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403 氷の魔拳

 解き放たれた氷の矢は二人を喰らおうと開けた口……。

 それを縫い付けるように顎の下から現れた。

 任意の位置に魔法を発生させる。

 だんだんとモノにできてきたそれに感謝しつつも地面へと足をついた俺は二人の元へと走っていた。


「立てるか!?」


 焦る理由は勿論、蛇だ。

 蛇は俺達を睨み怒りをあらわにしている。

 ドラゴンのなりぞこないと言われるだけあってやはりタフだ。

 そう思いつつもなんとか動ける二人を後ろへと下げる。

 さて、どうする?


 確かにドラゴンに似ていてはいても蛇は蛇。

 火を吹けるわけではない。

 だが、それでも十分に脅威だ。

 何せ蛇はドラゴンより動きが速い。

 だからこそ、動きを鈍らせたぐらいだ。

 だが、この距離だったら結局それも意味がない。

 ましてや俺だけなら逃げれるとしても二人が無理だ。


 倒すしかない!


 だが、どうする?

 強力な魔法は詠唱が必要だ。

 しかし、中途半端な魔法じゃ今みたいに致命的なダメージは与えられない。

 顎下から貫通してもぴんぴんしているのには突っ込みたいが……。


「魔拳、か……」


 だが、炎の魔法である魔拳はこいつには効かないだろう。

 何故なら相手は火を防ぐうろこがある。

 効果があるのはライムたちと同じで氷の魔法だ。


 氷の魔拳があれば話が別だが……。


「っ!?」


 そんなことを考えていると蛇は俺を捕らえようと動き始めた。

 しかし、周りの氷のお陰でまだ避けられる。

 何とかといったところだが、それでも避けることはできた。

 だが、いずれはと言ったところだ。

 その前に二人が逃げ切れればいいが……時間切れと言ったほうが良いだろう。

 先ほどはなった魔法は解け始め辺りには温度が戻り始めていた。

 このままじゃ蛇はたちまち元気になって俺達を襲うだろう。


 なにがドラゴンのなりぞこないだ!

 こっちのほうが厄介だろ!!

 俺は心の中でそう叫びながら蛇を睨む。


 氷の魔拳……ありもしないそんな力に――。


 いや、待てよ? どうせこのままじゃ殺されるのが落ちだ……。

 なら、試してみる価値はあるんじゃないか?

 ああ、そうだな……そうだ!

 やってみる価値はある!!


「精霊の氷塊よ! 輪が拳に宿りて凍てつかせろ!!」


 ほとんど思い付きだ。

 だが……腕が急に冷たくなった気がした。

 見てみればそこには冷気を纏った拳があり……。


「は、はは……」


 俺は思わず笑ってしまった。

 勝利を確信したからじゃない……。

 ただの思い付きだったはずだ。

 なのに……俺の腕には燃え盛る炎ではなく凍てつく氷がまとわりついている。

 どっちにしろ時間は少ない。

 このままじゃ凍って腕が割れるなんてこともありえそうだ。

 そうなったら今度こそ使い物にならない。


 チェルの神聖魔法でさえ失った四肢は元には戻らないからだ……。

 それに……。


 指が動きづらい。

 おそらくこの魔拳はそう長くはもたない。

 勿論、俺の体の方がだ……。

 だからアウクは炎の魔拳を教えてくれたんだろう。

 だが――!!


「――これなら!!」


 俺はそう確信し蛇へと近づく。

 すると発生した冷気のお陰か蛇の動きは悪くなっていた。

 いいぞ! これなら……。

 そう思っていたら蛇はその大きな体を揺らし、俺を拘束しようとしてきた。

 動けなくなる前にという事だろうか?

 とにかく俺は捕まってしまったが……。

 これはかえって……。


「好都合だ……!!」


 締め付けようとする蛇の体に俺は手を触れる。

 すると瞬く間に凍っていき……。


「トゥスさん!! 今だ!!」


 俺の叫び声を合図に轟音が鳴り響いた。

 それは俺を捕らえる蛇へと辺り、氷ごと撃ち砕いていく……。

 そして、蛇が痙攣をし、やがて動かなくなるのを俺は見つめていた。

 勿論、魔拳は解除してだ。


「キューラちゃん!」


 それを確認してからだろうチェルが駆け寄ってきた。

 すぐに腕を確認するように触ってくるが「ひゃ!?」という可愛らしい声を発した。

 冷たかったんだろう……。

 だが、その顔は見る見るうちに青ざめていく……。

 そう、神聖魔法でも治せないものがある。

 凍傷だ……。


 だが、幸いまだ痛みを感じるぐらいだし問題はない。


「温めておけば大丈夫だよ」

「で、でも……」


 対処法はあっためておくだけだ。

 俺は微笑むと心配させないために――。


「フレイム!」


 炎を発生させ腕をすぐに温め始めた。

 すると――。


「な、なにをしてるの!? 急に温めたらだめでしょ!?」


 チェルは驚いているがそうなのか? 凍傷の対応なんて実は知らないし……あっためればいいと思ってたんだが……。

 そっか、ダメなのか……だが……。


「なんか、動くようになってきたぞ?」

「なにやってるんだい……運が良かったから良いものの、急な温度変化は良くないんじゃないかい?」


 そう言われれば確かにそうなのかもしれない。


「キューラちゃん、今度から変なことをするのはやめてくださいね?」

「く、クリエまで……」


 俺はどうやら皆を怒らせてしまったようだ。

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[一言] >> キューラちゃん、今度から変なことをするのはやめてくださいね? 目からハイライト消えてそう
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