「い、行きます! 行くから!?」


 と慌ててついてきた。

 その様子を見てほっとするクリエとチェル。

 爺さんは成り行きを見守っていて、トゥスさんは舌打ちをした。

 レラ師匠はそんなトゥスさんを睨み……ヘレンの方は不安そうだが、まだ大丈夫みたいだ。

 しかし、こんなバラバラなPTで大丈夫だろうか?

 少し不安になってきた。

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― 新着の感想 ―
[一言] 安全な場所に着いたら添い寝とかしてなだめないと……
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